動揺と夜遊び
「...どしたの?」
おばさんからの衝撃の告白から一週間が経った。
今はるなの家で洗濯物を取り込み終え、リビングで一息ついている所だ。
「え?何が?」
「何がじゃないでしょーここ最近、我ここに在らずって感じじゃん」
るなは少し呆れたような、そしてどこか寂し気な表情を浮かべながら隣のソファーに座ってきた。
「...ああ、実は好きだったアイドルとテレビでよく見る実業家が付き合ってたみたいで...!世の中は金か!?金なのか!?って病んでた」
心配してくれるのはありがたいが、俺はるなや七海先輩にこの件は話すつもりは全くない。
こうして心配してくれるだけで、十分救われている。
それに、これは家族の問題なのだ。
七海先輩には少し話してしまったが、これ以上は話してもそれは七海先輩を傷つけるだけだ。
なぜなら、以前は解決の糸口が見えていたのに対して今回は見えていないのだ。
失恋も俺があいつを忘れるか或いはまた誰かに恋すれば解決する。
高田さんの件もあの人が帰れば解決だ。
だが、今回はどうだろう。
結婚を決めた二人を止めることが出来るだろうか。
おばさんに頼めば、やめてくれるかもしれない。
でも、果たして両親が交通事故で突然死して、今まで恋愛などすべて我慢して面倒をみてくれたおばさんの幸せを壊すことが許されるのだろうか。
いくら結婚相手が嫌な奴だとしても許されるわけがない。
というか、そんなの俺も望んでいない。
それに俺は二人を祝福するつもりなのだ。
おばさんには俺のせいで失った青春を取り戻せなくとも、今から取り返してほしい。
だから、そんな誰も幸せになれないことをするつもりは毛頭ないし、やる意味もない。
「...」
るなは無言で俺の太ももを掴んでくる。
「だから、俺も金で物を言わせらえるように勉強もっと頑張ろうかな~あっ、それよりはオンラインサロンして信者?集めた方がいいのかな?」
「...私ってそんなに頼れない?」
「頼れるに決まってるだろーるなは俺よりコミュ力高いし、大人だし」
「なら、なんでいっつもそうやって子供扱いするの?私とようくんは一歳しか変わらないんだよ...!」
子供扱いなんてしているつもりはない。
俺が子供だからいけないのだ。
俺が人に哀れまれるのが怖くて、迷惑を掛けて罪悪感や窮屈な思いをするのが嫌で、ただ逃げているだけだ。
俺の身の丈に合わない自意識と自尊心のせいなのだ。
「...わかってる。だから、俺は...だからこそお前に迷惑を掛けたくないんだよ」
「...意味わかんない」
俺もこんな俺が意味わかんない。
意味不明すぎる。
なぜ、ここまで面倒くさい人間なのか自分でもわからない。
「...悪いちょっと頭冷やしてくる。またな」
「...」
俺は顔をしかめているるなを横目に家を出た。
「....何やってるんだか」
俺は駅前のベンチで一人コーヒーを飲んでいた。
シュガー入りを選んだはずなのに全く甘味はなく、まるでブラックかのように苦い。
我ながら最悪だ。
俺を思って色々としてくれたるなに対してあんな態度を取ってしまった。
本当につくづく自分の醜悪さを実感する。
今も心も奥底ではこうなっているのは元カノ、高田さんのせいだと思っているのがその証拠だ。
これが七海先輩が俺だったら元カノや高田さんともうまくやっていただろう。
結局はいくら責任転嫁したとしても、こうなっているのは俺のせいでもあるのだ。
あれこれと考えているとまた前みたいにスマホが揺れた。
おばさんだろうか。
そう思い確認すると『七海 紗凪』と表示されている。
「もしもし?」
「もしもし~先輩が君を慰めてあげよう~!!...駅の西口集合ね!それじゃあまたあとで」
そういうと電話はきれた。
門限があるので、帰らなければいけないが七海先輩の事だからもう家を出てしまっているだろう。
ということで、俺は西口に向かったのだった。
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あと、今日から21時38分投稿します
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