本日の三題噺 1/27 『コオロギ』、『犬』、『イカ』

 ある秋の日

 庭で盛大に鳴いていたコオロギが、急に静かになった。

 リビングで僕と遊んでいた愛犬タロが、カーテンに向かって急に吠えだす。

 妻がスマホを置いてタロを抱き上げるが、タロは抱き上げられたままカーテンに向かって吠えている。

 護身用のゴルフクラブを持ってカーテンを開けると、庭にイカ型宇宙人の加藤さんがいた。

「もう加藤さんでしたか。何度も言うように、庭ではなく玄関から来てください。玄関の呼び鈴を押してくださいって最初に言ったじゃないですか」

 加藤さんは空飛ぶ円盤うえに住んでいる。

「あー、すいません。今日視察に行ったので、お土産を買ってきました」

 持っていたレジ袋を持ち上げる。

「店員さんが美味しいって言っていたので、一緒に食べましょう」

 僕が話しているので安心したのか、タロは吠えるのをやめていた。

 妻はタロを抱いているので、僕がお茶を入れた。

 加藤さんのお土産はイカ飯だった。

 思わず加藤さんとイカ飯を見比べてしまった。

 疑問はあったが、イカ飯は美味しかった。

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