転生したら美容部員でした~スキル「魅了」で人々をお救いします!~
碓氷唯
第1話 目が覚めたら豪華すぎる部屋にいました
目が覚めたら、天蓋付きのベッドに横たわっていた。
布団よりもふかふかで、ゆっくり沈むベッドだ。
きっと寝心地は最高だろう。
金色のレースカーテンから透けて僅かにメイド服を着た人が見える。
「どこ? ここ……」
声がいつもの私より、少し高い。
手も白人のように真っ白だ。
一言呟くと、喉が渇いているのか噎せてしまった。
「クロエ様! お目覚めですか? すぐに治癒師を呼んでまいりますね!」
メイド服を着た人がカーテンを開けて私の顔を見たあと、バタバタと部屋の外へ出て行ってしまう。
一瞬見えた部屋は一人暮らしをしている私の部屋より遥かに広く、意味が分からずカーテンを開けてしまった。
そこには煌びやかな家具や調度品が飾られていて、明らかに私が住んでいるアパートではなかった。
私の家よりメイクを百倍楽しめそうな大きなドレッサーに、全身鏡、ガラスのローテーブルに高価そうなソファ……。
昔のヨーロッパの貴族が住んでいるような部屋だ。
そういえば私、仕事帰りに通り魔に刺されたんだっけ。
それでお腹から真っ赤な血が流れて、そのまま倒れて……。
「これってもしかして、異世界転生ってやつ!?」
ベッドから降りて鏡を見ると、そこには二十四歳だったOLの私よりも幼い女性が立っていた。
明るいミルクティーベージュのふわふわした巻き髪に、白皙の肌。
儚げな印象を醸し出す桃色の瞳。
顔は小さく、身長も決して高くはない。
真っ直ぐ前を向いても横を向いても完璧な美少女だった。
程なくしてやってきた治癒師にそれとなく聞いてみると、私はクロエ・フォーマッジという平民の女性らしい。
治癒師は日本でいう医者だそうで、魔法を使って私の身体に異常がないか探っていた。
そして私は至って健康な普通の十八歳の女性と診断された。
平民の女性がどうしてこんな豪華な部屋に住んでいるかというと……なんと私は、このベルクルーズ王国の第二王子、ノア・ベルクルーズ殿下の婚約者だからだそうだ。
どうして婚約者になったのかといえば、なんとくじ引き。
ノア殿下は婚約者を選ぶのが面倒で、平民貴族問わずくじで当たった人を婚約者にすると言ったそうだ。
そして、私が当たりくじを引いてしまい、選ばれたらしい。
ここは第二王子が住んでいる離宮の三階の奥から二番目の部屋で、第二王子の婚約者用に設えた部屋だそうだ。
通りでこれだけ豪華なわけだ。
「クロエ、体調はどうだ」
「え……あ、平気です」
とまあ、現在治癒師がいなくなった私の部屋にそのノア殿下が見舞いにやってきてくれたのだけど……。
プラチナブロンドの長髪に、森のような深い緑色の瞳。
鼻も高くて、俳優のようなしっかりとした顔立ちは、目が合うだけでもドキッとしてしまう。
手足が長くてモデル体型で、本当にこんな人間が存在するんだと思ってしまった。
傍にいるだけで緊張してしまう。
香水をつけているのか、良い匂いもするし。
「そういえば、侍女のウィロウから面接に受かったと聞いた。おめでとう」
「へ? 面接?」
「そうだ。面接の後すぐ高熱を出したから知らないかもしれないが、お前は受かっているぞ」
「えーと……何に?」
「? 美容部員の採用面接だが」
え?
わ、私が、美容部員……?
「えええぇぇ~~~!?」
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