第5話

『15:00ちょうどまで!5、4、3、2、1!!』


『スタートッッ!!!!!!』





 イヤホンから聞こえた合図で、鬼ごっこが始まった。



 足をバタバタさせたくなるような、うっきゃー!!って叫びたくなるような、この感覚…


 それを抑えるため、私はエスカレーターの手すりをぎゅっと握った。



 そうだ思い出したっ!

鬼ごっこを始めるときに似てるんだーー!!

…って!!!



 私は私にツッコミを入れた。ビシッ!!



 無意識に手をツッコミ型にしているうちに、3階に到着。



 鬼ごっこなんて、本当に何年振りだろ…ひょっとしたら、小学生以来!?



 わーわー騒ぎながら日が暮れても遊び続けて、それでもまだ足りなくて。どういうルールなのか、続きは明日に持ち越しして…遊ぶことに全力だった。



 その時の気持ちを少しだけ思い出して、私は一歩だけ走り出してみた。



 あの頃より、なぜか一歩が大きい気がする…なんでだろ??



 場所を気にして一歩だけにしたことで、答えはもう出てる。





 ここは公園じゃないし、遊べる時間だって決まってる。小学生だった頃とは違う…

 これは、大人の自分じゃなきゃできない鬼ごっこなんだ。



 私は黙ったまま、ゆっくり歩き始めた。




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