第4話
ルイスと組んでいた時の戦い方は、僕が索敵をしながら銃で援護する。近接は全部ルイスに任せることになるけど、あの時のルイスはそれでも問題なかった。でも今日は少し足が重そう。他の隊員を守りながらだからだし、もしかしてどこか怪我でもしたのかな。
『ルイス、右から敵が2人来るよ。』
『1人頼む。』
『わかった。接敵までカウントダウンするね。6・5・4…』
「スナイパーよ手元に。」
2・1、今!
ヒット。隊長になったルイスは3年前とは動きが少し違うし、やっぱり僕と違って強いな。懐かしい感じがして少しうれしい気持ちがある。でもやっぱりルイスの動きがワンテンポ遅れる。3年ぶりに戦闘してる僕に合わせてくれてるから戦いずらいのかな。
まぁ、でもガルシアさんの事が気になるよね。僕も気になるし、何だったら味方もまだ近くにいるから迷惑かけたことをすぐにでも謝りに行きたい気持ちを抑えて、敵をなんとかしないともっと負傷者が増えるのも困るし、何よりガルシアさんからの頼みだから。
【敵が何人か動きました。】
―マークして。
【マークします。】
また囲むように敵が動いてる。数は未だに敵の方が有利だし、ルイスを倒した方が早いのは敵もわかってる。
!!また、あいつが動いた。ガルシアさんをやった奴だ。動き方がやっぱり違うから索敵してる身としてはそっちが気になる。ルイスは気づいてない…。他の敵2人相手にしてるから対応は無理。僕がやるしかない、か。久々だけど鈍ってないと信じてるよ。
― さっきの敵マークして!
【マークします。】
「拳銃よ手元に。」
3年前みたいには動けないと思うけど…。頑張ってくれよ僕の体。3年間も休んだんだから、せめてルイスの事だけでも守らせて。
真っ黒いフルオートの拳銃2本が僕の手に。腰にはリボルバーの銀の拳銃が1本。3年ぶりに出してみたけどやっぱりこの銃の重みがあるとしっくりくる僕の相棒たち。拳銃は魔力消費が少ないらしく僕としては使い勝手がいい。拳銃本体も弾も魔力で出来てるけど、本体は出したらそのまま魔力固定でいいし、弾は外さなければ…ってそんな事言っている場合じゃないや。
ルイスの背後を獲ろうとしている敵が2人。
「ごめんね。」
パン パンッ
ヒット
さて、拳銃を持っちゃったからにはルイスの近くに行かないと敵に弾が当たらないし、最悪ルイスに流れ弾が当たる可能性もある。
「…来たよ。」
「おせぇ。」
さっきまで辛そうに戦っていたルイスが、なんとなく笑ってる気がする。昔も戦っているときはいつも笑ってた気がするな。
「それにしても遅いって失礼だな。カバーしたのに?」
「うるっせぇよ、3年ぶりだろ銃持つの。俺の事撃つなよ。」
「はいはい。ルイスこそ背中がら空きだから僕に打たれないように気をつけてね。」
「言ってろ。さて、行くぞ。」
「作戦は?」
「いつも通り。」
「はいはい。」
ルイスとの戦闘は久しぶりだけど、やっぱり安心する。伊達に2年もバディしてたわけじゃないね。作戦は”いつも通り”これで通じる僕たちは当時は最高のバディだと思ってたんだけどね。
「はぁー、やっぱりお前と組むのは違うわ。」
とか隊長様が何か言ってたけど聞こえなかった振りをした。ちょっと途中勘が鈍って危ない場面もあったけど、AIのサポートもあってかなんとか2人で敵を退けた。
「久々でも長くやってたからか、初めて組むやつよりはいいな。」
「ならよかった。でも今回だけでしょ?ほら、ガルシアさんがいるし。」
「戻りたくねぇの?」
「え?」
「いや、何でもない。俺が今回だけって言ったことだからな。さて、帰るか。」
聞こえてないふりしたけど、戻りたくないか、か。まさかルイスからその言葉が出てくるとは思わなかった。だって、ポンコツっていうレッテルを貼られてからは事務作業とか索敵しかしてなかったし、そんな前線に戻るなんて無いって思ってた。なんなら前隊長に言われてから前線は向いてないとも思ってたし。でも前線は一人じゃないから嫌いじゃなかった。だって、索敵は一人だから結構孤独との闘いだからね。僕もルイスと組んでるときはやりやすかったし、楽しかったから。そんなルイスに戻りたい?とか言われたら考えちゃうじゃん。
拠点に戻ってきた僕たちは、ガルシアさんの容態を見に行くためと、撤退完了の報告もかねて救護室に向かった。
「おかえり。2人とも。」
そこには痛々しいほどに体のあちこちに包帯を巻かれたガルシアさんがいた。
「ガルシア!お前、大丈夫か!?」
「そんなに大声上げないでくれないか。起き上がるぐらいなら平気だから。」
「そうか。」
ルイスはほっとしたような顔をして「報告してくる」と言って部屋を出ていった。
今ガルシアさんと2人はちょっといずらいな…。僕がちゃんとサポートできていればケガしなかったかもしれないし。そもそも僕の目の前で刺されてるから、僕がちゃんと助けろよって話だよね…。
「どうだった?」
「うぇ!?」
考え事していたから変な声が出ちゃった。
「緊張しているのかい?」
「いや、その…すみませんでした!!僕がサポートできていればガルシアさんは刺されなかったし、みんな撤退しなくて済んだだろうと思います。」
「んー、ルイスが助けに来るのは無理だったと思うし、フィードが俺のところに来るまでにはどちらにせよ決着はついてたと思うよ。今回は俺がしくじって相打ちになっちゃったけど。」
「え?」
それは、僕が使えない隊員だから?それとも、一つのことしかできないから?いや、どちらにしても僕の能力的には無理だったか。
「あ、いや能力的に、とかじゃなくて、状況的にね?」
「どういう…。」
「俺の推測にはなっちゃうんだけど。ほら、あの時フィードは木の上にいて、皆をサポートするために索敵してくれていただろう。その時フィードは多分、消えた敵・俺を狙っていた敵・味方の位置の全部を把握してくれようとしていたはず。そこで俺のことを一目散に助けに来ていたら状況が見えなかっただろうし、そうしたら味方の被害がかなり大きくなっていたと思うんだ。」
たしかに、僕があの時木から降りてガルシアさんを助けていたら、森であの人数の敵の場所を地面から索敵するのは至難の業だ。その後撤退するってなった時の被害は大きかったかもしれない。でも、そこでけがをする人が僕だったらまた結果が違っていたかもしれないって考えちゃうんだ。
それに、ガルシアさんだから大丈夫っていう放漫な考え方をしたからこそ対応が遅れてしまったのもある。止血が間に合ったからよかったけど。
「んー、かなり考えてるみたいだけど、俺はこれでよかったと思ってるよ。あの状況で俺に危険を知らせてくれただけでも十分。それに結局手当てしに来てくれたしね。だから、気にしないで。って言っても無理かもしれないけど。」
「でも!」
「まぁ、俺も今日はケガしたばかりだからさ、フィードも疲れたでしょ、お互い休もう?」
「はい。…失礼しました。それじゃあ、お大事にしてください。」
「うん。ありがとう。」
そうガルシアさんに言われて待機所に戻ろうと救護室を出るとルイスの怒声が廊下に響いていた。
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