事実は小説より。異世界ライフがリアル

第13話 初めての日曜日

　翌日、朝はゆっくり起（お）き出した。

　大（おお）城（しろ）さんとマーチャさんはまだ起きていない。

　よほど昨日の忙（いそが）しさが大変だったんだろう。

　普（ふ）段（だん）の土曜日は、もっと落ち着いているそうなんだ。けど、昨日は私を見れるかもという魂（こん）胆（たん）で人が押し寄（よ）せたのもあるらしく、ここしばらくなかった繁（はん）盛（じょう）ぶりだったんだとか。

　見ても、ご利（り）益（やく）も何もないぞ。

　さーて。いくらか食（しょく）材（ざい）や調（ちょう）味（み）料（りょう）のしまってある場所を憶（おぼ）えたので、朝ご飯（はん）を作ろう。

　あ、先にご飯（はん）だけ準備するか。

　お米を研（と）いで、均（なら）した米の上に手を乗せる。手のくるぶしの下まで水を張って、このまま放置。

　ああ、味（み）噌（そ）汁（しる）に使う出（だ）汁（し）も取らなきゃ。

　鍋（なべ）に水と昆（こん）布（ぶ）入れて、このままこっちも放置。

　で、何が作れそうかな？じゃが芋と玉ねぎがあるから、じゃが芋と玉ねぎの味（み）噌（そ）汁（しる）は決定で。

　……。しかし、冷（れい）蔵（ぞう）箱（ばこ）、なんで横開きのドアじゃないのかな？

　いちいち蓋（ふた）を開けて横へ置いて、必要なものを取り出したら蓋（ふた）を閉めるの、何気にメンドクサイな。あ、卵もらおう。

　冷（れい）蔵（ぞう）箱（ばこ）の下の棚（たな）は二段のカラーボックスみたいな造りで、ここに冷やす必要のない野（や）菜（さい）が入れられている。

　冷（れい）蔵（ぞう）箱（ばこ）の横は三段のカラーボックスみたいな棚（たな）で、最上段が二段に分けられている。 この二段に分れて浅（あさ）い棚（たな）の上の段に、調（ちょう）味（み）料（りょう）や乾（かん）物（ぶつ）。チーズもここに入っている。

　下の段に、瓶（びん）詰（づ）めの食（しょく）材（ざい）が収（しゅう）納（のう）されている。

　カラーボックスの元の深さのままの二段に、味（み）噌（そ）や燻（くん）製（せい）やソーセージが入っている。

　冷やしたい飲み物や生の魚や肉なんかの要（よう）冷（れい）蔵（ぞう）の食（しょく）材（ざい）だけ、冷（れい）蔵（ぞう）箱（ばこ）に入れて保管。

　地球でも元々保（ほ）存（ぞん）食として作られた、常（じょう）温（おん）で保（ほ）存（ぞん）できる食（しょく）材（ざい）は常（じょう）温（おん）保（ほ）存（ぞん）されているそうだ。

　ソーセージはドライソーセージという種（しゅ）類（るい）らしく、常（じょう）温（おん）で保（ほ）存（ぞん）できるタイプなんだって。そのまま食べれるとも。

　小型冷（れい）蔵（ぞう）庫（こ）付き、食品ストック棚（だな）ってイメージかな？

　ご飯（はん）が炊（た）き上がり、味（み）噌（そ）汁（しる）も完成。後一人前のチーズオムレツができれば、全員のご飯（はん）がそろうタイミングで大（おお）城（しろ）さんが起きて来た。

　マーチャさんは顔を洗っているそうだ。

「おはよう。すっかり寝（ね）坊（ぼう）して、すまん」

「おはようございます。

　昨日はハードでしたから、しかたないですよ。

　大（おお）城（しろ）さんは火の側だから、余（よ）計（けい）に大変だったんじゃないですか？」

　昨日の宿（やど）での様子を思い出し、ハードだったと二人でちょっと遠い目になった。

「優（ユウ）、おはよう。

　ごめんね、朝ご飯（はん）作ってくれたのね。ありがとう」

「勝（かっ）手（て）に色々使ってごめんなさい。

　口に合えばいいんですが……」

「はははっ、食べりゃ分かるさ。

　きっと美（う）味（ま）いって」

「そうね、優（ユウ）の作ったご飯（はん）、食べるのが楽しみ！」

　味見はしてあるけど、日本と色々違（ちが）うからちょっと微（び）妙（みょう）なんだ。ハードル上げないで下さい。

　そんな事を思ってる間にお二人は、ご飯（はん）や味（み）噌（そ）汁（しる）をよそって運んだり、オムレツにケチャップ代わりのトマトソースをかけて運んだり、カトラリーを揃（そろ）えたりを自然として下さる。ありがとうございます。

　最後のオムレツも焼（や）けたので、みんなで頂（いただ）く。

「あー、ご飯（はん）に味（み）噌（そ）汁（しる）が旨（うま）い。出（だ）汁（し）がきいている」

「角切りにしたチーズが入ったオムレツも美（お）味（い）しい。それに、卵が少しふんわりしている？」

「味（み）噌（そ）汁（しる）の出（だ）汁（し）を昆（こん）布（ぶ）で取ってます。

　多目に取ったんで、ちょっと冷ましてから卵と混（ま）ぜて焼（や）いたんで卵がふわっとしたんです。水分入れると、焼（や）き上がりがふわっとするんですよ」

「なるほど。ふわっとさせるにはそんな工（く）夫（ふう）があったんだな」

「しっかり火が通っていても、いつもよりふわっとした卵と、コロコロに切ったチーズも軟（やわ）らかくなっていて。んーっ、幸せ」

「こちらの卵が、どのくらい生っぽくっても大（だい）丈（じょう）夫（ぶ）なのか分からなくて。だから、片面しっかり、片面ほどほど焼（や）いて半分に折（お）ったんですけど、柔（やわ）らかさがあって良かったです」

