03

 教会での行事が終わり帰路につく。俺の一つ前の『8』は、どうやらお向かいさんだったようで帰り道が一緒だ。そんなことすら覚えていない、俺の記憶はどうなってんだ。

 家の前につくと俺の妹も含め、全員が家の前に揃っている。なにか始まるのか?


 そんな全員の雰囲気を無視して、うちの母と向かいの家の母親が話だす。


「ヴィルマちゃん良かったわ、『8』で」


「ええ、本当に。ホッとしちゃった」


「でも本当にいいの? うちの息子なんかで」


「ええ、前からの約束じゃない、全然かまわないわ。娘もそう思ってるだろうし」


(ん? 俺がなんだって?)


「ありがとうリーゼ。うちの息子を貰ってくれて。」


「いいのよアンネ。じゃあ二人は今日から許嫁ってことで」


「ええ、よろしくね」


(は? 許嫁?)


 俺とこの女の子が? なんで? 聞いていなかったので驚きのあまり、その子を見てしまう。すると『8』の女の子はフフンとこちらを見下す。


「わたしがあなたを夫として受け入れてあげるわっ、感謝しなさいっ」


「え? 嫌だけど」


 何言ってんだこいつは。


 そう思った俺だったが周りの反応は逆で、俺の方が変な目で見られる。そして拳骨が飛んできた。


「――――っ! つぅぅぅぅぅ!」


「何言ってんのお前は! ごめんなさいリーゼ!」


「あはは、いいのいいの。多分照れちゃっただけど思うから」


「本当にごめんね!」


 クッ! 頭が死ぬほど痛い。だけどこれだけは言っておかないといけない。涙目になりながら俺は宣言する。


「俺はこんな生意気な女、許嫁だなんて認めない!」


「っ! あんたまだ言って」


「待っておばさん!」


 うちの母を止めるヴィルマ。こちらに向きニチャアと嫌らしい笑みを浮かべる。5歳児の顔じゃないぞ。


「今のうちから上下関係を覚えさせたいのっ! いいかしらっ?」


「いいわいいわ、好きにしちゃって」


「ふふん、じゃあどっちが上かハッキリとさせてあげるっ」


 そういって殴りかかってくるヴィルマ。こいついきなり殴ってきやがった! 負けじとオラァと応戦をする俺だったが、如何せん体が細い今世の体は思うように動かない。妄想だけなら俺は魔王を倒すほどの強さを誇っているのに。特にこの時期の女の子は成長が早く、体格さもありアッサリと負ける。

 マウントをとられ、殴られ、殴られ、殴られ……こいつ! 殴りすぎだ! 痛い!


 ぼこぼこに殴り、ようやく満足したのかヴィルマが俺の上からどく。いてぇ……子供だから加減がない。


「これで分かったかしらっ」


 ぐ……こんな暴力女、許嫁になったら一生尻に敷かれる生活になる。そんなことは許されない。


「絶対に、絶対に俺はお前のことを認めない!」


「あら、まだ足りなかったのかしら?」


「ぐ、おおおおおおお!」


 最後の力を振り絞り殴りかかる、ただそれすらもあっさり殴り返され俺の意識は、そこで途絶えた。

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