第2話
実際に使ってみると、すごく難しかった。
今まで見えてなかった魔力検知による敵のマークが接近戦だとすごくすごーく邪魔…。遮蔽物に隠れていてもいなくても同じようにマークされるからどこにいるかわかりずらいし。敵の上に距離が出されるから遠くの索敵にはいいけど、もともと苦手だった接近戦がもっと苦手というか、嫌いになりそう!
「水y―」
【魔力検知。マークします。】
「いきなり!?いや、近いから見えてるって!!邪魔ーー!!あ゛ーーーーーーもう!!」
【右より敵接近。】
「知ってる!見えてる!!もー、負けたじゃんっ!AIのばかー。」
「お前、めちゃてこずってるじゃん。まだゴーグル付けない方がましなんじゃん?」
実戦形式で使用してみようということで、セシリオと1vs1してみたけど、本当に使いづらい。せめて物陰の敵はマーク薄めるとか、AIの告知が遅すぎてむしろ邪魔だし、むしろない方が戦えていたのでは?
「本当だよ…。なんでセシリオはそんなに使いこなせているの?」
「ん?ほら、マークって設定できるし。AIが覚えてくれるからそんなに困らないかな。」
「なんで僕のAIは設定できないし覚えてくれないの…。」
「まぁまぁ、焦んなって。そのうちAIも覚えてくれるんじゃない?」
そうだとしても、今までなかったものが突然出てくると邪魔だなって思っちゃうよね…。近接が駄目でもせめて索敵では使えてほしいな。
「よーし、各々慣れてきたところで次は索敵訓練するぞ!各班ごとに分かれて行う。まず—」
索敵訓練の内容は、1班ずつ索敵側でそれ以外は敵という設定で訓練していくらしい。2人で残りの隊員を何人見つけられるかっていう訓練兼競い合い見たいな感じだって。僕は班に所属してないから1人なんだけど、一番不利じゃない…?
「じゃあまずはフィード、やってみろ。」
「はい。」
【敵をマークします。】
「だぁーかーらぁー!!見えないって!!!マークが濃いよ…。」
結果は思っていた通り、下から数えた方が早かった。まだ最下位じゃないだけましかな。やっぱり敵のマーキングに慣れなくて、他の敵が見えないって騒いじゃったんだよね…。本当にこのゴーグルを使いこなせる日が来るのか不安だわー。
「フィード、ちょっといいかい?」
振り返ると副隊長のガルシアさんが少し申し訳なさそうに立っていた。なんでガルシアさんがそんな顔してるんだろう。
「はい、大丈夫です。」
「ずっと訓練中見えないって言ってたけど、敵が見えないのかい?」
なんでわかったんだろうとか思ったけど、あんだけ叫んでたら聞こえてるか。
「いえ、マーキングされているので見えてはいるんですけど、敵のマーキングの色味が強すぎて他の情報が見えないんです。」
「なるほど。そしたら設定を変えてみたら少しは変わるんじゃないかな。色の強さとか色そのものとか表示の仕方も変えられるみたいだから、自分好みに変えてみようか。貸してごらん。」
「設定で変えられるんですね!ありがとうございます。」
「いえいえ、フィードの索敵は僕たち隊にとって重要だからね。」
「あ、ありがとうございます!」
お世辞なんだろうけど、副隊長にそう言われるとすごくうれしい。
普通は隊長のルイスに憧れるけど、僕は副隊長のガルシアさんに憧れている。ガルシアさんは書類管理はもちろん、隊員みんなの事を見てくれていて優しいし、もちろん戦闘も強いしで、みんなのお兄さんみたいな存在なんだ。年齢はそんなに変わらないんじゃなかったかな?なのにこの安心感はすごい。ルイスとは大違い。
「ねぇフィード、気になっていたんだけど、どうして前線に出ないんだ?理由があるのかい?」
「それは…、僕みたいな魔力の少ない隊員が前線に行っても力になれないからです。」
「そう、かな?俺はそうは思わないけど。まぁフィードがそれでいいならいいんだ。ほら、設定終わったよ。」
「ありがとうございます。」
「試しに俺と手合わせしてもらえるかな?」
「え!?あ、はい!よろしくお願いします!」
わぁ、ガルシアさんと手合わせなんて光栄だけど、僕なんか相手にならないだろうに、でもこんな事めったにないし、一回手合わせ仕手みたかったからお言葉に甘えちゃおうかな。
「じゃぁ、5本先取、武器でも魔法でも何使ってもいい。相手がギブもしくは戦闘不可って判断したらその時点で終了ってルールでいいかい?」
「はい。大丈夫です。」
「おっけい。それじゃあゴーグルに設定してっと。よし、行くよ。」
「はい!」
「「3・2・1・Go!」」
ガルシアさんは戦闘に関しては近接というよりも中遠距離が得意な人だ。接近は僕も得意じゃないからできれば近づいて戦いたくない。でも、遠くに距離をとるとガルシアさんの方が強い。AIにサポートを…って敵をマークするだけだから僕との相性最悪だし、なるべく使いたくないな。
【敵の攻撃を確認。マークします。】
!?
