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モニカがいつの間にか、彼との関係を終わらせていた。あれだけ時計を完成させると息巻いていたのに。
(チャンスだ)
彼はとても優良物件だ。男性の中でも彼はかなり特殊な部類で、自分で稼いできてくれる男性は人気が高い。モニカの彼に対する愛情が少し深いところが気になるが、それを無視してでも彼は捕まえておきたい物件だった。今まで虎視眈々とやっていた甲斐があった。
彼女から彼の動向や性格を聞いて、彼の好きそうな雰囲気を把握しておいた。
時計を完成させないようにと、彼女にバレないように少しだけ失敗するよう仕向けていた。
彼女たちの後を追い、彼の家の所在を確認しておいた。
あとは実行に移すだけだ。
私の分析によると、彼は弱さを見せながら強引に迫れば落とすことが出来ると思う。大事なのはちゃんと思いを伝えること。そこを濁してしまうと彼は勘違いをしてしまうと、彼女との会話から推測できる。
この作戦をモニカにバレるわけにはいかない。
彼女と一緒に残り数時間の午前中を一緒に過ごす。結構は午後の自由時間だ。
「図書館に行くの?」
「ううん、今日は部屋にいる予定」
「そっか。ゆっくり休んでね」
「うん、ありがとう」
彼女を気遣っているように見せ、部屋から出てこないことを念押ししておく。
準備は整った。雨がまだ降る中、彼の家を尋ねる。
コンコン
予定では明日、街を出るはずだ。決めるなら今日、今この時だ。彼が出てくるのを待つ。
「……?」
反応がない。もう一度ドアを叩く。
「――まさか!?」
ドアをひねるとガチャガチャと鍵が閉まっている。
出かけた? まずい、どこに行ったか見当がつかない。夜までこの場で待つか、探しにいくかの判断を迫られる。結局、行き先が思い当たらなかったので、彼の家で待つことにする。
雨が上がり夕焼けが空を赤く染める。彼はまだ帰ってこない。
夜も更け、段々と人通りも減ってくる。彼はまだ帰ってこない。
流石に門限が近い、そろそろ帰らないといけない。彼はまだ帰ってこない。
「まさか……もう街を出たの?」
やられた!
彼女は頭を切り替える。彼が既にいないのなら、モニカとの関係をもっと深めることを先決したほうが良い。彼を捕まえられなかったことは残念だが、さっさと気持ちを切り替えることにした。
(残念ですが、またいつかどこかでお会い出来たら……)
その時はもっと早く捕まえておこうと、心に決める。
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