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「お兄様!」


 かなりの時間、待たされていた気がする。ようやく対話が終わり、魔王城から兄が出てきた。


「待たせたね」


 ギュッと兄に抱き着く。合法的に兄に抱き着けるチャンスは見逃さない。


 後ろから、魔王のドラゴンが出てきた。その魔物は、今までに出会った魔物の中で最強の存在。兄のためならどんな敵にも挑むつもりだが、流石に勝てそうもない。


「バーヴォールよ、この人間を研究室まで連れて行って改造せよ。炎の精霊からの命令だ」


「は? ……は! 分かりました」


「これも一緒に持っていけ」


 渡されたのは、赤い液体の入った瓶だった。


「まさか、竜にされるのですか!?」


「炎の精霊からの命令だ」


 何の話をしているか分からなかったので、道中に兄に尋ねる。


「お兄様、なんの話をされているのですか」


「ああ、俺が魔物になるって話だ」


どういうことですか!?


「ドラウグを、前線都市で見ただろ。ドラウグは元々、人間だったものが魔物になったものだ。だから、俺も魔物になれないかと思って頼んでみたんだ」


だからの意味が分かりません!


「頼んだら、竜人になればいいと勧められてな」


あれ、でもそれって生まれ変わるってことですよね?


「ああ、これで水の精霊の呪縛から解き放たれる」


ということは私と家族との縁が切れて、合法的に結婚ができるようになるってこと?


「ゾネは人間だろ。流石に魔物と人間は結婚できないだろ」


「なら私も魔物になります!」


叶わないかもしれないと思っていた夢が、叶うかもしれない。そんなチャンスは見過ごせない。私もお兄様に乗っかって魔物へ生まれ変わることを決意した。

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