第35話 神矢の警告

「‥‥‥ヒュドラー計画? それはどんな計画なんですか?」


「藤原さん、そもそもヒュドラーが何か知ってるか?」

 神矢は冷静に話し始めた。藤原はようやく話し始めたことに対して、いつまた取り乱すかもわからない。まずはこちらも冷静かつ慎重に話を聞こうと思った。


「いえ、存じません。何なんです?」

「怪物さ。ギリシャ神話に登場する怪物‥‥」

「怪物?」

「あぁ。ヒュドラーは9つの首をもつ大蛇だ。首を切ってもそこから新しい首が2本生えてくるという不死の生命力を持った水蛇の怪物なんだ。吐く息は猛毒で触れただけで死に至るという‥‥」


「なるほど。ちょっと待ってください‥‥」

 藤原はそう言って、自分のスマホで『ヒュドラー』と検索し、どんな怪物なのかを画像検索してみた。そこには確かに、多頭の蛇の怪物画像がいくつも出てきた。中には、裸の筋肉質な男性が、何やらその蛇の怪物と戦っている油絵で描かれた絵画の画像もあった。そのヒュドラーという怪物の画像を目に焼き付けた。

「恐ろしい怪物ですね。この怪物がダイドーと何か関係あるんですか?」

 

「あぁそうだ‥‥‥、俺のわかっている範囲ですべて話しておこう。もう手遅れなんだしな」

「手遅れって‥‥」


「あのスーパーダイドーは表向きは大型スーパーだが、実際は実験施設なんだ‥‥」

「え!? ちょ、ちょっと待ってください! 全く意味がわからないんですが」


「スーパーダイドーは最初からその目的のために建設された。まず第一段階として、俺の遠隔操作ボタンによって、店内のどの出入り口からも出入りできなくする、つまりは閉鎖状態だ。店内にいる従業員や客は完全に閉じ込められる。そして、次に電波妨害システムが勝手に発動する。通信手段の遮断だ。中にいる人間は外部との連絡が一切取れなくなる。これがまず昨日建物内で起こったことだ‥‥」


(俺が松江さんに話した憶測が合っていたというのか‥‥)

「なんですかそれ!? 今すぐ閉鎖を解除してくださいよ!!」


「‥‥‥不可能だ」

「どうして!?」


「一度閉鎖されたらに達するまでは決して開かない‥‥」

「ある条件ってなんですか!?」

「その話はこれからだ‥‥」

「条件なんて無視して、自動ドアを壊せばいいじゃないですか!?」

「あの自動ドアは壊せない‥‥。ガラスは特殊な素材で作られている。大砲を撃ち込んだとしても、傷ひとつ付かない」

「なっ‥‥‥」

 藤原は言葉を詰まらせた。


「それにもう‥‥、恐らくだが、誰も生きちゃいない‥‥。全員殺されてるだろう。仮に生存者がいたとしても、今日の午後には全員殺される‥‥‥」


「全員殺されてる‥‥‥!?」

 藤原は神矢の言葉の意味が全く理解出来なかった。この人は一体何を喋っているんだ?、全員殺されている? そんなことがあってたまるか。

(ガラスブロックについていたあの大量の血‥‥。まさか本当に‥‥‥)


「昨日、私は異変に気付いて夜中にダイドーを見に行ったんですよ。その時ガラスブロックの壁から中を覗いたら人影が見えた」


「殺害が行われたのは今日の早朝だ。殺戮とでも言っておこう。殺戮開始まで店内の人間には一夜を過ごしてもらった。あえて水道、電気、ガスは使えるようにしてな。スーパーだから食料や水分もたくさんある。自由に食って良いと浅川は対処していたと思う。ホームセンターには布団や毛布もあるから一夜過ごすのに不自由はしていなかったんじゃないか」


