第二章
42:第二章
その人物はギルドに突然現れた。歩く度に少しカシャカシャといった鎧が擦れる音がする。
装備はかなりの重装備に見え、顔はマスクで隠れていて分からないが歴戦の猛者の雰囲気をさせる。首にはその歴戦を物語るような少しボロボロだが機能を重視したマントを付けており、森の多いこの辺では見ない恰好だ。魔物との最前線で戦っている人物だろうか。
カシャカシャと歩きギルドの受付前に向かう人物。姿形からは男性が女性かは分からない。
「―――」
「―――」
その人物と受付が話しているが、遠いため会話の内容までは分からない。最近怠けているものが多いギルド内。まるでサボっているところを上司に見られたような緊張が走る。冒険者は自由業なので本来そういったことはない。
そこにギルド内に新たな人物が現れる。この街の貴族で、この街一番のレベルを持つクラウディア・フォン・ラインラント様だ。
「あら?」
クラウディア様は、その人物に声をかける。貴族は本来、自分から話しかけることは少ない。話しかける時は大抵、下の者から話しかけるのが常識だ。その貴族から話しかけたということは、この人物は領主の娘である貴族よりも位が高い可能性がある。
「あらあなた、見違えたわね」
「……ふん」
「ふふ聞いたわ。トロールも倒したみたいね。それにその防具、『ひげ女の店』の商品かしら。いいセンスね」
「誉め言葉として受け取っておこう」
「ええ、しっかりレベル上げに励んで下さいまし。と、そういえば近々、帝都に人間が来るそうよ。その様子だと大丈夫だと思うけど、しっかり準備しておきなさい」
「……忠告感謝する」
そういってその人物はギルドから去っていった。声の感じから男性だろうと予測を立てる。自分の知識の中に領主の娘よりも位の高い男はそうそういない。ますます彼が一体誰なのか分からなくなった。
「クラウディア様、今の人物は?」
「あら、気付かなかった? ふーん、なら秘密にしておきますわ」
謎は深まるばかりだ。
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