第43話 日本を含むG7各国の政府が情報統制をする共通の目的が見えてくる(1)

首相官邸 健康・医療戦略推進本部の「グローバルヘルスのためのインパクト投資イニシアティブ」の立ち上げについてというサイトの説明を要約すると:

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2023年9月21日、ニューヨークのジャパン・ソサエティにて、国連総会ハイレベル会合の機会に、「より強靭で公平、かつ持続可能なUHC*の2030年での達成に向けて-MCM**への公平なアクセスとグローバルヘルスにおけるインパクト投資イニシアティブ(Triple I)-」をテーマとしたイベントが開催された。


本イベントは、日本が議長国を務めたG7広島サミットのフォローアップとして、日本政府が共催した。


本イベントには、岸田総理をはじめ、各国閣僚、ビル・ゲイツ・ビル&メリンダ・ゲイツ財団会長、渋澤健・シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役のほか国際機関関係者、投資家等の関係者が出席した。


イベントの冒頭、岸田総理は、開会挨拶において、G7広島サミットにおける保健分野の成果について紹介するとともに、グローバルヘルスのためのインパクト投資イニシアティブ(Impact Investment Initiative for Global Health、トリプルI) の立ち上げを宣言した。


また、テドロス世界保健機関事務局長より、トリプル・Iは民間資金の動員により世界の保健課題の解決に重要な役割を果たす取り組みであるとして、期待の言葉をいただいた。


日本がこれまでのG7で主導してきた「グローバルヘルス」分野において、インパクト投資促進のための環境醸成に向けた取組を議長国として打ち出したこの枠組みは、グローバルサウスを含む低中所得国の社会課題解決の一助となるもの。


本イベントの第二部においては、テーマ1として感染症危機対応医薬品等への公正なアクセスに関する議論が行われた。


冒頭、武見厚生労働大臣から日本がG7議長国としてグローバルヘルス課題に取り組む強い決意が示され、各国政府よりCOVID-19に対する取り組み等の紹介があった。


テーマ2は、グローバルヘルスのためのトリプル・Iの立ち上げを発表する機会として、議論が行われた。トリプル・Iの共同議長として、新しい資本主義実現会議構成員でもある渋澤氏の他、ナイジェリアの保健政策に貢献をして来られたアヨーデ・アラキジャ氏及び、保健分野におけるビジネス経験が豊富で、市民社会での活動実績のあるスティーブ・デービス氏の3名が紹介された。


さらに、当枠組みの助言・支持パートナーとして8機関、参加パートナーとして37の企業が趣旨に賛同し、参加を表明したことが発表された(資料(PDF/248KB)PDFを別ウィンドウで開く)。


さらに、当枠組みを効果的に進めるため、今後も更に多くのパートナー企業の参加を募っていく方針が示された。


また、登壇者であるウィル・クインス英国保健福祉大臣、トビアス・リンドナードイツ外務大臣他、投資家、事業者、開発金融機関等より、当枠組みへの期待が表明された。


日本の大手製薬企業であるエーザイ株式会社からは、事業のもたらすインパクトの数値化を行ったという先進的な取り組みが示された。


(注)

*UHC:ユニバーサルヘルスカバレッジの略。すべての人が、効果的で良質な保健医療サービスを負担可能な費用で受けられること。

**MCM:メディカルカウンターメジャーズの略。感染症危機対応医薬品等。

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岸田首相、武見厚労大臣と共に、テドロスWHO事務局長、WHOに強い影響力を持つビル・ゲイツ氏がこのイベントに出席していることが、日本政府とテドロス、ビル・ゲイツとの深い関係を示唆している。


時間を遡って、日本が議長国を務めたG7広島サミット(2023年5月19〜21日)に先立ち、長崎において開催されたG7保健大臣会議で採択された宣言を抜粋して紹介する:


1. 我々G7保健大臣は、2023年5月13・14日に日本の長崎において、コロナパンデ ミックの急性期から世界が過渡期に移行したとみられる時期にはじめて、G7 としての会合を開催した。