「どうやって全員を殺したというんですか!? 浅川店長も最初からわかっていたんですか?」


による殺戮行為が行われたんだ。浅川はこの計画のことは一切知らない。むしろ巻き込まれた側の人間だ。浅川ももうこの世にはいないだろう‥‥」


「人ではないモノ!? 神矢さん、あなたは先程から何を話しているんですか? 今冗談なんか聞きたくはありませんよ」

 藤原は、神矢に対して何を訊いても非現実的な答えしか返ってこないことに怒りが込み上げてきた。


「冗談なんかじゃない。現実の話だ。よく聞いて欲しい。人ではないモノは、その意味通り人間ではない。遺伝子を組み合わせて創られたキメラ、言い換えると人造人間だ。うちは確かに100円ショップ事業で業界トップだが、それだけじゃない。バイオエコロジー事業も抱えている。いわゆる生物生態研究部門だ。そこで創られたまがい物だ」


「人造‥‥人間‥‥‥!?」


「あぁ、そうだ。そもそも医療が発展し続けてきた現代でも、薬や治療法が確立されていない病気はたくさんある。バイオエコロジー部では、そんな不治の病とされている病気を治すことができる薬の開発を秘密裏に進めている。

 例えば、末期癌まっきがん、認知症、さらに脊髄性せきずいせい筋萎縮症きんいしゅくしょう、パーキンソン病、悪性関節リウマチ、クローン病などの指定難病とされている病気に対して、飲むだけで完治させることができる新薬の開発だ。開発にはそれなりのリスクが生じる。聞いた話では、新薬の開発に必要なが3つあるそうだ。それは、の細胞とヒトの細胞を掛け合わせたキメラ細胞を作ること、その個体が完全体であること、その細胞が分化万能性を秘めていることの3点が条件らしい。バイオエコロジー部の研究員達は、その3つの条件を達成させ新薬の開発を成功させるために、ヒトと生物の遺伝子を掛け合わせるという禁断の研究に踏み切った。その掛け合わせて創られた細胞をと呼んでいたよ。この研究は失敗を積み重ねていった。いちばん難しいのはある特定の生物が何なのかを発見することだと研究員は言っていた。その失敗で生まれたのが不完全体のキメラ細胞で、それがいつの間にか人のカタチを成してしまったそうだ。これが人造人間の誕生だ。研究員達は『奇跡が奇跡を生んだ』と言っていた。この不完全体のキメラ細胞を持つ人造人間を育て上げ、完全体にまで成長させるという考えに至ったそうだ。完全体にまで成長させたキメラ細胞を使えば、どんな病気でも治せる万能薬を作り出せると‥‥。もはや錬金術並の次元だ。俺はこれ以上の詳しいことはわからない‥‥」

 神矢は知っている情報を細かく話した。藤原は信じ難い内容に呆気に取られ聞き入ってしまった。頭の中で整理が追い付かない。脳内ストレージが溢れ返りそうだった。しかし、訊かないといけないことがまだある。


「その人造人間はどうやって現れたんですか?」


「あのスーパーダイドーの地下で飼っている‥‥」

「飼ってる!?」


 神矢は立ち上がり、棚からスーパーダイドーの着工工事が始まった時点の設計図と完成予想図を取り出しテーブルに広げた。以前、商談の時に見せてもらったものだ。

「藤原さん、覚えているか? 地下1階のこの5つのカプセルみたいな絵について俺に訊いてきた時のこと‥‥」


「えぇ、覚えていますが‥‥‥、!? 神矢さん、まさか」

 藤原は息を呑んだ。


「そう。そのまさかだ。このカプセルみたいな絵は5体の人造人間の保存装置だ。1階の歩行スペースの床と、この保存装置が管で繋がっている。その管を通って行き来ができるようになっている」

