3,「付喪神」

「なんだよそれ!?」


訳が分からず、照士は声を荒げた。

んー、と首を傾げる彼は、どう説明したものかと考えている様子だった。

しばらくして、彼は右手を差し出した。


「まあ、僕はバットだ。よろしく」


片仮名の名前。茶髪だし、外国人か?


「俺は、照士」


助けてくれてありがとう、と言いながら照士は名乗った。


それにしても、と照士はバットと名乗った男の左手を見つめる。そこにはバットが握られている。


バットは照士の視線を辿り、笑う。


「お目が高いね。そうそう、このバットだよ」


照士は「はあ?」と呆れた声を出す。


「僕は付喪神。ここは付喪神たちが夜になると目を覚ます街」

「さっきの霧みたいなやつは?」


照士が聞くと、バットは少し悲し気に目を伏せた。


「あれは、付喪神のなりそこない……ってとこかな。怨霊ともいえるかもしれない」


人に愛され、長く、大事に使われた物に付喪神は宿る。

大事にされなかったり、短い期間しか使われなかったりすると、付喪神になれない。


付喪神になれなかった魂が、大事にしてくれなかった――長く使ってくれなかった人間に恨みを持つと、霧のような形で人の姿を模してしまう。


「それが、あれの正体か」


バットの説明を聞いて、照士が言った。

バットは頷く。


「意思とか僕たちみたいに人格があるわけじゃないから、ただ彷徨ってる彼らは浄化も出来ず、闘って消すしかない」


照士は、シンプルでわかりやすいな、と自分の拳と手のひらを合わせてパンッと鳴らした。気合を入れる。


「気合入れてるとこ悪いけど、あれには僕たち付喪神の攻撃しか効かないよ?」

「へ?」


照士は間抜けな声が出た。

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