第3話

『配信鬼ごっこ、はっじまるよ~!!』



  オレは、スマホをポケットにそっとしまった。そして、イヤホンのコードが見えないように、服の内側から通す。

 空いた手で、よっこらせ、と、大きなトートバッグを担ぎ歩き出した。




 このとんでもない企画に誘われたのは、先週のことだ。

 聞いた瞬間、両手では数えきれない程の作戦が頭に浮かんだ。即刻、参加を表明した。

もちろん、なんだそれは!?と思わなかったのか…と聞かれたら、答えはNoだが。

 興味の方が圧倒的に勝ってしまった。

 昨日になっても、あれもこれもと思いついてしまい、上手く寝れなかったくらいだ。



 数ある作戦を総合し、何度かシュミレーションを行い、今日に備えた。




 このゲームは、ゲーム中に駅ビル内での買い物が許可されている。もちろん、会計中に鬼に見つかる可能性はある。そうしたらおそらく逃げられないだろう。



 だが…もし、成功したら…?



 ここがオレの作戦だ。

 鬼ごっこなのにこの大荷物の理由は、中に入っている着替えだ。帽子やら、上着やら、マフラーやら…アイテムを変えれば、パッと見では同じ人物であることはわからないだろう。更に、ゲームの途中で買い足すつもりだ。コインロッカーを使うのもありだな。



 オレは柱の影に隠れ、そっとトートバッグを開いた。




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