本日の三題噺 2/2 『ゲーム』、『受験』、『雪』
自慢の息子
病院の談話室で白髪交じりの女性がスマホをいじっていた。
その女性、麻衣がスマホをタップすると受験日は雪と表示された。
自分が受験するわけでもないのに麻衣は落ち込んだ。
受験日に雪が降るとなると、それなりに準備が必要になる。電車の遅延がどのように影響するかも分からない。
と言っても受験するのはゲームの中のキャラクターだ。
『息子育成ゲーム・めざせ高学歴』という身も蓋もないゲームの中で息子を育成し、一流大学に入学させるゲームだ。
赤ちゃんの頃から知育ゲームや習い事をさせ一流大学を目指すというゲームだ。
小中高と学校での人間関係にも気を配らなくてはいけない。
今回の息子は――麻衣はもう何人目の息子だか覚えていないが――出来のいい息子だ。今までの失敗作とは違う。
お受験に成功し習い事もそつなくこなし、成績優秀、クラスでも中心的な役割を果たす、心技体揃ったパラメータ完璧な息子だ。
五十代半ばになってゲームを繰り返しているのは「暇だから」だと麻衣は思っていた。
夫に入院を勧められても自分は大丈夫だと言って断っていたが、年老いた両親に泣いて頼まれたので入院に同意した。
医師に問題なしと診断されれば、それでみんな安心するだろうと麻衣は考えていた。
スマホを見つめ一喜一憂している麻衣を、少し離れた位置から見ている青年がいた。
「お母さん、僕はお母さんの望んだ学歴を、手に入れることはできませんでした。でも、僕がお母さんの息子です」
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