【ゲーム原作案コンテスト版】その手枷に祝福を!
夏川りん
序章
そんな亡者の声を上から聞いていた少年は、手のひらにある
さて、どれくらいたっただろうか。少年が最後の一段を下りきると、あたりは火の海であった。ゆらめく
そこには一人の
「元気そうだな」
男は気だるげに視線だけを少年に寄越すと、おかしそうに喉をくつくつとならした。
「世にも偉大な
「お前も気づいているだろうが、今の地獄はまともに機能すらしていない。今はとにかく人手が足らずに首がまわらないんだ。――――亡者の手も借りたいぐらいにな。」
協力してくれ――と閻魔大王とよばれた少年は男の妖しく光る赤紫色の瞳を見つめた。男は少年をみつめたまま、つまらなそうに口をいがませる。
「このまま俺をここから出すわけは、ないよな。どう俺を使うつもりだ」
「お前の記憶と力を全て消す。
男は一瞬目を丸くすると、大声をあげて笑いはじめた。腹を抱えて転がりまわるので、喰らいついていた蛇がずり落ちて血や肉片があたりに飛び散っていく。閻魔大王はただ、温度のない瞳でその光景を見ていた。
「俺を『何も知らないバカ』にさせてまでお前の元で働かせるとはな。こんな面白いことはここ千年はなかった!」
笑い声はたちまち業火の中に消えていくが、男の嘲笑は確かに閻魔大王には届いていた。閻魔大王は静かに男へ告げた。
「お前の新たな名前が必要だな。――コウセツというのはどうだろうか。」
その名の意味を理解すると、男――コウセツはゆっくりと口を歪めて、
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