我々は、パンデミックの教訓を活かし、国際保健を改善するために、グローバルヘルス・アーキテクチャー(GHA)を強化し、ユニバー サル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成を再確認し、ヘルス・イノベーションを活用するという共通の責任を負っており、国際社会と連携してこれらの取組を支援するという決意を表明する。


3. 新型コロナパンデミックを契機に、感染症対策における取組は加速化し、ワクチン、診断薬、治療薬を含む感染症危機対応医薬品等(MCM)の研究開発は迅速に行われた。


そのような MCM により多くの命が救われる一 方で、世界は、MCM の研究開発から製造、調達を含むアクセス&デリバリーのプロセスにおいて、多くの課題に直面するとともに、プライマリ・ヘルス・ケア (PHC)を含む医療システム、健康、経済への大きな二次被害 にも直面した。


コロナパンデミックから学んだ教訓に基づ き、パンデミックの予防・備え・対応(PPR)のために、安全で有効な MCMの研究開発から入手までのサイクルを加速し、VTDの製造、デリバリーにかかる時間を短縮できるよう、公平性、効率性、質、説明責任、機動性のあるMCMエコシステムを構築することが必要。


4. 我々G7は、(中略)このビジョンを達成するために、G7でもWHO加盟国間でも臨床試験における連携を進め、さらに世界保健総会の決議の採択を通じて、臨床試験を強 化し、より日常的に質の高いエビデンスを生み出すための取組が進んでいる。


5. コロナパンデミックから脱却しつつある国々の多くは、保健システムの脆弱化、 医療従事者の疲弊、定期予防接種を含めた重要な医療サービスの中断といった課題によって、継続的な健康危機を経験している。


コロナパンデミックから完全に回復し、(中略)次の危機に備えるためには、UHC に改めて取り組む必要がある。


7. 我々は、(中略)多機関研究ネットワーク、データの近代化の取組は全ての関係機関が情報、データを迅速に共有するために不可欠であり、WHO CA+(いわゆるパンデミック条約)や国際保健規則の改正といった交渉の重要性を鑑み、疾病の蔓延を効果的に最小化し、将来のパンデミックを予防し、経済的な損失を減らすために、早期発見と迅速な封じ込めのための国内、各国間のネットワークを支持・強化する。


8. 我々は、世界保健機関(WHO)が GHA において中心的なリーダーシップと調整役を担うことを全面的に支持することを約束する。(中略)我々は、2022-2023年のWHO の基本予算の50%に相当する額まで分担金の割合を増やすよう努力するという画期的決定も歓迎する。


10. コロナパンデミックによる損失を取り戻し、UHC と PPR 強化を達成するという全体目標のもと、特に 2023 年に予定されている UHC、パンデミック PPR、結核、そして 2024 年と 2025 年の薬剤耐性(AMR)と非感染性疾患(NCDs)に関する国連総会ハイレベル会合を鑑みて、関連する機関間の調整と相乗効果を確保することは不可欠である。


11. 我々は、パンデミック対策における2019 年の日本議長国下で創設された G20 財務・保健合同トラックに関して、(中略)複数年の計画期間、パンデミックによる経済的リスクと脆弱性についての分析、大規模なパンデミック対応への備えの強化をはじめとした取組を支持し、(中略)国際通貨基金(IMF)、世界銀行、WHO 及び他の関係国際機関との協力を継続することを支持する。


14. 我々は、(中略)将来のパンデミックに対する予防と備えのために、世界銀行にパンデミック基金が設立さ れたことを歓迎する。(中略)


さらに我々は、パンデミック基金の運用が成功を収めるよう、G7を含むすべての国及び他のドナーに対して、財政的、政治的、技術的支援の強化を約束するよう求める。


16. 我々はパンデミック「対応(Response)」のための資金調達を強化する必要性を強調した。この目的のため、パンデミック発生時に必要な資金を迅速かつ効率的に供給できる「サージ」ファイナンスの枠組みを G20 財務・保健合同タスクフォースや国際的なパートナーとの緊密な協力の下、検討することにコミットする。


