第6話 そのパンが回復薬

 本当に? と、僕はミトンを手にはめて……電気釜の蓋を開けてみる。


 すると、天板の上には……ふっくらと香ばしい匂いがたまらない、綺麗なバターロールが出来上がっていたんだ!!



「出来てる!!」


『ほんとでやんすか!?』


「うん! 全部出すね!!」



 天板にひっかけて、手前に引っ張る棒も使いながら……外のストッカーに全部のパンを出していく。


 すぐにも食べたいが、カウルと一緒に食べたいから我慢した。


 出し終えた頃には、カウルにも元のスライム姿に戻ってもらい……早速、とお皿にバターロールを盛り付けようとしたら。



【回復薬(以下、ポーションパン)完成!!


『バターロール』


 ・基礎的な体力回復


 ・低レベルの傷の回復


 ・睡眠改善




 と言った、効果のあるポーションパンとなりました!


 大変おめでとうございます!!】




 って、ステータスも出てきたけど……あのイケメン神様のアナウンスも出てきた!!?



「ケン兄さん? どないしたでやんすか?」


「…………えーっと」



 カウルにはステータスが見えていないか聞くと、体をプルプルと横に振った。



「鑑定は出来んでやんす」


「そっか。あのね?」



 見たまんまを伝えると……カウルも流石に体を大きく振るわせた。



「か、回復薬!!? そ、そんな高価なものが……この、パンってやつですかい!!?」


「うーん。普通は違うと思うけど……とりあえず、食べてみる?」


「……ほんとにいいんでやんすか?」


「誰かに食べてほしいし。それに……君はもう僕の相棒だと思ってる。感謝の印だよ?」


「! 兄さん!!」



 涙のような形がまんまるお目目から流れたけど、僕は笑顔になっちゃう。


 とりあえず、一個ずつ食べようと手に持つと……やっぱりまだ熱くて、ふたりでアチアチ言いながらゆっくり冷ました。



「「いっただきまーす!!」」



 バターたっぷりで食べようかと思ったけど……まずはそのままで。


 かじると、少しカリッとした表面は絶妙。


 内側はふわっとしていて、ほのかに甘い。


 それにほんの少しの塩気とバターたっぷりの風味が……なんとも言えない美味しさとなった。



「な、なんでやんすか!? 美味いだけでなく……気力とかがUPするでやんす!!?」



 そう。


 味もだけど、本当に回復薬……ポーションとしての効果が出たのか。


 僕もいきなりの重労働で疲れた体力が……あっという間に、寝起きからのスッキリした感じになったんだ!


 あと、一瞬体が光ったんだよね!?



「……これ、か」



 あのイケメン神様が大丈夫って言ってた理由。


 普通の回復薬を……飲み物じゃなくて、食べ物。しかも、パンって……斬新だ!!



(面白い!!)



 これなら……きっと、広めるのは大丈夫かもしれない!!


 そう、安直に考えていると。



「……た、べもの……」



 茂みの奥から、女の子が出て来て……いきなり地面に倒れたんだ!?

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