第7話 作戦会議

 明朝。

 まだ日が昇りはじめる前にゲイルたちは北の山に向かう門を抜けていた。

 北の山は本格的な登山道が整備されているわけではないが、ギルドから依頼を受けてドレイク狩りなどをやっているからか、比較的に整備されている。元々北の山は草木が少なく、ドレイクが放つ炎などで更に少なくなっていた。

「そういえばここは活火山だったな」

 ドレイクを狩りに来ることが少なかったジークは、久しぶりに立ち入るこの山に入り思い出したかのように、まだ活動している火山ということを思い出した。

 千年近く噴火した形跡はなかったが、火山活動がなかったのではなく、ドラゴンが火口で眠っていたから噴火などが起きていなかった可能性が浮かんでくる。

「そうだぞ。ドレイクがいるから火山の噴火が起きなかったって言われてるけど、ドラゴンが現れたと同時に火山活動が活発化してるのも変だよな」

 ドラゴンが火山活動を抑え込んでいたと言われれば納得できないこともないが、ドラゴンにそのような芸当ができるとは思えない。

「……、竜は厄災と繁栄の象徴。そんな話もあったよな」

 ジークは過去の伝承が書かれていた本の一節を読み上げる。竜は世界に厄災と繁栄を齎すものとして語られている。これは砂漠の町の中央広場にある石碑の一番上にも彫られていた。豊穣祭の時にも竜の迎撃に向かう前に代表が、この一節を読み上げる程にこの伝承は信じられていた。


 ゲイルたちは山頂に向かって歩いていく途中、山腹にあるギルドの簡易拠点ベースキャンプで足を止めた。

「ここで一旦休憩するか」

 ゲイルたちはギルドの簡易拠点に入る。

 簡易拠点と言ってはいるが、実体としては結界石を中心とした宿泊拠点となっている。携帯・簡易食糧の補充や数日掛かりの任務の宿泊先としても使われていた。ドラゴンの出現に伴い、ここに常駐しているギルド職員たちも避難している。

 副マスターに借りてきた鍵で休憩所のカギを開ける。

「まずは態勢を整えよう。現在の天候は曇りだ。湿度も高くいつ雨が降るかもわからない」

 数日中に雨が降ると聞いてはいたが、こうも早く降る気配が出てくるとは思っていなかった。

 たった二人でドラゴンを討伐するとなると、相応の準備が必要になる。まずはドラゴンの攻撃に耐えうる装備に着替える。火炎ブレスや火属性魔法対策として、炎属性耐性を付与エンチャントされた防具に着替えた。いままで防具らしい防具を着けずに戦ってきていたが、ドラゴンの攻撃に耐えられるような実力を持っていると思えるほど、自分の能力を過信していない。

 ゲイルは自分の速さを殺さない程度の軽装ではあるが、ドラゴンから致命傷となる攻撃を防げるようにしている。

 ジークも軽装だが、耐火性を高めた装備であり、魔法による遠距離攻撃を主とするため物理攻撃からの防御を切った選択であった。

「さて、どうするか」

 ドラゴンがいる場所は観測隊の報告だと、火口付近に陣取っているが、特段何かする様子もないらしい。背後からの不意打ちも策としては考えられるが、確実に仕留められるもしくは、翼膜に大ダメージを与えられる可能性が低い。

「正面突破って言いたいがむずいよな」

 ゲイルが正面からの殴り込みと言う狂気を見せる。

「本気でそれでいいならいいかもしれないな」

 ジークにしては珍しく、ゲイルの提案にノリ気であった。

「本気か?」

「ああ。面白そうじゃないか」

 ジークは魔道具を取り出してからこう告げる。


「正面からドラゴンを仕留めたら、最強を名乗りやすいじゃないか」


 ジークのこの言葉にゲイルは笑いを堪えながら親指を立てる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る