17. 我々は、国際的な規範・規則の強化は、パンデミック PPR にとって不可欠であり、健康危機への負の影響を最小限に抑えるために重要な役割を果たすことを再確認する。


我々は、2024 年までに WHO CA+の交渉を終了させるべく、(中略)国際保健規則の更新と強化を目的とした改正案に関する補完的な作業に貢献する決意を表明する。


18. 我々は、(略)強固な公衆衛生対策を促進するために、人や動物から発見された病原体や遺伝子配列データを共有することの重要性を強調する。


この仕組みにおいて、予防は重要な柱でなくてはならず、パンデミックの脅威を早期に検知し、(略)パンデミックを防ぐための取組(略)に加えて、遺伝子配列デー タを含む公衆衛生に係る情報及びデータの迅速な共有を強化することは、リスクを伝え、エビデンスに基づくアプローチを発展させるために重要である。


20.(略)我々は、ワンヘルス・ハイレベル専門家パネルと 4機関(WHO、国連食糧農業機関(FAO)、国連環境計画(UNEP)、国際獣疫事務局(WOAH)で構成される)が提供した専門知識と勧告を考慮しつつ、病原体配列データの生成と共有のための相互運用可能なグローバルな能力の開発、 WHO の国際病原性監視ネットワーク(IPSN)などのイニシアティブの推進が強く 求められる。


(略)また、我々は、世界的なサーベイランス、各国のパンデミック対策と対応能力等において、世界各国におけるポリオ撲滅に関わる貢献を認識し、2026 年までのポリオ撲滅に向け、世界ポリオ撲滅イニシアティブ(GPEI)への継続的な支援を呼びかける。


21. 我々は、(略)WHO のパンデミック及びエピデミックのインテリジェンスの ためのハブを支持する。我々は、安全かつ確実な方法による迅速なデータ共有の プラットフォームとして、また、新興及び流行中の疾病を予防・管理するための リソースとして、これらのハブの確固たるネットワークを通じて、各地域及び世 界のハブを最大限に活用することにコミットする。


22. 我々は(略)、COVID-19 の世界的 拡大の原因となった国を含むすべての国による科学的で、透明性を持ち責任ある対応を求める WHO の立場を十分に支持する。<この発言には、G7が中国を責める政治的な意図が見える>


26. コロナによるパンデミックは、世界中の保健システムに深刻な影響を及ぼし(略)、数多くの保健課題への対応が後退することとなった。


これらの保健課題としては、予防接種アジェンダ 2030 の支援を含む定期予防接種、HIV/AIDS、結核、マラリア、ポリオ、麻疹、コレラ、肝炎、薬剤耐性(AMR)、メンタルヘルスを含む非感染性疾患(NCDs)、母子・新生児・思春期の健康、健康的な高齢化、栄養、水・衛生(WASH)、気候変動や大気汚染といった環境による健康へのリスク等が挙げられる。


また、コロナ後遺症 (long-COVID)の状態や、ポスト・コロナに関連した医療への理解を深める必要性を認識している。


患者へ の影響がまだ十分に理解されていないため、コロナ後遺症の研究や管理、メンタルヘルスを含む適切なケアの開発と提供の重要性を指摘する。


そのために我々は(略)、2025 年末までにパンデ ミック前のレベルよりも良い状態を達成することを目指して、PHC への投資・支 援、必須保健サービスの開発・回復によって、各国が UHC を達成できるよう支援することを約束する。


我々は、このことをUHC の達成と維持(略)を目的と した、持続可能な開発目標(SDGs)のうち、特に健康とウェルビーイングに関す る目標3の達成への進捗を加速させるためのステップであると考える。


<現在、G7各国政府が推進している医療対策が、事実と解離した当G7宣言に従っていると言える> ー第44話に続くー

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