坂道

陽夏戯

 大学の課題で「今までで1番美しい朝について書く」というものがあった。


 味の入りすぎたコールスローを口に含ませ、塩分を誤魔化すようにインスタントのカフェオレを飲みながら課題に取り組み、朝の記憶を辿っていたのだが、気づけば一際輝く夕日の記憶があることに意識が向いていた。


 朝について考えなければと、思えば思うほどに、その夕日は、その輝きで、私の心を覆い尽くしてしまいそうだった。


 なんとかとある朝の日の、これまた綺麗な朝焼けについて160字ほど課題を進めたのだが、それ以上は私の手が朝日に向かってキーボードを打ちたがらなかった。


 大学へ向かう時間も迫っていたので、私は諦めの気持ちでパソコンを閉じ、課題をそこまでにした。


 大学までの電車で課題を再開しよう、そう意気込んでいたのだが、私には電車に乗るとやるべきことが手につかず、日常の中で置いてけぼりになった考えをただひたすらに巡らせる癖があった。


 とうとう私はそのある日についての記憶を巡ることにした。

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