「なぜそもそも人造人間が殺戮をする必要があるんですか!? その新薬を開発することと何の関係が!?」

 藤原は声を張り上げた。


「新薬の開発にはキメラ細胞を持った人造人間が不可欠だが、生物レベルとしては不完全体だ。体力も無いし知能も遅れている。この5体の脳にはAIチップが埋め込まれていて、運動量や活動量、呼吸量、そして経験などを経て学習させて完全体に近づけていくことになっていた。その育成管理に俺が任せられていて、ダイドーの営業終了後、従業員も誰もいない店内で、歩かせたり、走らせたり、野菜やオーガニック食材で栄養を取らせて、経過観察しながら1体づつ育成していた。5体同時に開放して育成するのはかなりのリスクがあるからな。皮肉なことに、エナジードリンクのハイパーキメラが好みのようでごくごく飲んでいたよ。キメラ細胞の生き物がハイパーキメラが好みとか笑えたね。しかし、俺の育成計画は妨害された‥‥。俺のやり方は生温いってな。それじゃあ何年経っても完全体のキメラ細胞はできないって、お前は仕事が遅いって、本社でそう言われたんだよ。俺はこの計画の管理担当を任されていたが、俺とは別に計画執行責任者という立場の植松という男がいる。そいつに今日の早朝に邪魔されたんだ‥‥。植松は人造人間の学習を、5体一気にやらせる方法を考えた。それが殺戮行為だった。人を大量に殺害させることで興奮状態にした。脳や細胞を活性化させて完全体に達するまでの時間を大幅に短縮させ、その学習サンプルデータを回収し分析しようとしている‥‥」


「‥‥‥‥‥」

 藤原は言葉が出なかった。話の内容が現実離れし過ぎていて、この話を現実のものなんだと、自分に暗示をかけるかのように無理にでも納得しようとするのが精一杯だった。


「もともと5体の人造人間は人に危害を加えるような生き物ではなかった。AIチップに攻撃プログラムの信号が送りつけられた可能性が高い。遠隔でAIチップに命令信号を送ることができるという話をバイオ研究員から聞いたことがある。ただ、その信号を送るにはバイオエコロジー部トップの人間の許可が必要だからそう簡単にプログラムの書き換えはできないはず。そしてついに昨日、武器を持たされた人造人間が5体とも同時に解放され殺戮行為を始めてしまった。『店内全ての人間の殺害』というような内容の攻撃命令信号が送られたに違いない‥‥‥」

 神矢は頭を下げながら、手が震えていた。


「武器!?」

「そうだ。マシンガンや日本刀、大鎌や鉤爪のような普通の人なら手に入らないような凶器だ。その武器を使って5体の人造人間は殺戮行為を行ったんだ‥‥。俺は武器を持たされているなんて知らなかった‥‥」

「誰がそんなことを!?」

「‥‥‥うちの常務取締役 坂田 廉治郎という男だ。坂田はこの計画に深く関わっている」


「坂田、廉治郎。どうしてその坂田は武器を与えることができたんですか!?」


「あの人は常務取締役でありながら、裏社会でも顔がきく要注意人物だ。武器は裏ルートで手に入れたと言っていた。役員連中はあの人が恐ろしくて告発しようなんて誰も思わない。一般社員はもちろん坂田が裏で何をしているかなんて知る余地もない。あの男は刺激さえしなければ、こちら側に危害を加えてくることはない。いちばん敵に回してはいけない男だ。ここだけの話、あの人と揉めた人は全員消されてる。あの人は直接手を下そうとしないからトラブルに関係していると警察から目を付けられても証拠不十分で不起訴になったりで何食わぬ顔で戻ってくる。もっと言うと、最近警察は坂田に対して甘くなったというか、関わろうとしていないようにも思える。さっき電話でこの件には関わらない方がいいって警告したのはそういう意味だ‥‥」


「大堂社長や副社長は何も言わないんですか!?」


「大堂社長はむしろ容認している。坂田常務と裏で繋がってる。副社長の大堂 秀策は父親である大堂 竜之介がいなかったらなんにもできないタダの若造だ。大堂社長が近くにいるからでかい態度をとってやがるが、あいつひとりでは何も出来やしない。テレビの前ではすげぇ良い顔していたがな」


