② 「話聞くよ」と慰めてたら、取り返しのつかないほど依存された。美少女の泣き顔に魅了されて沼から抜け出せません。
ひつじ
第1話
◯テーマ
・多くの読者に受け入れられやすい、オーソドックスな共依存もの。
・陽キャ美少女を曇らせて、でろでろに泣かせたい。
・依存から抜け出すのに必要なのは、害であるという認識ではなく、なりたい自分になる決意。
◯世界観
現代日本。高校生。
◯主要キャラクター
・榊祐(さかき ゆう)
主人公。高校一年生。人にも自分にも興味がなかった厨二病まっさかりの時、衞藤雛が失恋して泣く姿に興味を抱いたせいで、雛の泣き顔に魅了される。それからというもの、雛の泣き顔を見ることに、絵画や音楽を嗜むような快感を覚えるようになった変態。
自分に興味がないのは変わらずで、自分本位でなく、一般とされる善悪の基準はしっかりしている。そのため、雛の泣き顔に喜ぶ自分を異常者だと認めている。自分が異常者であるという自覚がゆえ、普通にこだわりたがる、社会帰属欲求が高い。また、雛を泣かせてはいけないとは思っているが、泣いている雛が見たい、という欲求と葛藤する。
スペックは、勉強も運動も顔もコミュ力も中の上で、インキャでも陽キャでもない。学校で普通の生活を送れるスペックがある分、異常者として見られたくない思いは強い。
セリフイメージ
「雛を慰めるのは嫌じゃないよ」
「いくら泣き顔に悦ぶ変態であろうと、社会的に死にたくないんだ」
「お前と一緒にするな。俺は雛の泣き顔に執着していること以外は、普通なんだよ」
そう、その顔が見たかった。泣いている顔を見るたびにSっ気がそそられ、体にぞわぞわとした感触が走る。息が荒いでしまいそうなほどの衝撃に、脳がぐっと押しつぶされて快感の汁が吹き出る。美しいものを見た時の感嘆の声をのむたびに、心が満たされていく。
・衞藤雛(えとう ひな)
ヒロイン。高校一年生。笑顔で人を魅了できる美少女。気やすく明るい性格で、クラスの中心人物。ただ裏の顔は泣き虫。榊とは、中学生の時、失恋して慰められてから、慰められることに快感を覚え、抜け出せないヤビー奴。最初は榊を都合の良い慰め役と思っているので、榊と会うのは慰められるときだけ。次第に恋心を育み、榊にデレデレになる。
セリフイメージ
「おはよー。何、話してるん?」
「あ、はは。また、泣いちゃった。いつも慰めてくれてありがとね」
「やっぱり祐がいないと私ダメだなぁ」
「あの、その、こう普通に接するとなると、緊張しちゃうっていうか……あはは」
「お願い、私を慰めて……」
・樋川友里(ひかわゆうり)
雛の自称親友。黒髪ウルフのクールな白ギャル。雛のことが大好き。大好きすぎて、ストーカー。執着がえぐい。勉強も運動も得意で、読者モデルもしている。人気者の資質を兼ね備えているが、尖った性格のせいで雛以外に友達がいない。祐が慰めたあとに笑ったところを撮影していて、その動画で祐を脅す。
セリフイメージ
「はあ? 私に雛以外の友達がいると思う?」
「あぁ、山田ね。あの、ウニクロとかの服を着てる奴を馬鹿にしてる、wecomeを着てる奴、を馬鹿にしてるくせに、bemmsとか大手セレショの自社ブランド着てそうな奴ね。ちなみに私はそういう奴ら馬鹿にしてる、人としてもダサいから」
「ウインドウショッピングに行きたい? 馬鹿かよ、家でメールカリでも見てろカス」
「ストーカーに道徳を説かれた気分はいかが?」
「黙って、歯ぁ、見せときゃそれでいいんだよ。馬鹿な奴は笑ってくれてると喜ぶし。少なくとも悪い印象にはなんないでしょ、多分」
◯準メインキャラクター
・島田大輔(しまだ だいすけ)
榊の友達。友達A以上でも以下でもない。
・高原貴治(たかはら たかはる)
雛の初恋の相手。少女漫画に出てくるヒーローみたいな容姿、言動。
◯物語構成
1章
冒頭。
「あなたの存在が雛の害になってる。貴方の望む泣き顔を見せてあげるから、それを最後に雛と関わらないで」と言われる未来のシーン。
1. 榊が学校で雛を見ていると、揉め事が起きる。雛は歪な笑みを浮かべたあと揉め事を解決する。
雛と屋上で会う。「話、聞いてくれるかな?」と切り出した雛は、「揉め事を起こしたのは自分だ」と嘆き涙を流す。
榊は雛を慰めながら、泣き顔を見れたことに歓喜した。
