ケースNo.3 相模カズト
第17話 プロローグ
剣と魔法が軸となり、勇者や魔王がいるコテコテのファンタジー世界「オーザム」。
今回フェイトがこの世界に訪れたのはある人物に会いに行くためだ。
15年前に風の魔王ロガを倒した勇者の一人。
青きサイクロンの異名で呼ばれた起用万能な男は山奥に引きこもっていた。
「冒険者の家庭教師を名乗るんなら、もっと街中とかに住みなさいよ!」
一人なのでフェイトもつい敬語も忘れているようだ。
男が住む場所は、かつて風の魔王が居城にしていたウインドロッド山脈の頂上。
冒険者ギルドの転移魔法陣でも近隣の村までしか移動できないので、あとはすべて徒歩で行くしかない。
あくまで転職エージェントであるフェイトとしては、これは自分の仕事の範疇を超えた冒険に相違ないと思う。
しかし元をたどると責任はブラフマンの杜撰さにあるとはいえ、アフターサービスである限りブラフマーエージェントの誰かがやるしかない仕事だった。
「そもそもブラフマンの見立てが甘いのが悪いんじゃない」
道中の険しさに自然と愚痴もこぼれた。
それというのもこの日のフェイトは別件の仕事を片付けた直後で、本来ならば休日の予定である。
久々に年下の彼と出かけるつもりでいた彼女が怒るのも無理はない。
「だいたい……私が仲介役なのはまだしも、自分のことなんだからついてくるのが筋ってもんでしょうに!」
そして怒りの矛先は以前転職を案内した彼にも向かった。
彼とは半年以上前にフェイトがこの世界に連れてきた元傭兵、相模カズトのこと。
当時は女勇者ホリィに言い寄られながらに冒険者デビューに鼻高々だった彼も、今ではその面影はない。
ホリィとは反りが合わずに捨てられて、一人で活動するようになった彼は、次第に周囲とのズレに苦しむようになったらしい。
今回フェイトがかつての有名勇者をたずねた理由は、その相模を鍛え直してもらうためだ。
ブラフマンが言うに、相模は本来の実力を発揮できれば、想定していた大業を達成できるらしいのだが、フェイトは懐疑的である。
今の相模からはやる気が感じられない。
本当に家庭教師がつけば見違えるのかと思うのも仕方がない話であろう。
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