第11話

 *************


「ナナね、キタニ君のこと好き----。ふふふっ」

「誰情報なの?あんまりいい加減-------方がいいと思うよ、マユミちゃん」


 えっ・・・・なんでっ?!

 なんでマユミがそんなこと知ってるのっ?!

 私、ユメミにしか話してないのに。ユメミ、絶対誰にも言わないって、言ったのに。


「いい加減なんかじゃないよ~!実はあたし、ユメミ-----ちゃったんだよね。だから確実。だって、情報源、ユメミだもん」

「確かに、ユメミちゃんはナナちゃんと仲いいからね。でも」

「あたしだって、ユメミともナナとも仲いいよ?でもまぁ、これは----ちゃったものだけど」

「マユミちゃん・・・・それは」

「でも、キタニ君はユメミが好きなんだもんねー。可哀想、ナナ。ユメミだって---------」

「マユミちゃん、オレはね」


 ひどい・・・・ひどいよ、ユメミ。

 絶対誰にも言わないでって、言ったのに。

 それに、キタニ君がユメミの事好きって知ってて、マユミに言うなんてっ!


 *************


 記憶を見終えたユリもイラも、揃って首を傾げた。


「これって・・・・?」

「でも、これは『ナナ』自身の記憶、なのよね・・・・う~ん・・・・」

「これも、見て」


 続けて、タムが2つ目のボールをマシンの中へと投入する。



 *************


 違うかもしれない。

 ユメミがそんなことする訳ない。

 ちょっと遠くて、聞き取れなかった言葉もあったし。

 だから、違うのかもしれない。

 聞かなくちゃ。

 ユメミに今日、ちゃんと聞かなくちゃ。


「ねぇ、ユメミ!今日どうしても付き合って欲しいんだけど。帰り、時間ある?」

「あっ、マユミ。うん、いいよ。じゃあ、ナナも」

「ナナはダメ」

「えっ?」

「----の事で、ちょっと話したいから」

「え?・・・・あっ、ナナっ?!」

「ユメミなんて、大っ嫌い」

「えっ・・・・待って、待ってナナっ!」


 やっぱり・・・・やっぱり繋がってたんだ、ユメミとマユミは。

 2人して、私の事笑ってたんだ。

 失恋して可哀想って。

 ひどいよ・・・・ひどい。

 信じてたのに、私。

 ユメミの事、信じてたのにっ!!


 もう、ヤダ・・・・もう誰も信じられない。

 ユメミなんて嫌い。

 大嫌い。


 *************


「おかしい」


 見終えたイラが、そう呟いた。


「そうね、ユメミはこんな子じゃないわ」


 ユリも、もう何も映っていないモニターをじっと見つめながら、そう呟く。


「で、これが3つめ」


 タムが最後の黒いボールをマシンの中へと投入する。


 *************


 私のせい、だよね。

 先生は私のせいじゃないって言ってたけど、でも絶対に、私のせいだよね。

 どうしよう、ユメミがこのまま目を覚まさなかったら。


 大っ嫌いって。

 ユメミに大っ嫌いって、言っちゃった。

 そのあとだって、メッセージもスルーしてたし、普通に無視もしてたし。

 サイテーだ、私。

 なのに、階段から転げ落ちながら、ユメミ、私のこと庇ってくれてた。


 なんで?

 大っ嫌いって、言ったのに、私。

 マユミと一緒になって私のこと笑ってたんじゃなかったの?!

 もし、違うなら。

 そうじゃないなら。

 酷いのは、私だ。


 ごめん。

 ごめんね、ユメミ。

 このままユメミが目を覚ましてくれないなら、私・・・・

 私ももう・・・・このまま居なくなってしまいたい・・・・


 *************


「本当のところ、何が起こったのかは分からないけど、ユメミがキーマンなことだけは確かよね」


 腕組みをしながら、タムは映像の消えたマシンを睨む。


「そうね。でも、これが『ナナ』の記憶であり今の『ナナ』の想いなのであれば、書き換えることはさすがのワタシにもできないわ。かといって、このままじゃこの記憶は黒く染まったままになってしまう。どうすればいいのかしら・・・・」


 ユリが大きなため息を吐き、タムが肩を落としていると、イラはカートを持ち、辺りに散らばるグレーに染まった記憶のボールを拾い集めながら言った。


「周りを黒く変色させる原因の記憶は突き止めた。あとボク達ができるのは、この原因の記憶を他の記憶から隔離して、染まってしまった他のできる限りの記憶の色を元に戻す事だけだよ」

「確かに」


 イラの言葉に、タムもスクッと立ち上がり、マシンから吐き出された真っ黒なボールを、他のボールから遠く離れた場所へと運ぶ。


「あたし達は、今あたし達にできる仕事をするしかないわよね」

「そうね・・・・よしっ、頑張りましょ!」


 ひとつ大きく頷くと。

 ユリは手近にあるグレーのボールをマシンの中へと投入した。

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