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「ランチェスターの戦略ですか?」


「ああ、弱者の戦略ともいう」


 数日前の、王都の会話を思い出す。一騎打ちの場合、同じ武器を持った状態で戦った場合、人数が多いほうが勝つといった戦略だ。今回に関していうと少し状況が違うが、要は人数が多いほうが勝つ。ということ。


 加えていえば、冒険者は数名のチームで戦うことはあっても、100人規模での集団戦はしない。言ってしまえば100回の一騎打ちが成立する状況ともいえる。


 今回、用意したゴブリンは300体。3体で一組のチームを100組作った。複数人で一人の冒険者を優先して狙い、少しずつ戦力を削る。


「あ、やられた」


 今、目の前で3体一組のチームがやられる。どうしても知能の低いゴブリンだと時折、連携を忘れたり、一人だけ別の冒険者に飛び掛かったりと、ミスが起きる。そのたびに、ゴブリンが削られていく。


(それでも格上相手に、よく戦えている)


 ドヴェルグに作って貰った剣は、人間の剣に勝っているのではないかと思うほど、よく切れる。武器を新調しただけで、これだけ戦えるのは驚きだ。加えて言えば思ったより知能の低いゴブリンが連携を取れている。


「ぎゃぎゃ!」


 それも、あのゴブリンのおかげか。確か、あのゴブリンはボスが指名した、知能の低いゴブリンをまとめる役だったはず。今の手薄になったところに、新しいゴブリンのチームを投入して戦線を立て直す。


「流石、王か……ゴブリンの才能すら見抜くとは……」


 改めて、王の凄さを思い知る。

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