異世界令嬢モノのルッキズムとミソジニーをどうにかして欲しい件

 異世界令嬢モノが好きです。悪役令嬢とか契約結婚とか婚約破棄とか。聖女系は読むけどイマイチです。


 これまでにかなりの数を読んできましたが、主人公の相手となる男性はどうしてああもイケメン揃いなんでしょうかね? 99.95% の確率で人間離れしたイケメンです。男性主人公はどうしてそんなにイケメンを強調しなくちゃいけないんでしょう。


 しかもただのイケメンじゃなくて、「この世のものとは思えないくらい」イケメンだったり、「見つめられるとすべての女子が頬を染めるほど」イケメンだったり、銀髪がサラサラだったり、金髪がウェーブを描いていたり、赤い瞳が燃えていたり、アクアマリンのように透き通る青い目だったり、鼻筋がすらっととおっていたり、細身ながらも筋肉のある身体がジャケットの上からでもわかったり、「もうわかった、(以下略)でもういいから!」っていうくらい、AI が作って判を押したみたいなイケメン。


 顔がそんな大事なんですかね?


 そもそも顔だけじゃなくて、好みなんて当に蓼食う虫も好き好きじゃないですか。私の友人にも、くまのぬいぐるみみたいな体型の人が好きとか、毛深い人が好きとか、色々いますよ? だから、主人公の見た目は読者に任せておけばいいんじゃないかと思うんですけど、どうなんでしょう。


 私は自分の小説の主人公たちはあえてイケメンにしていません。主人公たちが着ているものや雰囲気などは記述していますが、美醜については記述していません。にも関わらず、読んでくださる方々が私の小説の主人公たちをイケメンだと思ってくださる場合は、それは主人公たちの「振る舞い」が格好良いからだと解釈しています。そして、そう思ってくださることに感謝しています。


「小説の中くらいめちゃめちゃイケメンな人と恋愛させてよ!」と考える向きもあるとは思いますが、読む小説、読む小説、イケメンに見つめられただけで心臓が飛び跳ねてると、「やかましい! ペースメーカーでも入れとけ!」と、つい私のツッコミの虫が騒ぎ立ててしまいます。


 加えて、これほどイケメンの重要度が高いということに危機感を覚えます。というのは、イケメン王太子や侯爵さまは往々にして身体接触の同意という観念を持っていないからです。主人公の女性が自分と相手が合意して付き合っているのかどうかもわからないうちに、壁ドンしたり、抱き寄せたり、抱き上げたり、顎クイをしたり、キスをしたり、行動を制限したり、同じベッドに寝かせたり、脅したり、やりたい放題です。そして主人公は「ヤメロ」とも言わずに、サラサラの銀髪に触れたり、夜のような深い青い目に見つめられたりして、「心臓に悪いっっ」とドキドキして赤くなっているだけ。よく知らない男に勝手に触られたりして気持ち悪くないんだろうか、と常々疑問に思いながら読んでいます。そして、こういう小説が流布することで、このような行動が常識になったりしないんだろうか、と危惧します。


「いやいや、小説と現実の区別くらいつくでしょ」という意見があるのは理解していますが、書き手も出版社も、こういった振る舞いに疑問を持たずに出版しているという時点で既に危険だなあ、と思うのです。だって、そういう状況になった女子が男子をタコ殴りするような社会だったら、そういう小説が一般的に出回るはずなんですよ。そうじゃないってことは、男性が自分本位に振る舞っても女性は赤くなって黙っておくのが日本社会の通念だということですよね。それに、実際、顔がいいことは免罪符になるんですよ。見た目が良さは、裁判の判決にも、所得にも、就職にも有利に働くことを発見した研究はたくさんあります。それを助長するのはなんだかなあ、と思います。


 最後に、読んでいて「うわあ……」と思った文を紹介します。


 とある小説で激イケ侯爵が主人公に尋ねる台詞。落とした書類を拾おうとした主人公の手の上に、自分の手を置いて力をかけて、彼女に逃げられないようにした挙げ句。


「私の顔が好きか?」


 ……は? 何言ってんの、この人?

 「……好き、です」と答える主人公に、激イケ侯爵は「そうか、そう言ってもらえて嬉しいよ」。

 なんなの? ナルシストなの? 











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