追放騎士のダンジョン商売: 〜外れスキル《空中床》は生産系&内政スキル!? 未開拓迷宮の真上に商店作って素材を売りまくってたら大きな街が出来たけど色々もう遅い〜
第15話 今後の商売拠点のため大きな事務所と倉庫を建築しつつ、魔物を生きたまま箱詰めにする新しい方式を思いつくなど
第15話 今後の商売拠点のため大きな事務所と倉庫を建築しつつ、魔物を生きたまま箱詰めにする新しい方式を思いつくなど
「いやあ、まさか《空中床》で建物まで出来ちゃうなんて、やっぱこの期待外れスキル、応用の幅が滅茶苦茶広いな!」
山の中に大きな館と倉庫を建てながら、俺は口元がにやけてしまうのをこらえきれずにいた。
館は事務所。倉庫は素材置き場。将来の大商いのことを考えると、気持ちが浮ついて仕方がない。
今の俺の魔力だと、一度に出せる空中床は五十枚程度。
通常程度の大きさ、かつ重いものを持ち運んだり配置を移動させたりしないという前提で五十枚である。
でも、十日あれば五百枚で、二十日あれば千枚。
それだけあれば、建物の骨組みとなる柱と梁はおろか、壁や屋根までつくりあげることができる。
申し添えておくと、空中床は
まさに、建築に使うには恐ろしく理想的な性質。
大きな館と倉庫の建築は、みるみる順調に進んでいた。何がいいって、簡単に拡張できるし、ちょっと失敗しても簡単にやり直しができる点である。採寸間違えたから拡大するとか、角度がずれたから少し戻すとか、もっと広くするから一式全部10ヤード奥に移すとか、そんなちょっとした思い付きが簡単に実現できる。
同じことを街の建築士にお願いしたら半殺しにされること間違いなしである。
(見た目がちょっとしっくりこないのはまあ仕方がないや。内装は、白い泥を塗った空中床を使うとか、布を被せた空中床を使うとか、木材や葉っぱや砂で誤魔化すとして……)
果たして、この大きな事務所と倉庫を何に使うかというと、今のところは"特に何にも使わない"。
現状、箱モノだけが先に出来上がっているだけだ。
だが今後、間違いなく役に立つ。言い方は悪いが、魅力的な建物を用意すれば後から人はやってくる。
時間をかけてゆっくり内装にこだわればいいかな……と今後に思いを馳せながら、俺は魔物の解体処理を進めるのだった。
洞窟から倉庫へ、ときおり"黒塗りの箱"が流れてくる。
中からは不気味な鳴き声と、生き物のうごめく音。それがどんどん倉庫に運ばれていく。傍から見れば不気味な光景であろう。
一体何ごとかと思うかもしれないが、実はこれ、箱の中に魔物が詰まっているのである。
(まさに発想の逆転! 魔物を狩ってから倉庫に保管するんじゃなくて、魔物を生きたまま箱詰めにして倉庫に保管する! そうしたら素材の鮮度を保つことはできるし、ある程度魔物の数がまとまってから水で溺れさせれば、川の水の量も節約できるし、溺れるまで待ちぼうけという余剰時間もまとめて削減できる!)
簡単な話である。迷宮の奥からがーっと魔物を引き寄せる作戦、あれを少し改良したのだ。魔物を一気に引き寄せてから、今度はそれを四方八方空中床で全部塞いで箱にしたという、ただそれだけの話だ。
この箱詰め形式、魔物の鮮度を保つことができるという利点の他にも、しばらく置いている間に糞尿を出し切ってもらえる(≒腸など内臓の処理がしやすい)という隠れた利点もあった。
一方、難点としては、魔物が中で共食いしあったり自傷行為を行ったりするという事例がちらほら見られたのだが、こればかりは仕方がない。しばらくこの方法を続けてみて、何か対策できないか事例を蓄積するのが得策だろう。
新鮮な素材を扱える、というのは非常に大きな利点なのだ。ちょっとぐらいの難点であれば目をつぶってもいい。
(だって、腐りやすい内臓を、新鮮なまま素材として採取できるんだ。薬師のアルルーナときたら、目を見開いて驚いていたもんな。おかげで調薬できる薬の種類が広がったってよ)
軟膏、酒で消毒した乾燥粉末、油漬け、すり潰したものを練り直した丸薬。
薬師のアルルーナに聞いたところ、魔物の新鮮な内臓を使うことで、今まで扱うことをあきらめていた薬も作ることができると言っていた。中には脳や睾丸を使った薬もあるらしい。どんな薬なのか怖くて聞けなかったが、まあ、彼女の喜びようから察するにきっと効能の高い薬なのだろう。
一方で、商人のおっさんはあんまりいい顔をしなかった。新鮮な素材が使えるというのはあまりある利点だったが、魔物の体表や毛皮が傷つきやすくなったのだ。
よってしばらくは、従来の方法と今回の方法と、どちらも半分ずつ実施することになりそうであった。
(ここまできたら、後はそうだな……そろそろ道の舗装や迷宮拡張に乗り出す時がきたかもしれないな)
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■アルバ・セコールジュカ Lv.7→Lv.8
【ジョブクラス】
商人Lv.2
【特殊スキル】
《空中床》
【通常スキル】
「剣術4」「槍術3」「盾術3」「馬術1」
「罠作成2」「直感1」「並列思考1 new」
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