(7/47)っていうか、ギフトって何?

「なるほど、その顔につけているものがメガネですか」

 ジーナが真正面から俺の顔をじっくり見ている。

「アクセサリーではなく、ぼやけて見えないものを見えるようにする道具なのですね」

 なかなかの近距離だ。

「神殿で治療する方が簡単そうで安そうですが……。初めて見ました」

「そうなの?これがないと世界がぼやけてちゃんと見えないんだ。なくてはならないものだよ」

 俺の言葉にジーナが大きく反応した。

「ああ!だからなんですね!」

「どういうこと?」

「『なくてはならないもの』だから、メガネがGGなのですね!」

 得意気なジーナと、きょとんとしている俺。

「なるほど、なるほど」

 何やらわかったのか、腕を組んでうなずきながらジーナが続ける。

「なので、わかりません」

 ……おい!

 わかってないのかよ。

 わかってないのに、そのうなずきは何?

「わからない?」

「はい。わかりません。初めて見たので、どんなギフトがあるのやら」

 自信満々に答えられてもなあ。

「っていうか、ギフトって何?」

「ギフトはギフトですよ?GGを身につけていろいろな経験をすると神様から授かる能力のことですけど。カイさんの町では別の言い方とかでした?」

「って言うか、俺すごく遠くのところから来たからさ。いろいろ念のためね」

 やっぱり異世界とか通じないだろうし、ぼやかす方がいいだろう。

 もう少し詳しく聞ききたいし。

「なるほど、そうなんですね。ギフトとはGGに宿る能力の事を指すのですが」

「能力って?」

「そのGGの役割や機能を発展させた力ってところですかね」

「あー、あー、そう言うことね」

 なるほど。

 要は……GGは一人に一生で一つだけ。そして経験を重ねることでギフトといわれるそのGG道具の延長線上の技能が付加されるってことか。

 なんとなくわかったような。

「ジーナのGGとかギフトを訊いても良いかな?」

「良いですよ。私のGGはこのペンです。ペンに授かったギフトを活かして文字の上手な受付をしています」

 と、シャーロットはさらさらと文字を書いた。

「なるほど確かに上手いなあ」

 今更だけど見たことも無い字を難なく読めるのも不思議だ。

「まあ、ペンがGGなら、大概このギフトを授かるので誰でも上手な字が書けるとは思いますが」

「GGが盗まれたりしたらどうなるんだっけ?」

「当然GGを身につけてないのでギフトは使えません。またGGは持ち主と紐づいているので他の人のを持っていてもギフトは使えません。まあ盗む人はいないと思いますよ。罪を犯しますとIDカードにも犯罪歴が記載されますし、GGも没収されますしね」

「え?そうなの?」

「はい。GGは一生に一つきりなので、犯罪歴のある人はGG無しで生きることになります。GGがないという事は秀でた事が無くなってしまうので、働き口も少ないです。あと特殊技能が全くなくなりますので、例えばGGなしで冒険者をやろうとすると魔物に襲われた時も大変な目にあいます」

 そっか。

 GGってこの世界では必須なんだな。

 ってか、え?え?

 魔物とか言った?

 さらっと魔物とか言った?

「魔物?」

「まあ魔物だけでなく魔人の方が大変かもしれませんが」

「魔人?」

「はい。そうです。カイさんの地方でも魔人って珍しかったのですか?」

「ま、まあね!魔物も魔人も出た事なかったしさ!はは。ははは」

「そうなんですか。そういえばカイさんはどんな目的でデズリーにいらしたのですか?お仕事ですか?それとも観光ですか?といってもここは田舎町なので、正直どちらも大したことはないとは思いますが」

「旅というか、何となく来た感じかな。良さそうな町なのでそのまま住んじゃおうかとも思っていてさ」

 何せこの世界で唯一の知人、シャーロットがいる町だし。

「それでしたらデズリーこの町での収入源も必要ですね。あちらの掲示板にいろいろなお仕事が掲載されてますよ」

 ジーナは指をさして教えてくれた。そして続ける。

「ただですね……カイさんのGGはぼやけたものを見るための道具ですよね。だから道具本来の元々の使用方法から考えると、武器が必要な危険を伴う依頼は向かないと思うのです。私のペンのように」

 なるほど納得。

「だな。了解。危なくないようなものから選ぶよ」

「はい。GGに合ったお仕事をぜひ」

「ありがとう。見てみるよ」

 と、俺はジーナに背を向け掲示板へ向かった。

 掲示板にいっぱいという程ではないけれど、かなりの量が貼られている。

 確かにこれなら仕事は何かありそうだ。

 ふむふむ。

 『ラードーンの頭骸骨を2%採集』

 2%か。たった2%なら楽かも。

 あ、でも、ラードーン?ラードンってなんだ?

 描かれている絵を見る。

 頭が100くらいあるドラゴンみたいな……。

 この中から2つってこと?

 ……いや、無理だろ。

 他は、と。

 『至急!グリフォンの羽を求む!』

 ……うん。俺だってほしいかも。

 『未確認生物ツチノコの油搾りたて2リットル』

 搾りたてって言っても、油2リットル?そんなに採れるの?

 っていうか、ツチノコってここでも未確認生物なのかよ!

 お、この植物採集みたいなのは?

 『ポンタタ採集』

 これいいんじゃない?

 読み進めると『マグマの中に生息するあのポンタタを』って書いてある。なんだそりゃ!

 ここにある依頼って俺にはまだ早いすぎるんじゃないか?

 っていうか……、永遠に無理な気がする。

 とぼとぼ歩き手近なテーブルの椅子に座る。

 ちらりと俺を見るものもいるけど、あまり興味ないようで。

 うーん、この孤独感懐かしいような。

 これが途方に暮れるってやつだな。

 仕方なくテーブルに頬杖をする。

 と。

「ちょっといいかな」

 お?

 見上げると、そこには青い髪を耳まで伸ばした顔立ちの良い少年が立っていた。

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