第26話:ボケとツッコミ

 

「これでは如何いかに」

「お話にならん」


「ではこれでは」

「まだまだじゃのう」


「これならどうだ!」

「もうひと声じゃ」


「ええい、もってけドロボー!」

「毎度おおきに~♪」



 みなさま、最近の物価高でお困りではありませんでしょうか?

 光秀、今、近江商人をいじめています。愉快爽快デス♪


 南近江の蒲生賢秀さんの領地、日野の町は有名な強欲近江商人発祥の地。

 半兵衛っちのいう事には、例の桑名の豪商に約束した八風峠越えの商業ルートを支配しているのが、この近江商人ということ。


 それでね。

 この連中が蒲生賢秀さんのいうこと聞かないで、勝手に商売しているからこいつらを手なずけたら、織田家に降って家臣になると約束してきたんです。


 なので利益りえきで誘おうかと。このルートって結構な収入になるから。


 多分、こいつらは色々な権益与えると味方になると思う。こっちには様々な委託販売権があるからね。それちらつかせている訳。

 その対価として、権利をどんどん買っています。


 それは『伊賀甲賀の薬草』。

 基本、この時代、人口が多いのは圧倒的に近畿地方。だからそこでは様々な必需品が取引されている。

 米・俵物・衣類・日用雑貨。

 その中でも命にかかわるものが薬だよね。遠く明国から輸入してもぼろ儲けです。令和の時代の医薬品業界と一緒。時には利益率99%を超える暴利薬品も!


 その薬草が集中して生えているのがこの地域な訳。人口集中地帯の京都奈良大阪にも近いし。

 これを独占すること。これできちゃうとウハウハでしょ?


 ということで、それらを主に取り扱っていた近江商人を今、落としている訳。こいつらを味方にして、その上前をハネる!



 銭だけじゃないんだけどね。

 これからそれを餌に、甲賀の地侍を調略します。甲賀の地侍の調略も手伝うと。あいつら独立心旺盛だから、一人ひとり説得していたら10年以上かかっちゃう。



 ◇ ◇ ◇ ◇



「よく、あの因業強欲な連中を支配されましたな。御見それいたした」


 日野城に帰って来た俺に、蒲生賢秀くんが頭を下げる。


「なに。薬草本来の調合についての知識があったお蔭。あの連中はそれを知らぬ故、重要な薬種から安価に値切り落としました」


「それ、あたしの知識ですわ」



 なんかね~。

 この黒古の奴。

 星新一薬科大学にいたんだと。そこで漢方を勉強していたとか。意外とインテリだった。


「でもね~。中退なのよ、これが。6年生の時、おじいちゃんが倒れちゃって、一子相伝の鍼灸師に」


「おやじさんは?」


「世界各地を回って新しい薬草を求める旅をしてたら行方不明に」


「なんかドラ〇エみたいだな」


 だが高卒だからいいこともあるとか。

 レイヤーしているそうだが、高学歴よりも高卒の方がモテるんだとか!

 男は大卒の方がモテるんだ。悪かったな、高卒で!!



「なるほど。ではお約束の儀。甲賀五十三家、全てに声をかけましょう。2日もすれば皆そろうでしょう。この時世です。みなが身の振り方を考えておりまする」


 こうして日野城で甲賀衆の代表者を待つことになった。



 ◇ ◇ ◇ ◇



「……という条件じゃ。織田殿の家臣となればこのような待遇が約束されよう」


 蒲生賢秀くんが、40人くらいのむさい連中に調略条件を提示している。全員来なかったのが残念。


 条件は簡単に言うと

『領地安堵』

 この対価として

『臣従』

『織田経済圏への組み込み』

 そして

『全国への諜報活動任務』

 ついでに

『薬売りで儲けさせてあげりゅ』



 どうも甲賀衆が『うん』と言わなさそうな条件です。

 でも信ちゃんに最大限譲歩してもらった結果がこれ。

 だいたい信ちゃん。出来る限り在地の武士の勢力削る方針だからねぇ。出来るだけ『領地安堵』はしたくない。



「そのような屈辱的な約定など、我ら甲賀の者が受け入れられようか!」


「六角様の元での繁栄が我らの伝統」


「問題外じゃ」


「織田など田舎の大名じゃろう!」


 誇りが高すぎるね。

 まあ、京都に近くて、昔から将軍の逃げて来るシェルターですからね。それも一理ある。去年も義昭が和田さんちに逃げて来ていたし。


「しかし皆の衆。すでに織田殿は義昭公の命を受け、上洛の準備をされているとか。義昭公の大号令がかかれば数万の兵が集まろう。いかに六角様が巨城、観音寺城にて抵抗されても先が見えている。織田殿が義昭公を奉じて上洛すれば、三好なども蹴散らすのは明白」


 いいぞいいぞ、蒲生賢秀くん。

 もっと言ってやって。


「何をぬかす。蒲生殿、臆したか。六角にこの人ありと言われる武士もののふが何という様」


「お話にならぬ」


 皆が帰り支度をするために立ち上がろうとする。

 その機先を制し、俺はすっくと立ちあがり手にした拳銃を天井に発射した。


 そして恰好をつけて言い放った。


スッパ役コッペパン要請要求する!!』


 一呼吸おいて、後頭部にハリセンが。


「そんな冗談やっている場合じゃないでしょ!?」


「問題ない。ここからだ」


 いつハリセンを用意したのかわからないが、同席していた黒古が突っ込み役をしてくれて助かる。

 誰も知らないボケをしても悲しいだけ。

 『ららら コッペパン』とか『傭兵が高校生やってるアニメ』とかを知っている者が戦国時代にいるのは涙が出るほどうれしい。



「どこに隠していた? あの手筒」


「我ら全員、得物えもの(武器)は預けてこの場に居るはず」


「火縄の臭いもしなかったぞ」


 俺は副反応?のめまいを押さえながらも、大げさに説明する。もちろんさっき歩いてとって来たんだよ、拳銃を。


「これは織田家の新兵器。ホイールロック拳銃だ。すでに織田家には様々な新兵器がある。たとえ観音寺城が堅城であったとしても簡単に抜いて見せる!」


 ウソで~す。

 でかい大筒とかはまだないから厳しい。

 手筒のでっかいの、ロケットランチャーくらいの大きさの物がいくつかある程度。城門くらいは破壊できるかな?


 ちょっと真面目になった俺は、大見栄を切った。


「織田家の新兵器を扱うこの俺を、100人懸りで倒せなかったら臣従しろ。その程度が出来ない甲賀は織田の軍勢の前に、一瞬にして壊滅するであろう。どうか?」



 普通だったらこんなことしないんだけどね。

 ちょっとだけいいこと考えたんだよ。


 あまりやりたくはないけど、6畳空間の為なら何でもする!



「アゲハ、腹筋鍛えてもらうため、みんなから★もらうです。にぱ~♪」

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