単身赴任で甲賀を調略しよう!
第22話:ビシッ!
みなさん、今日も平穏にお暮しでしょうか?
光秀は、ただいま絶賛危機一髪中です。
伊勢から南近江へ抜ける、鈴鹿山脈の鈴鹿峠。
ではなく、その抜け道。安楽峠の北にある『道らしきもの』。崖に沿った獣道のような幅20cmもない足掛かりを、這いつくばるように移動しています。
「おい、アゲハ! こんな獣道を伊賀忍は通るのかよ?」
「はい、通るです。ここはメイン街道です」
本当か??
「人の通る道は危険がいっぱいなのです」
「この道は危険ではないと??」
「はいです♪」
いつものアゲハスマイルが返って来る。
確かにな、日本の古典文学の名著『神居伝説外伝』では「忍者が~ぁあ↑。走る~ぅう↑。ケモノミチ~ィイ↑」という有名な
「見えてきましたです。あれが蒲生の居城、日野城なのです。手前が和田城です」
遠くに小さく、それらしき城が見える。
今回の任務。
「蒲生さんちを説得して信さんの家来にしよう」作戦です。
部下を取り上げられて光秀、これから上洛するのに邪魔な六角氏の居城である観音寺城を信さんが落とす前に、蒲生さんちを説得するのよ。
正史では、たしか最後まで抵抗した山中俊好とか三雲成持とかと違い、早めに降伏している。理由は娘婿である神戸具盛の説得で開城したんだと思った。なんか単身乗り込んだとか。だけどさ、この神戸さんをあの慶次がぶっ飛ばしちゃって重傷者の一員に。
結局、俺が単身説得に向かう訳。
でもね。
この俺がそんなことできるわけないじゃん!
営業の仕事とか無縁なプータローで30歳まで過ごした俺。できれば半兵衛っち連れて来たかったけど、ここ通らせたら足滑らせて真っ逆さま。『ファイト~、ひゃっぱぁ~つ!』とかで片手で引っ張り上げたら腕がもげそう。
「でも、和田のお殿様は手伝ってくれるです? 蒲生との仲介」
「わからん。一応、将軍側だからな。危険はないとは思うが……」
ひゅん。
ひゅん。
ひゅん。
いうそばから、さっき首筋があった場所に吹き矢が飛んで来た。
「危ないです。毒矢。甲賀のものです!」
アゲハの手甲に3本の吹き矢が刺さっている。こいつ、毒への耐性をつけるため毎日うまそうに色々な毒を飲んでいる。だから安心だ。
そういう俺も、多分、毒は効かない。試したことはないけど。怖いから。
「4人・5人……いえ8人」
ハンドサインでアゲハが報告する。アゲハは
もちろんミスリル風に着色したのは俺だ。
周りを囲まれているらしいが、前方に小さな影が一人。
狭いけど平らな場所に立っている。
「よく来たわね。織田に尻尾を振る伊賀者! いくらで魂を売ったの!?」
女の声?
若いぞ。
まだ15にもなっていない感じだ。
その小柄な影が、腰に左手を当てて、右の人差し指を「ビシッ!」と……ビシッと?向けて来る。
こ、これはヲタクの理想の様式美の一つ、『ツンデレポーズ!?』。
「どうせ、和田様をたぶらかし、甲賀五十三家の調略をもくろんでいるんでしょう! 白状なさい!」
これは、どう答えれば俺は『よりヲタクっぽいか?』。
いやいや、今はそれどころではない。うまく切り抜けねば和田+蒲生ルートでの甲賀調略が不可能になる。
でもな。
こういうシーンでは敵をおちょくってから、ぶっ飛ばす方がウケるんだよ。Web作品では。
思いついたら即実行が吉!
「え? たかが8人で俺達、倒せると思っているのか? 昨日も敵500は殺してきたんだがな」
「ご主人様……正確には503人です……」
ハンドサインで修正してくるアゲハ。
慶次の癖が移ったか?
「何を、大げさな嘘を。そんな小柄な体ででかい口を叩くわね」
「お前、俺よりも小さいくらいじゃね?」
敵の首領?
リーダー(仮)にしてはヌケていそうな少女が、激おこぷんぷん丸になっている。身長のネタは厳禁だったようだ。自分で振ったくせに。
「敵は2人。やっておしまいなさい!」
なんか時代劇のようなセリフと共に、短弓の援護で小刀を持った連中が体当たりしてきた。
◇ ◇ ◇ ◇
忍者を調略するのには、やはり実力見せないとです。
次から力で押さえつけたいですが、ちょっとピンチ!
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