第8話 エピローグ

 あれから2年後。

 これはフェイトはもう関与していない彼の物語。

 約12年も勤務した会社に別れを告げたヒロシは、アパートも引き払ってオーザムへの正式な移住を決意した。

 理由はいくつかあるが、一番は彼の家庭にある。

 オーザムにある彼の家に帰ると、二人の妻がヒロシを出迎えた。


「おかえりヒロシ。向こうの仕事は今日で最後だったが、寂しくはないか?」

「主は優しいからなあ。もし我やホリィとは別に言い寄る女がいたとしたら、そやつもここに連れてきても良いのだぞ?」


 この家はかつて魔王城と呼ばれた城。

 今はヒロシが中心となって整備したことで、行き場のない人たちを集めた城下町の象徴として、ファイガード王の時代以上に栄えた城になっていた。

 そんな城にある居間でヒロシの帰りを待っていたホリィとフレアのお腹は膨らんでいた。

 妊娠8ヶ月。

 目に見えて大きくなったお腹の中にはヒロシとの間の子供が入っている。


「今日からずっと一緒なんだし、我らも今はなかなか外出できぬ。だから一緒にゴロゴロしようではないか」

「賛成。さすがにこの状態ではあたし一人じゃヒロシを満足させられる自信がないし、フレアの手助けも甘んじて受けてやろうじゃない」

「二人とも大丈夫なの? 俺の世界の常識じゃ、妊娠中に無茶はいけないと言われているのに」

「そんなあたしらに毎週欲情していた人の口が言えたものかしら」

「左様」


 妊娠中にも関わらずヒロシに抱きつく二人。

 それからしばらく、同じ日に二人は元気な子供を産んだ。

 勇者の息子と魔王の娘。

 この異母姉弟が勇者でも魔王でもない、オーザムを変える存在の礎になることを知っているには神々だけだった。

 未来を知らない三人は今の幸せを謳歌する。

 その幸せが世界の幸せを呼ぶものだと知るのは、彼らが老い衰えてこの世を去る頃になろう。

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