「‥‥‥そんなのは計画でもなんでもない! ただの大量殺人だ。神矢さんはその殺人にどこまで関与しているんですか!?」


「これは全て社長のためにやったことだ! 俺は長年社長のために勤めあげてきた。社長は俺にとって最も尊敬する存在だ。社長の役に立てたんだからそれでいいんだよ! 全てが社長のご意志なんだよ! 社長が全て正しい! 俺を救ってくれた社長が全てだ! 俺はなぁ、遠隔スイッチを押しただけなんだよ! 社長に指示されたタイミングで押しただけ!! ‥‥‥ただ、社長からの指示が無ければ俺のやり方でやってたはずなんだ。人造人間の育成は閉店後で十分可能だったはずだ。バイオのヤツラとも1体づつ育成するという取り決めだった。なのに、植松のクソ野郎に邪魔された! 坂田が‥‥、あの男がプログラムの書き換えを勝手にしたに違いない! 凶器まで持たせていたなんて聞いてない。一昨日おとつい確認した時にはそんなモノ持っていなかった。ふざけんなって話だ! どれだけの犠牲が出たと思ってる。俺は犠牲は出したくなかったんだ。でもな、結果社長は喜んでおられた。だから良いんだ‥‥‥」

 神矢は急にスイッチが切り替わったかのように態度が豹変した。


「神矢‥‥さん?」


「はぁ、はぁ‥‥、また取り乱してしまったね。すまん藤原さん‥‥‥」

 取り乱したとかそんなレベルではなかった。本心が露になったともいえる言動だった。

 (そうだ。神矢という男は根っからの大堂 竜之介信者だった。前にも大堂社長に人生を救ってもらったという話を聞いたような気がする)

 前の会社が倒産し、家族を養っていくことができなくなってしまうくらい路頭に迷っていた時に、大堂 竜之介とは講演会で出会い、救ってくれたとかなんとかだったと藤原は思ったが、詳しくは覚えていなかった。

 しかし、神矢との付き合いもここまでだと落胆した。だからこそ、神矢が落ち着きを取り戻したのを見計らって訊き出せることは全て訊こうと思った。


「神矢さん、スーパーダイドーの開放の『ある条件』って何ですか?」


「‥‥‥5体の消滅だ」


「5体の消滅!?」


「そうだ。5体の人造人間を殺せば、脳内のAIチップで管理している心拍信号が消える。そして、閉鎖した自動ドアに解除コードが自動的に送られ読み込みされる。5つの解除コードの読み込みが完了すれば自動ドアが解放されるというセキュリティシステムだ。だがもう店内には誰もいない。全員殺されてるんだ。となると一度閉鎖したダイドーは5つの解除コードが読み込まれるまで開かない、つまり、店内はもう完全閉鎖された実験施設として存続することになる。あの建物を取り壊すことは不可能だ。自動ドア以外にも壁も天井も床もシャッターも全て特殊素材で造られているからな。ダンプカーやドリル、重機、爆発物では、壁に穴を空けたり破壊して中に侵入するのは絶対に不可能だよ。今後はバイオエコロジー部の人間が、スーパーダイドーという名の実験施設で、人造人間の育成を引き継ぎ、完全体にまで成長させ新薬の開発にいそしむんじゃないか? 

 だから俺は人造人間の育成係は辞めてもっともっと大堂社長に貢献する! キメラ細胞を完成させるための『特定の生物』が何なのかまだわかってないのが現状だ。俺が先に見つけてやるんだ! はは、、はははははははは!!」


「神矢さん‥‥‥、あなたは最初からその計画をわかっていてダイドーをイベント場所として貸したんですか?」


「まぁ、始めは藤原さん達を巻き込みたくたいと思って断ろうとしたんだよ。ただ、大堂社長のご意志を考えたらさ、ねぇ、店内にひとりでも多くの人間がいた方がいいなと思ってしまったんだ。巻き込んでしまってすまないとは思っているよ」