　卵をふわっと焼（や）くには、水の他にマヨネーズを入れるとか、マシュマロを入れるとか、何か入れるやり方（かた）や、メレンゲ作る時みたいにもの凄（すご）く混（ま）ぜ合わせるとか、空気を混（ま）ぜ込（こ）みながら焼（や）くとか、実は色々ある。

　マヨネーズとかマシュマロは味が変わりそうでした事がないが、卵一個に対して卵の殼（から）半分くらいの水を入れて焼（や）くのが一番簡（かん）単（たん）でよくする。空気を混（ま）ぜ込（こ）みながら焼（や）くタイプなら、炒（い）り卵が分かりやすいかな。

「卵かけご飯（はん）が食べたいが、半（はん）熟（じゅく）でも怖（こわ）いからなぁ……」

「卵かけご飯（はん）？」

「生卵をご飯（はん）に割（わ）りかけて、混（ま）ぜて食べるんです」

「何それ、怖（こわ）いわ」

　デスヨネー。この世界でも生卵を食べる文化はないのか。そもそも日本みたいに、卵や魚を生で食べる文化がないのかも。

「生で食べれるかの不安もあるが、卵やら魚やらを生で食べる食文化は、こっちの世界にもないからな。

　燻（いぶ）すなり塩（しお）漬（づ）けにするなり、何かしら加工するか焼（や）く方（ほう）が食（しょく）中（あた）りや食（しょく）中（ちゅう）毒（どく）になる可（か）能（のう）性（せい）が減（へ）る。そうすりゃ、安全に食べられる確（かく）率（りつ）が上がるからな」

「みんなが安心、安全に食べられる事が第一なら、生食は弾（はじ）かれる運（うん）命（めい）なんですね」

「生食って何回も出てくるけど、生食の文化があるの？」

「ありますよー」

「生魚の料理、刺（さし）身（み）も寿（す）司（し）も上（う）手（ま）い！」

　マーチャさんは信じられないといった、青い顔色になった。生食の語（かた）らいは封（ふう）印（いん）しよう。

「そういや、昨日は気になるところはあったか？」

「あ、そうね。実家の宿（やど）はあんな調（ちょう）子（し）だったし、夕（ゆう）飯（はん）の時も帰ってきてからも話すどころじゃなかったものね」

「私もお礼（れい）がまだでした！お礼（れい）が遅（おそ）くなってすみません。

　大（おお）城（しろ）さん、魔（ま）道（どう）具（ぐ）ギルドの方（かた）へ話を通して下さっていて、ありがとうごさいました。

　頭まで下げて下さったって聞きました。本当にありがとうございます」

「勝（かっ）手（て）にしてるこった、気にするな」

「それでも、ありがとうございます」

　大（おお）城（しろ）さんを照（て）れさせないうちに、昨日の事を話し始める。

　どんな魔（ま）道（どう）具（ぐ）があるのか魔（ま）道（どう）具（ぐ）ギルドへ行ったら、なぜかギルマス室へ通され、ギルマスさんと専（せん）属（ぞく）担（たん）当（とう）さんと顔を合わせた事。

　もうついでだとクッキングヒーターみたいなコンロ、洗（せん）濯（たく）機（き）、キャンピングカー、キャンピングカーに搭（とう）載（さい）するにも日常のためにも横開きドアの冷（れい）蔵（ぞう）庫（こ）を。

　屋根にタンクを作って湯の出るシャワーを付けたい事など、色々プレゼンした事。

　移動できなくて良いなら、コンテナハウスが向（む）いているかもって、他にも色々派（は）生（せい）した話しに広がった事などなど。

「いきなりキャンピングカーか！また凄（すご）いモンからいったな。

　冷（れい）蔵（ぞう）庫（こ）は使い勝（がっ）手（て）は今一でも、そんなに冷（れい）蔵（ぞう）、冷（れい）凍（とう）しなきゃならない物もない。俺が来た時にはもうあった、今の冷（れい）蔵（ぞう）箱（ばこ）で良いかと気にしてなかったな。

　洗（せん）濯（たく）機（き）は洗いに出せるしって、もっと気にしてなかったな」

「酷（ひど）い！洗（せん）濯（たく）は重労働なのよ！」

「すまんすまん！家が暑いのも寒いのも一番辟（へき）易（えき）するから、そっちを重視して色々やっていたからな。

　次が馬車が快（かい）適（てき）になるように、揺（ゆ）れを押さえる装（そう）置（ち）の再（さい）現（げん）だな。

　って、優（ゆう）ちゃん、サスペンションの構（こう）造（ぞう）知っているのか？！」

　あははー、車部分のあれこれは頭になかったです。

　午後は買い出しに行ったりお昼寝したり、もうちょっとで完成まで縫（ぬ）えているボトムスを仕（し）上（あ）げたり。一日ゆっくり過ごした。