告白と元カノ

 お二人さんはそれはそれは仲睦まじそうにイチャイチャしながら、歩いていた。

 元カノはあいつの肩に腕を絡ませ微笑んでいる。

 そんな光景を見ても、何故だが何とも思わなかった。

 別に悲しくもないし、嬉しくもない。

 どうでもいいというのが、正直な所だ。

「...マジでムカつく」

 七海先輩はより強く俺を抱きしめてきた。

 豊かな胸に押し潰され今にも窒息死しそうである。

「な、七海先輩ギブです!死にます!」

「ご、ごめんね!」

 なんて会話をしている間にあいつらはどこかへと行ってしまった。

 俺と七海先輩は少し気まずくなりながらも、歓楽街を越え、そのままいつも通り帰宅しした。


「いや~ビックリしたねー」

 手を洗い終え、リビングで一息つくなり七海先輩が困惑したような面持ちで呟いた。

「ですね」

「だね~」

「...」

 しばしの沈黙が続いた後、七海先輩はチラチラと俺の顔色を窺うように俺のことを見つめてきた。

 きっと心配してくれているのだろう。

「い、一旦家出ようか?一人の時間欲しくない?あっ、それとも一緒にいた方がいいかな?」

 七海先輩は前とは打って変わってあわあわとしながら問いかけてきた。

 やはり身内の問題といこともあり、混乱しているのだろうか。

「大丈夫です。本当に気にしていませんので」

 これは詭弁でもなんでもなく事実である。

 あの失恋について気にしてないと言われれば嘘になるが、今回に限っては本当に特に何も思わなかった。

 おそらく、彼女に裏切られてフラれたという事象自体がトラウマになっているだけで、あいつらに対しての情もショックで友情や恋愛感情と消え失せてしまったのだろう。

「気にしてないって...」

 また俺が感情を押し殺していると思ったのか、七海先輩は少し悲し気な表情を浮かべ俯いた。

「...俺は七海先輩や周りの人さえそばにいてくれたら、それでいいんです」

「...そっか。先輩、君がそう思ってくれてたなんて嬉しいな」

納得してくれたのか、七海先輩ははにかんで見せてきた。

「七海先輩様様ですよ。逆に七海先輩はこんな屁理屈野郎といて楽しいですか」

「...どうかな~?たまに自虐ネタうざい時あるし...」

「そこは楽しいって言ってくださいよ!?」

さっきまでのエモい雰囲気を返してほしいものである。

「...冗談だよ、冗談~楽しいよ?君、いじめるの楽しいし...それに好きだから」

「それ、男子が勘違いするランキング第一位のセリフですよ~...友達としてってことですよね?一瞬、ビックリしちゃいましたよー」

七海先輩は無言で隣のソファから立ち上がり、俺の前にきて屈んだ。

ちょうど、同じ目線くらいで俺の瞳を見つめてくる。

そして、覚悟を決めたような表情を浮かべ呟いた。

「...お、男の子として好きだよ...?」

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