「どうしてそこまで新薬の開発にこだわるんですか?」


「それはなぁ大堂社長が病気だからだよ。しかも末期癌でね。もう長くはない。新薬の開発が完成する前にはもう大堂社長はこの世にはいないだろう。そして大堂 秀策は坂田常務に消されるだろうな‥‥。だからこそなんだよ! わかるかなぁこの気持ち。大堂社長は永遠の存在として生き続ける‥‥。により絶対的な存在になるんだ。今後は社長のように不治の病で苦しむ人を救うためだ。そうすればみんな大堂社長に感謝するだろう? 拝むべき存在になるだろう? 神なる存在さ! はは‥‥、ははっはははははっははははぁっ!!」


「神矢! もういい! 反吐へどが出る。何がだ! 話にならない。結局自分達のことしか考えていないじゃないか。もうお前らはビジネスパートナーでもクライアントでもなんでもない! お前は殺人に加担したただの共犯者だ。許さない! この犯罪者がぁ!!」

 藤原は立ち上がり、神矢の胸ぐらを勢いよく掴んだ。怒りが爆発した。この男は計画を止めるつもりだったと言っておきながら、結局行動すら起こそうとしなかった腰抜け野郎だ。大堂 竜之介の奴隷だ。国府 巧は殺された。自分の部下が殺されたのだ。友里恵との約束を果たせなかった。クライアントも巻き込まれた。いや、もしかしたら店内のどこかで生きてるかもしれない。そう願いたい。そう願うしかない。


「なんとでも言えよ。どんなにいかっても、時すでに遅しだ。死んだ人間はかえって来ねぇよ。それと藤原ぁ、どうしてヒュドラ―という怪物が関係しているのか知りたがっていたなぁ! 部外者がダイドーの秘密を知ってしまったんだ。どうせお前も消されるからよ。冥途の土産に教えてやるよ。9つの首とはなぁ、5体の人造人間のこと、残りの4は計画関係者だ。その合計。俺は9つの首のひとりってわけだよ。このヒュドラ―計画の首として参加できたことは誇り高き名誉なことなんだ。なぁ藤原ぁ! お前にはわからねぇよなぁ! わかるわけがねぇ。この計画を企てたのは大堂 竜之介なんだからなぁ!!」

 神矢は人格が破綻した。この計画に参加していたプレッシャーとストレス、坂田常務からの圧力と恐怖、そして藤原からの詰問、大堂社長への想い、責任感。その全てが合わさり神矢の精神が崩壊してしまったのだ。


「神矢、お前らのやってることは異常だ。到底理解できない。俺は最後まであんたらと戦う」

(もうには用はない。ダイドーの秘密を知ることができた。あとは国府やSoCoモバイルのみんなが生きていてくれるのを信じるしかない。俺にはこれからやるべきことがある)

 藤原はそう思いながら、そのまま神矢のオフィスを出ようとした。


「もう関わらない方がいい。何も詮索するな。これが最後の警告だ‥‥」

 神矢は立ち去る藤原の背中に向かってそう言った。


「‥‥‥」

 藤原は神矢の言葉を無視し、無言のままドアノブに手をかけた。


「‥‥‥、坂田 廉治郎には気を付けろ」

 神矢は最後にそう言った。

 藤原は足早にオフィスを後にした。エレベーターを降りていき、受付カウンターに目もくれずにそのまま出て行き車に乗り込んだ。エンジンをかけ、ボイスレコーダーのスイッチを切った。


 時刻は15時になろうとしていた。

 神矢はオフィスの窓から、藤原が車に乗り込むのをじーっと見ていた。


「藤原さん、申し訳ない。俺ひとりじゃ何も‥‥」


 その時、





 —―——ピンポーン‥‥‥‥‥‥。





 オフィスのチャイムが鳴った。


「ん? 誰だ? もう来客は無いはずだが‥‥、」

 神矢はそう呟きながら、オフィスの扉を開けた。

「あぁ君か。どうした? なんかよう‥‥‥」

(え?)

 胸に激痛が走った。胸に何かが突き刺さった。ワイシャツが赤く染まっていく。生温かいものを感じた。


(げふぅっ)

 吐血しそのまま倒れ込んだ。意識が遠のいていき視界が真っ白になった。




「‥‥‥お疲れ様です。‥‥‥はい。裏切り者を排除しました」



第36話へ続く・・・。

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