呪い花と花喰蝶
金井花子
第1話 悔恨
一、『呪い花』の普及
我々はあの花の蜜から神秘を取り出しそれを体内に取り入れることで魔術の質をより高めることに成功し我々はその魔術を以ってこの地の戦乱を鎮め粗野で無力な民衆騎士貴族を統治する代表となる。
この過程で『呪い花』には人の心を安らかにする効能を発見した我々は速やかにこの世界に在る全ての人間にこれを与えなければならない。幸いにも『呪い花』の力を知った諸外国が次々と来訪しており『呪い花』の影響が世界に広がるのは時間の問題である。
第一段階としてこの島に住まう全ての人間を一つの場所にまとめる。それぞれの地区に管理者たる『花の魔女』を設定し各区に専門の役職を与え人員を配置する。
二、『花の魔女』の価値
『呪い花』の実験の副産物で『花の魔女』と称される彼女たちが生まれてしまったのは少々計算外であった。彼女たちが振るう力は魔術とは別の方向性であり少し誇張が過ぎるが神秘や奇蹟と形容するしかない。
故に彼女たちが我々に対して協力的であることは喜ぶべきことである。『花の魔女』の成立過程には謎多いも幸運なことに実験対象を得ることは容易なり。『呪い花』の受け入れに際しこれを拒否する輩が現れることを鑑みれば『花の魔女』の力で彼らを倒すことを要す。
特記事項『呪い花』
『呪い花』の蜜を得た多くのま術師の行動や知能に極めて異常なかんそかが見られる。
行動については全体的な行動のかんまん化がけん著であり反応速度の低下や危き意識や食事睡眠の消失が挙げられる。私は彼らの身体検査を申し出たが上層部にきゃっかされた為に彼らの目を盗んで数名の検査を行った。結果として彼らの肉体は健康的であり不審な点は見受けられない。
検査中私の不注意で一名のまじゅつしにわずかなそと傷を与えてしまったがその傷はすぐさましゅうふくしたことは幸運である。
知能については極たんな会話の消失及び筆記能力の低下が確認される。複雑な会話を行わず彼らの殆どは簡素な肯定と否定を繰り返すのみであり筆記では七さい程の子供程度の文字を書く者から全く文字を書けない者まで存在している。
また上記に該当しない者は幻ちょうの症状を訴えている。被験者の会話能力が低下しているためにその内容は支りめつ裂であるが幾つか判明したのは『呪い花』の蜜や花自体を他者へ強いることである。
なおこれらの症状は『花の魔女』には見られない。何かとくしゅな条件があるとすい察されるため速やかに『花の魔女』の検査をおこなうべきである。
……以上のことから私は『呪い花』が一般的な花ではなく我々人間のような生命体ではないかとかていするに至る。『呪い花』がわれわれに対しこのようなことを行う理由はふめいりょであるが……否この地は『呪い花』のおんちょうによって平和がもたらされたのでありそのこうどうりゆうはじんるいすべてにむげんのいのちをあたえることでせかいにえいえんのへいわを齎すことなのかもしれない。
我々は過ちを犯した。『呪い花』を利用した時には既に『呪い花』は我々のことを利用していた。
最早『呪い花』の拡大を止めることはできない。奴らは我々の中に深く広く根を張った。我々人類が長い月日をかけて得た知識とそれに纏わる全てのものを栄養として吸い上げ煌びやかな花を咲かせる。
『呪い花』はさらに何かを企んでいる。秘花学院奥にある封鎖された扉の向こうで何かが成長している。
奴らは巣食うのだ我々に。
彼らは救うのだ我々を。
鉢を与えろ。
命を吸い上げ。
花を咲かせよ。
もっと多くの人間を引き寄せろ。
呪いを世界中に広げんために。
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