泣き止んだ雛が去ると、榊は、いい泣き顔だった、と悪辣な笑みを浮かべる。(この時、友里に撮影されていて、のちに脅されることになる)
満足した榊だが、物足りなさを感じる。最初に見た泣き顔、恋に破れた雛の泣き顔の美しさはこんなものじゃなかったからだった。
2. 雨の日。部屋行ってもいい? とのラインに、いいよ、と返す。
待っている間に雛との出会いが語られる。
インターフォンの音が鳴ってドアを開けると雛はずぶ濡れで泣いていた。
「彼氏にフラれた」と泣く雛を見た榊は、物足りなさを覚える。
こんなんじゃない。初めて見た時の泣き顔はもっと綺麗だった。
その理由は、雛から話を聞くうちに、本気で恋愛していない、相手のことも好きじゃなかったからだ、という答えに至る。
3. またあの泣き顔を見るためにはどうすればいいのか、と榊は考える。自分から泣かせるのは罪悪感があるので、行動できない。考えているうちに、今の関係が長くは続かないことに気づく。そんな時、雛の友達の友里から呼び出される。
4. 呼び出された榊は、スマホを突きつけられる。画面には、屋上で雛を慰めている動画。そして、にやりと醜悪な笑みを見せる場面が映し出されていた。
友里に「晒されたくなかったら雛と関わらないで」と言われた榊は葛藤の末「雛も自分もこの関係を望んでいる以上、雛から言われるまで関係を断たない」と拒否する。だが、友里の「最近の雛は慰められるためにわざと傷つきに行っている」という言葉に揺らぐ。好きでもないのに付き合ってフラれたのは、慰められるためだと思ったからだ。
エスカレートしていけば、手のつけようがないくらい傷ついてしまうかもしれない。そう自分が雛の害になると気付いた榊だが、泣き顔を二度と見れなくなるかもしれないことに、決断ができない。
友里に何故拒むのかを聞かれて、榊は泣き顔に魅了されていることを話す。
軽蔑した友里だが、「貴方の望む泣き顔を見せてあげるから、それを最後にして」と交換条件を持ち出す。
榊はそれをのむことにする。
2章
1. 雛を泣かせることに決めた榊は、最後に、彼女が失恋して泣いている姿を見たい、と友里に頼む。話し合った結果、友里のサポートで雛を惚れさせて振ることに決まる。
2. 友里のサポートの元、学校で雛と接触する榊。惚れさせようと行動してみるが上手くいかない。
榊は、雛のことを何も知らない、そもそも話しかけられるような仲でもないこと、二人の距離感が遠いことを実感する。そして、雛との距離を縮めるために、まず雛のことを知ることに決める。
3. 共依存の関係は続いていて、榊は雛を慰めながら情報を聞き出す。色々と知るうちに、泣き顔にしか興味がなかったが、雛個人にに興味を持ち始める。また雛は雛で、榊が慰めるだけでなく、抱えていたものを吐き出す口になってくれることに、より依存を深める。
4. 友里の提案で、中間テストに向けての決起集会、という名の親睦会が開かれることになる。
場所はカラオケだった。メジャーな曲で盛り上がる中、榊は雛が、マイナーな曲が好きでよく歌う、そんな曲を布教したい、と言っていたことを思い出す。榊は、マイナーな曲を入れて歌い、雛が歌いやすい空気をつくる。
雛はそんな榊の意図に気づき、ときめく。榊を意識し始めるきっかけとなる。
3章
1. 雛のことを知った榊。今度は、普通に接する仲になろうとする。
普通に接することができないのは、雛にとって榊は慰め役でしかないせいだ。だから解決するには、榊が別の役割を持てばいい。そう友里に言われ、2章で知った情報をもとに、別の役割を持とうと決める。
234.榊が別の役割を持とうと努力する中で、雛をときめかせたり、話しやすいことに気づかせたり、優しさを感じさせたりして、デレさせる。イチャイチャラブコメが続く。
5. 例の如く悩み事に涙を流す雛を慰める。慰め終わったあと、榊が帰ろうとすると、雛が、もう少し話したい、と引き止める。榊は、嫌じゃない、むしろ話したい、と思い、二人の仲が深まったことを確認する。
その場の勢いで榊がデートに誘うと、雛は自分も行きたいと答える。
4章
123. 甘々のデートで急速に仲を深める二人。
榊も雛もお互いが好きだと自覚することになる。
デート後の夜。テスト明けにある林間学校で、高台から一緒に星空を見よう、と約束し、いい雰囲気で別れる。家に帰ると、雛からメッセージがくる。それは告白の呼び出しだった。
