アラフォーぽっちゃりが最高の溺愛家族を作るまで

和泉杏咲(いずみあずさ)

プロローグ

 初デートをするならどこへ行くか?

 制服着たままの遊園地も、いい。

 話題の映画を見に行ってから、カフェでおしゃべりというのも、面白そう。

 水族館でイルカのショーを見るというのも、鉄板だと聞く。

 もしくは、夜景が見えるレストランで、ロマンチックに過ごすのも素敵かも。

 そんな妄想をしていた時期が、かつて私にもあった。

 けれども雑誌やテレビの情報番組に出てくる「デート」には、美男美女しか登場しない。

 すっと細くて、すらっと手足が長く伸びて、肌はしっとりつやつやで、髪の毛もサラサラ。

 どんな洋服を着ていたとしても。

 バッグを持っていたとしても。

 髪型にしたとしても。

 靴を履いたとしても。

 場所にいたとしても。

 そして、どんな表情をしていたとしても、そういう人達は第三者視点で見て、「画」として成立する。

 つまり、足は短くて、肌は脂っこくて、髪は癖っ毛、そして何より体重がもうすぐ90キロいくような私にとって、デートというものは現実ではなく、脳内で妄想して楽しむべきもの。そんな風に、私は諦めていた。

 それなのに何故、40歳という年齢になり、不惑と呼ばれる歳になったはずの私が、30代で自分の病院を開業した天才イケメンドクターに「俺は、あなたのことを、守りたいと思っています。俺の恋人になってください」と言われているのだろうか?

 何故、おとぎ話の王子様のような人が、舞台のセリフのような告白を私なんかにしてくれるのだろうか?

 これは、夢だろうか?それとも罠?

「お願いだ。答えを、聞かせてくれないか?」

 こんな風に、熱を帯びた真剣な目で男性から見つめられたことがなかった。どうすれば正解なのか、わからない。

 もしも、こんな幸せな申し出を、私なんかが受けてしまったら、罰として何か悪い事が降りかかるのではないだろうか?

 今すぐ誰かに聞きたい。誰でもいいから、教えて欲しい。

 話は、数ヶ月前に遡る。

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