肝を食われた狐

らんた

 ここは武州川越。城下町は武蔵野台地の最北端に位置する。舟運しゅううんで栄えた街である。そんな川越の街で最近妙な噂が飛びかった。


 「最近……臨終間際りんじゅうまぎわの人間の横に白狐しろきつね様が現れて肝を食われるらしい」


 「なのに傷跡がないらしい」


 「肝をつらぬくりいた後……うまそうに食っている白狐びゃっこを見た」


 そんな噂が飛び交っていたのだ。これは江戸時代に伝わる武州の不思議なお話。


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