4. 榊は恋愛的な意味で、雛と離れたくなくなる。
だが、学校で雛が涙の種を撒いている場面を目にし、自分が害になるため離れなければならない、という考えに至る。それは、雛を好きになったからこそ出来た判断だった。
そして榊は、今までのことを謝り、雛の前から去る決意をする。
5. 雛に告白されている最中、今までのことを謝ろうとしていた時だった。
現れた友里に今までのことをバラされる。否定しなかった榊に、雛は深く傷つき、涙を流す。その泣き顔は初めて見た時よりも綺麗で、本気で自分に恋していたことを理解した榊は、胸が苦しくて倒れそうになる。
その後、友里にいくらでも自分のことを責めても殴ってもいい、と言われた榊だが、雛のためにはこれでよかった、と、自分としても未練を断ち切ってくれてありがとう、と礼を言う。
5章
1.テスト期間が明け、仲が割れた状態で迎えた林間学校。
雛が撒いてきた涙の種が方々で芽吹く。雛は慰めてもらえていないので、ストレスがたまりつづけ、やつれていた。
そんな時、別の高校にいった初恋の彼、高原貴治(たかはらたかはる)と林間学校で出会う。
2. その後、グループ作業の最中に、面倒ごとを持ち込まれた雛は限界が来てキレてしまう。気まずい空気を作って、疎外されてしまう。
雛は榊の存在が欲しくて欲しくてたまらなくなる。
榊は、辛い顔の雛を慰めたくて仕方なくなる。
そんな榊を見かねた友里は「ここで慰めれば、より依存することになる、傷ついた意味がなくなる」と止める。
榊は言われるまでもなく、慰めるつもりはないことを話す。
3. 高台で星空を見る約束の夜。焦った友里に呼び出される。その先では、初恋の彼が雛の様子をみかねて、慰めにかかっている最中だった。
止めに入ろうとする友里だが、そうするまでもなかった。
雛は高原貴治では欲求を満たしてくれないと感じ、好きな人に、榊に慰められるからいいのだ、という結論に至る。そして雛は、榊を求めて約束の場所へと向かう。
榊も約束の場所へと向かおうとするが、友里に「また依存関係を続けさせるわけにはいかない」と止められる。榊は「そんなつもりはない」と言って、約束の場所へ。
4. 約束の場所、高台。星空を眺めながら気持ちを感情をぶつけあう。
「お願い、私をどれだけ泣かせてもいいから、側にいて。話を聞いて。慰めて」
榊、断る。
「あはっ、涙が出た、ちゃんと辛くて仕方ない。これで祐は私のこと慰めてくれるよね?」
榊、断る。
「ごめんなさい。何度でも謝るから、どんな泣き顔でも見せるから、私のこと慰めてください」
榊は「この歪な関係のままじゃ、どこまで行っても慰め役と泣き顔を見たいだけになる。色んな面を求め合う、本当の恋人には一生なれない」と、自分の気持ちを告白する。
雛、ややあって、「私も好き。本当の恋人になりたい」と返す。
気持ちが通じ合い、本当の恋人になれるように、互いの依存をなくしていこう、と決める。
6章
1. 朝。榊と雛は、友里にこれからも雛と一緒にいることを告げる。友里は「共依存から抜け出せると証明できたら、私は二人の仲を邪魔をしない。その代わり出来なかったら、盗撮した動画をばらまいて無理やり二人の距離を離す」という条件を出す。二人はそれを呑む。
2.共依存関係から一歩抜け出した証明のため、キレて出来た気まずい空気を、雛は自ら傷つかないように行動し、榊は雛を泣かせないように行動して、解決する。
2.5 ラスト。共依存をよく抜け出した! と感動した友里が二人のところに向かうと、あいも変わらず慰めてる最中。共依存抜け出せてないやろがい! と友里に突っ込まれ、二人は、少しずつ抜け出して恋人になると話す。
(ヒキ)
共依存関係を解消する手伝いを続けることに決めた友里。これまでの愉しかった思い出を振り返る。
まったく、しょうがない。まだ共依存を解消させる手伝いを続けなければ。
友里は自分の口が歪んでいることに気づかなかった。
2巻は、恋人になるため、共依存から抜け出そうとする物語に。そして友里が共依存を解消することに依存する物語。散々かき回してきた友里をボコボコに泣かせる物語。
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