第4話 パン作りをしよう②

 パン製造用の、大型ミキシングの機材を使い……速度に気をつけながら、作ろうと思っている生地は!



「バターロールにしようっと!」


「……なんでやんすか、それ?」



 スライムだからか、パンについてはほとんど知識のないカウルに言っても無理ないかも。



「えっと……カウルって、ご飯食べる?」


「糧でやんすか? チリとかゴミでやんすね?」


「それは、スライムだから?」


「でやんす。兄さん、人間なのに知らないでやんす?」


「実は……」



 もういっその事、勢いで言っちゃえ!! って……カウルには、僕がこの世界の人間じゃなかったこととかを簡単に話した。


 すると、



「か、神から遣わされた……使徒!?」


「……なのかなあ?」



 たしかに……回復薬をなんとかしてほしいってお願いはされたけど。けど、今はお腹が空いているのでパン作りだ。生地が、捏ね具合も温度もバッチリ出来たら……キッチンにある大きめのボウルに入れて……ここからが、カウルの出番だ!



「あっしは……何を?」


「神様からのアナウンスによれば……僕に必要な器具。うーんっと、こっちで言うと魔導具扱いかな? それに変身出来るはずなんだ。ちょっと待ってて」



 鑑定のスキルで、もう一度カウルのステータスとか備考欄を確認すると……必要な条件とか書いてあった。


 あの神様らしくない、ちょっとだけふざけた内容ではあったけど。



『へーんしん!! ドゥコンディショナー!!』



 カウルに、手のような触手を出してもらいながら……備考欄にあった通りのセリフと振り付けをやってもらった。


 何故必要かはわからないけど、すぐに『ぼふん!』と煙と音が立ち……消えた後には、カウルのスライム姿が無くて、代わりに……僕がよく知っている、大きな冷蔵庫のような金属の箱が出てきた。扉は上と下に、小さな細長い窓付き。


 中を開ければ……天板とストッカーがあるだけ。


 閉じると、パネルもいくつか出現してきた。



「これこれ!! ドウコンとホイロ!!」


『……これ、なんでやんす?』



 変身しても、カウルの意思とかはちゃんとあるようで返事が出来ていた。



「パン作りにはね? カウルの持ってる『発酵』が必要な食べ物なんだよ。見えない発酵菌とかがパンの生地を膨らませて、味だけじゃなく食感もふわふわにしてくれるんだ!」


『ほへー? 兄さん……いや、使徒様には嬉しいもんでやんすね?』


「そんな仰々しく呼ばないでよ。僕は、賢斗けんとって名前があるんだから」


『……ケン兄さん?』


「うん、それでもいいよ?」



 スライムにお兄さん呼びされるのは、少しくすぐったいけど。


 とりあえず、カウルのドウコンに生地のボウルを入れて……設定のタイマーとかを、ステータスを見ながらいじってみた。


 どうやら、カウルのドウコンには湿度と温度の設定だけじゃなく……時間操作って凄いのもついてて、たった数分で一次発酵が完了した生地が出来上がったんだ!!

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