第5話 役立たず

書斎の中に

一匹の蟻が入って来たようだ


私の食べ残しであろう

小さな糧を運んでいた


彼は何処へ運ぶつもりなのだろうか

この小さな書斎の

彼にとっては大きな空間であろうこの中で

その糧を何処へ運んで行くのだろうか?


それは

冬支度をする小さな命

此の部屋で行く当てもなく

途絶えてしまう命


私は

既にその小さな蟻を見失い


相変わらず

少し開けた窓から忍び込む冷たい空気を吸いながら


心ばかりを動かすだけの

それ以外には何も役に立たない本を読み

自分自身を探している

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