4、シェルター作りは大変
次に考えないといけないのはシェルターの作る場所だ。
とはいっても、もうどこに作るかは決めてあるけどね。
現状、僕は遭難している。
なら当然助けを求めなければならない。
この世界の技術がどのくらい進んでいるのかわからないけど、飛行機や船が存在するのであれば、僕からも相手側からも発見しやすい場所がいい。
となると、僕が昨日の夜を過ごした山の上にある拓けたところがうってつけだ。
あの場所なら僕から空も海も360度全てを見張れるし、狼煙も見つけてもらいやすいと思う。
「問題があるとすれば、あそこからこの水場まで来るのが大変なところか……」
ただ、こればかりは我慢をするしかないか。
水の場所がわかっているだけでもだいぶ違うしな。
今後、スムーズにここへ来れる様に一定の間隔で木に目印をつけながら山の拓けたところへと登った。
※
喉の渇きで一つ思い出した。
口の中に唾液をためて、鼻呼吸をする事で体の水分の減少を抑えられるらしい。
実際やってみたけど……鼻呼吸での山登りはかなりきつい。
喉の渇きは多少無くなっている感じがあるけど、これだと酸素が足りない。
はあー……なかなかうまくいかないな。
「ふぅー……ついた……」
目的地の拓けたところへ到着。
休みたいけど、太陽はもう真上だから急いでシェルターを作らないと。
僕は持って来たカラフルな実を1個食べてから、赤い板を2枚持って材料を手に入れる為に森の中へと入って行った。
僕が作ろうとしているのは差し掛けシェルターだ。
すごく簡単に言えば、一方向にのみ傾斜がついている形の屋根をそのまま地面に置いた様な感じ。
選んだ理由としては比較的作りやすい為だ。
凝ったものだと、どうしても時間がかかってしまうしな。
「んーと……お、この木なんかはどうだ?」
見た目はヤシの木みたいだけど、幹の太さが大人の腕くらいしかないし、特徴的な鳥の羽のような葉っぱが魚の鱗みたいな丸い形になっているの。
強く揺すっても折れる気配は全くない、十分な強度もある。
高さは僕の身長の2倍ほどかな? となると約4~5mくらいか。
さっそく僕はその木に赤い板の尖端を当て、その板の後ろをもう1枚の板で叩き始めた。
あの沢にあった石だと叩いたらすぐに割れるのは目に見えている。
けど、同じ強度を持つこの板同士なら問題は無し。
根本を一周大き目の切れ込みを入れていき、ある程度細くなったところで力任せにへし折る。
地面に倒して枝打ち、この落とした枝も葉っぱも使うから1カ所に集めておく。
枝打ちした木を4等分する為、根本と同じように一周大き目の切れ込みを4カ所入れて、力任せにへし折るっと……これで4本の木材をゲット。
後は同じ事を他の木でも行い、合計20本の木材を作り、蔓も数m分を巻きとった。
そして、集めた材料を山の拓けところへ3回ほど往復して運び込み……。
「……つっつかれたああああああああああ!!」
僕はその場で大の字に倒れ込んだ。
材料集めだけでかなりの疲労……もうこのまま寝てしまいたい。
「……っ駄目だ駄目だ!」
他にもやらないといけない事がたくさんあるのに寝ている場合じゃない。
とは言っても疲労は隠せないから、休憩しつつ火おこしの道具の準備をしよう。
僕は上体を起こして集めた枝の中から選定を始めた。
木だけで火おこしをするをするやり方は。
・きりもみ式
・ゆみぎり式
・まいぎり式
くらいかな?
けど、きりもみ式は素人がやってもなかなか火がつかないのは有名。
まいぎり式もほぼ専用道具みたいな物を作らないといけない……となれば、ゆみぎり式しか残ってないな。
きりもみ式ほどでもないけど、これもコツがいるみたいなんだけどな……まぁ仕方ないか。
えーと……そうなると、こすり合わせる下の火板に太目なやつを予備含めて3本。
こすり合わせる棒の為に、出来る限り真っ直ぐなやつを予備含めて3本。
弓に出来そうなしなりいいやつを予備含めて3本。
そして、これら選定した枝の皮を赤い板でそぎ落として……日当たりのいい所において乾燥させておくっと。
「これで火おこしの下準備は完了……さて、休憩もここまで……シェルター作りだっ!」
僕は持って来た最後のカラフルな実をかじりながら立ち上がり、集めた木材を手に取った。
まず柱にする木材の下の部分を鉛筆みたいに削って、地面に刺しやすい様にとがらさせる。
更に突き刺しやすい様に地面に少し穴の掘って……その穴に向かって柱を突き刺すっ!
本当は石とかで柱の上を叩いてもっと地面の下まで突き刺すべきなんだろうけど、今はそんな気力がないのでこれでよしとしよう。
2本の柱を立てたら、その柱を繋ぐように上の部分に1本の木材を蔓できつく縛り付ける。
ぱっと見、横長で上の部分が1本しかない鳥居のような感じだな。
そんな鳥居の上の部分に残りの木材を45度くらいに斜めに立て掛けて蔓で縛って固定、それを隙間なく並べていけば……屋根の完成だ。
「……完成したけど……これって、どう見ても雨漏りするな……」
屋根の木と木の間に多少の隙間が見える。
記憶頼りだから何か違うんだろうが……仕方ない、ここは自分なりに工夫しよう。
「……」
工夫と言っても、思いついたのはシェルターの下に敷く為に刈りとった草を木と木の隙間に詰め込んだだけ。
自分の思い付きの無さに呆れる。
って、そんな事を考えている場合じゃない。
「もうすぐ日も暮れるし早く火おこしを……え?」
海の向こうで真っ黒い雲が見える。
あれはどう見ても嵐だ。
「やばい、この島に向かって来て……って、こういう時の為にシェルターを作ったんじゃないか!」
僕は急いで周りにあったものをかき集めてシュルターの中に入れて身を潜めた。
数分後、予想通りこの島は嵐に襲われた。
シェルターの雨漏りの事を心配していたけど、それは完全な杞憂だった。
雨漏りするしないなんて、この嵐では関係が無かった。
何故なら、すごい横殴りの雨でシェルターの中まで吹き込んで来ているからだ。
もはや全身ずぶ濡れ状態。
「……これじゃあシェルターなんてなんの意味もなあああああああああい!!」
今日の苦労は一体なんだったんだろうか。
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