ライフハッカー

高山小石

第1話 最近の夢の尻尾はつかめるらしい

 まれに、「あぁ今、夢をみていたな」と思う朝がある。


 すごくおもしろかった気がするのに、どんな夢だったか正確には思い出せない。

 なんとか知りたくて、ふとんの中で目を閉じたまま、さっきまでみていたはずの内容を思い出そうとするんだけど、思い出そうとすればするほど、記憶はどんどん遠ざかってあいまいになってしまう。


 つかもうとしてもしゅるりと逃げられる、まるで猫の尻尾のような……。


 あたたかいふとんの中から出たくない言い訳みたいなのをぐだぐだ考えていたとき、手のひらにふわっとした感触がすべったから、思わず力一杯つかんでしまった。


 ソレはもふっとしているけどしっかり存在感があって、なんだか夢とは思えないな、と半分寝たままニギニギ楽しんでいたら、


「こんぐらっちゅれーしょーん」


 『おめでとう』といいながら、全然お祝いっぽくない棒読みの声が聞こえてきた。


「ボクをつかまえられたキミには特別に、なんでも願いをかなえてあげるよ」


 こんな夢だったっけか?

 それにしても無表情な声だなぁ。ロボットの方がまだマシそう。


 俺は「よくある話だな」と思ったんで、目を開けずつぶやいていた。


「あー、はいはい。なんでもとかいってるけど、結局ひとつだけとかみっつだけのヤツだろ」


「いくつでもオッケー」


「なら、質問で消費されちゃうんだろ? 『今のでひとつかなえたぞ』って」


「質問は願いに入らないよ」


 夢なのにしつこいな、と目を開けたら、俺の手元にガッツリ尻尾をにぎられた変な色の猫がいた。

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