第20話:危うし伊勢国!(北畠具教視点)

 <北畠具教とものり視点>



 1567年9月

 北伊勢。千草城東方

 北畠具教とものり

(お公家さんになっているとっても偉い大名。なのに剣豪という変な奴)



 ばばばばば~~~ん!!!

 ずががが~~~~ん!!!!

 ばんばんばん、ばば~~ん!!!!


「何をやっておる! 早く総攻めをせよ!」


「はっ。ですが敵の鉄砲の音に、足軽が怯んでおりまする」


「あのようなもの。ただ音が大きいだけではないか! 相当近づかねば当たらぬ!」


 織田の軍勢6500と聞く。

 我が方は8000余り。数で押し切れるはずよ。ましてや、この南朝より勇名をはせる北畠の武士もののふの軍。

 たかが守護代の家老程度の家柄の子倅に負けるはずがなかろう。


 ここは徒武者が先陣を切り……


「敵は土嚢どのうを積み上げ、障害物としておりまする。遠矢の牽制が効きませぬ。20間(40m)にすら近づけませぬ!」


「ええい! 誰か先陣を切り武名をあげる者はおらぬか!?」


「上様。某が」

「いえ。それがしが先に」


 馬廻り(親衛隊)の者共が名乗りを上げる。

 士気至って旺盛。


「ではその方ら。敵、中軍を崩して参れ。その後、千草城の救援じゃ」


「「ははっ!」」


 千草も南朝の忠臣の家柄。よく奮戦しておる。これを助けねば我ら北畠の名誉にかかわる。



「して、右手北方の丘に向かった者共は?」


「はっ。母衣衆(伝令)の知らせでは、丘へ登った敵兵、わずか30。近在の逃げ遅れた百姓が見ておりました(もちろん、半兵衛の手の者)」


「では、そろそろ丘を攻める頃合いか?」


 パ~~ン。

 パ~~~ン。

 パ~~~~ン。


 なんだ、あの小さき音は。

 あれが鉄砲か? さぞや小さき鉄砲を撃って……


「お味方、騎馬武者が次々に倒されていきまする!」


「おう、なんたること。徒武者までも!!」


「なんと。物頭まで倒されていく!!!!」


 なんだと?

 あの音、たかが数丁の鉄砲ではないのか?

 なぜそんなに当たる?


「お味方、総崩れ! 退却……いえ、逃げ帰って参りまする!」


「丘の上から、20騎あまり。お味方の背後より突撃。丘に向かった兵は散り散りに。敵はその勢いを駆ってこちらへ向かってまいります!」


「ええい! 後備えを差し向けよ!」


 なんという速さだ。

 味方が崩壊するのも早いが、この進撃の速さは異常。


「間に合いませぬ! さらに後備えに敵鉄砲隊200余りが向かいまする。横から射撃開始。陣形が崩れていきます!」


 見る見るうちに後備えが崩壊していく。

 これが鉄砲の威力なのか?


「丘の上から突進してきた騎馬武者に馬廻りを向かわせよ!」


 さきほど半数の馬廻りを前線に投入してしまった。残り僅か40騎。

 半数、20騎の敵と檄突……しない?


 ばばばば~~ん!!!!


 敵の騎馬武者が馬を止めた途端、前かがみになり、後ろに騎乗していた兵が鉄砲を構えて、馬廻りの者の中央に集中して放つ。


 10騎が倒れた。

 その後、また鉄砲を取り出し、こちらへ射掛ける。


 ばばばば~~~~ん!!!!


 6騎が倒れる。

 敵が突撃を再開。


 24騎の馬廻りの者は怖気づいている。

 その中央を人馬共に巨躯の騎馬武者が突入してきた。

 儂が狙いか?


 よき面構えじゃ。

 胆力もある。


 ではこの儂自ら相手してくれよう。大人しく刀の露と消えよ。

 剣聖と謳われた(塚原)卜伝殿に授けられし『一の太刀』を受けて見るがよい!!

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