七海先輩と直談判前の一幕

「19時にはうちに帰ってくるそうです」

 おばさんが仕事から帰ってくるのが19時くらいとの事で、俺と七海先輩は近場のカフェで夕食を済ませてしまうことにした。

「おっけ~後、一時間くらいね」

 店内は昔ながらの憩いの場と言った感じで、古本や昔のおもちゃや曲が流れていてまるで令和から昭和にタイムスリップしたかのようだった。

 平成生まれなのに、どこか懐かしいような大切な何かを失ってしまったような、えも言えぬような喪失感に襲われる。

 初めて訪れたお店だったが、かなり気に入ったのでまた来ようかななんて思っていると七海先輩が何か思い悩むかのようにこちらを見つめてきた。

「どうしました?」

「私って君のおばさんからどう思われるのかな...?」

「どうとは?普通に仲のいい友達じゃないですかね?」

 七海先輩は頬を赤らめ俯き、叫んだ。

「...仲のいい(夜の)お友達って思われない!?」

「本当に先輩は何を言っているんですか!?」

 というかこういう下系は店内では恥ずかしいのでやめてもらいたいものである。

「なら、聞くけど図書委員でいつもサボって野球を頑張ってくれちゃってる福島くんいるじゃん?」

「はい...いつも、いつも頑張ってくれちゃってますね」

 そのせいで何度七海先輩と俺が過労死しそうになったことか...

 あの坊主許さねえ。

「確か彼、よく一人暮らしの女友達の家に泊まってるんだって」

「なんですかそれ!俺たちは学校で召使いのように使われてるのに...!」

 本当にバット折ってやりたい...

「で、どう思う?」

「...何がとは言いませんが、絶対にそいつらやってますよ!学生なら、勉強しやがれって話ですよね」

「それは同意だけど...これ、私たちに酷似していると思わない?」

 確かに俺は七海先輩の家に泊まっているがあいつらとは違う。

 俺たちの関係はそんな破廉恥なものではなく、熱い友情なのだ。

「で、でも...俺たちはそんなリア充みたいな事してないし」

「それは福島くんにも言えることじゃない?」

「確かに!?」

 あいつらが恋愛関係ではないと否定しても俺は絶対にそれを詭弁だと思うだろう。

 というか福島の場合は絶対にそうだ。

 ....まじゆるさない。

「私たちが何も言わなくても否定しても、泊まってるという事実だけど詰んでる気がする...」

「...まあ、でも本当にただの健全な友達なんだから、おばさんも分かってくれると思いますよ?」

 恋人である高田さんはあれだが、おばさんはこんな俺を育てくれるほどにはいい人なのだ。

「そ、そっか~よかった...こんなお馬鹿な事話してないで夕食、食べちゃおっか」

 七海先輩はおばさんを疑っているのか半信半疑と言った感じだったが、これ以上この話をしても無駄だと判断したのか取り繕ったような笑みを浮かべメニュー表を渡してきた。

「は、はい。そうですね」

 俺たちは少々気まずくなりながらも、夕食を食い終え自宅に向かったのだった。


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