今までは敵をマークするだけだったのに、いきなりどうしたんだ…学習してくれたってこと?いきなり?でもこれで攻撃はよけやすくなった。初めてこのゴーグルのありがたみを知ったよ。
「ふふっ、俺の攻撃をよけれるようになったなんて、ちょっと嬉しいよ。」
「ありがとうございます。これもAIのおかげですね。」
「使いこなせているようで良かった。でもこれで終わりじゃないでしょ?ほら、攻めて来ないと点数取れないよ?」
【近接攻撃を提案します。】
—僕は近接できないって。魔力も少ないから魔力攻撃もできない。
【腰にある小刀を投げてください。場所はマークします。】
!?
思っただけだったけどAIと会話できた!?そんなことできるんだ。便利だ。でも確かに護身用で小さい刀はあるけど、それ投げたらそれこそ僕の近接武器なくなっちゃうじゃん。大丈夫なのかな。
【大丈夫です。場所をマークします。】
—はぁ、もう。わかったよ。
「刀よ手元に。」
僕たちの魔法の使い方は、○○よ、って感じで言うだけで後のことは想像で動かすことで発動できるらしい。もっと魔力のある人とかだと念じるだけでいいみたいなんだよね、ガルシアさんとか…ルイスとか。なんか昔の人たちは大層な呪文で魔法を発動してたらしいけど、”魔法は想像から”とはよく言ったものだよね。他の国では今も呪文を唱える国もあるみたいだけどね。そんな悠長なことしてたら敵に責められちゃうから僕はこっちの方がいい。
とりあえずAIのマークの場所に投げてみる。煙幕も何もない状態で投げたから綺麗に躱されますよね、そりゃ。相手は副隊長だよ?
「見え見えなのになんで投げたんだい?フィードの攻撃はそうじゃなかったでしょ?」
「AIが投げろって…。」
「ふふっ、そうかい。てことは考え無しってことだね?じゃあ今度は俺の番。火よ!」
5-0
一本も取れずにストレートで負けた。
AIもちゃんと働いてくれるようにはなったけど、まだちょっと足りない。というか僕の力不足がでかい。なんとか応戦したけど、点を取るまではいかなかった。最近はまともに実戦してない上に隊のNo.2と戦ってるんだから、1点でも点を取れたらすごいけどね。
「ありがとうございました。」
「いえいえ、俺の方こそありがとう。設定しなおしたゴーグルの使い心地はどうだった?」
結構長い間戦ってたはずだし、走り回ってたのに呼吸が乱れてない。なんなら髪すらも乱れてないや。さすが副隊長って感じだね。
「最初の時よりも断然いいです。これで敵のマークがどうなるかですね。」
「前よりも使えてるならよかったかな。敵のマークは次の任務の時に実際に使ってみてから調整しようか。」
「はい。」
ガルシアさんと戦ってみて、前よりはかなりゴーグルが使えるようになったから実践でも使えると信じたい。まだまだ難点は多いし、通信機能もどんな感じかわからないから試してみないとだけど、無いよりはましかな。
次の任務でもう少し調整したいな。今度は自分で調整できるようにガルシアさんに教わりながらやってみよう。そしたらこんな僕でも戦えるようになる日が来るかな?
なんてね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます