つくば11龍と水の民

夢ノ命

第1話 終わりの始まり


   【序】



2024年6月10日午前2時20分頃……



大きな揺れを感じて、山川草一は目を覚ました。


立て続けに、地鳴りのような音が地面の底からしたかと思うと、

いまだ一度も経験したことのない激しい揺れに襲われた。


「地震だ! しかも大きい」


草一は、急いで布団をはねのけると、揺れの中をふらつきながらも立ち上がる。

束の間、本棚やタンスが倒れる音がした。


電気はつかない、停電のようだ。草一は小走りに仕事部屋へとつづく廊下を通り、

部屋の中に入ると、手探りでラジオを探した。


ねじ巻き式の非常用ラジオは、部屋を入ってすぐの壁の上部にぶら下がっているはずだった。


運よくひもをつかんで、ラジオを胸に手繰り寄せる。

スイッチを入れ、チューニングを合わせると、まもなく音が聞こえてきた。


関東直下型の地震を告げるアナウンスが流れ始める……

草一の顔から、血の気が引いていく。


「震源地は茨木、筑波山は大丈夫なのか? 龍たちは無事なのか? 水の民たちは?」


草一の脳裏に矢継ぎ早に浮かび上がる問いは、次の瞬間にはむなしく感じられた。


本当に起こってしまったのか? つくば11龍でも、止められなかったのか?

だとしたら、これが終わりの始まりなのか?


揺れ続ける暗闇の中で、草一のそばの壁に、ギシギシとヒビが入る音だけが、しきりにこだましていた。……



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