闇神性児第2部
水瓶
第1話 ギナ王の刃
樹と大地と水と光…それがあれば救われる。
シートに深く沈むと列車の音に揺られギナは思索した。私は何のために歌い始めたのだろう…中吊り広告の有名人の自殺記事を見上げて考えた。一般人は名もなく死に有名人は取り沙汰される。年輪を重ねた者に与える勲章、世の中の情報は偽善欺瞞に溢れ上っ面の正義で色付けされる。溢れ出る怒りが込み上げ視線をずらすと前の乗客が、気になる。
ギナの足元に這う様な嫌悪感!見られている。股の隙間を嫌らしい眼が、私はいつも性の対象にされる。
私は何のために生き、何を残すのだろう。穢れなき物を除外したら核が残るのか。それは愛なのか!世界を守るのは絆なのか!
私の中のテロリズムが芽生える!違う!歌の中で闘う私は弱い存在だ。
ギナは立ち上がると前の男に詰め寄る。
あんた!あたしになにか用!
チャック開いてるよ小野さん!名札を見て注意してあげた。小野がにやつく。
そんな短いスカートを履いてはいけない。男性を刺激するでしょう!
紳士的な忠告を無視するとギナはホームに降り立つ。突風が太腿を掠りつけてきた小野が驚き眼を見開く。下着を付けるのを嫌うギナには絶えず男達の視線が絡みつく。
そう言えばこの駅登り長かったな!?
…マンションが建つ度に窓からの風景も変わる。変わらないのは頭上の空だけ。空は誰もが平等に仰げるものだと思っている平和な国の民、戦地で見る空は爆撃機が飛ぶ恐怖でしかない。世界中に繋がっている空も見る人により違う。人に階級がある様に世界にも階級がある。山と畑しか見なかった子供は階級戦争に巻き込まれ傷つく。いやな時代!
ギナはコンビニの駐車場で空を見上げた。この一瞬の心の安らぎ、遺跡を巡り追憶を馳せて古代人に近づこうとする。脚に土の感触を刻み疲れが神経を研ぐ。
私は人並みになりたかったから歌った。人間に産まれ五感を手に入れ、憎んだり愛したり許したりする。寿命のある生き物に憧れていたの。石や土なら踏まれ蹴られたり、自分で転がる事も出来ない。人間だから生命をどう使うか自分で選べるのだから!?
軽く陶酔を砕く様に尻に風があたる、
あのお姉さんパイパンだ!何処からか囁きが届く。そんなに私(女)の尻に興味があるのか!男って生き物はある意味扱いやすいわ。
いつか私が生きてきた時代も過去になる。記憶でしか残せない。
言葉に心の原風景刻むのは愛着が強いからかな、両親の顔も姿も自分が拵えている幻想かも知れない。でも残酷な記憶は確かなものだろう、痛みがあるから。
忌み嫌う根源は言葉にすると心地良い。それは嘘でない叫びだから!?
風に乗りかび臭い制服の匂いがする。まだ小野が着いてくる。都会にオノは危険だ。薪割りのキャンプ場に追いやろう。
激しい息遣いが聴こえる。危ない!あの四ツ角で巻こう。小野は股間を掻きまだ後をつけてくる。なんなんだ!あの眼鏡の警備員は!
あんな奴が警備してるビルは問題が跡を絶たないだろう。厳しく接する者ほど屈折した精神だ。案の定、振り返り睨むと辺りの人気を確認し小野は露出すると大根を洗う如く手淫を始めた。変態野郎だったのだ。
眼と眼があい勘違いしたのか、走り寄る小野の股間にギナは手をあてる。親指に彼女は武器をはめる。陰嚢を掴み睾丸を破壊する。彼女の爪に蝶の羽をした毒針のピック。
滅多に使わないが気に入らない相手の身体の一部を腐らせる作用がある。なにか刺したか!小野が痛みに気付いたときギナは居なかった!?
イルミネーションの明かりが輝きました広場に集う若者達の歓声がどよめく。
パレットの色を塗り分ける様な青春、若者は幾つもの恋を塗り分ける。付き合う男性毎に洋服やバッグ果ては話し方さえも変えていた。プロの娼婦だった。コンクリートの公園に座り込んだギナは手鏡の中からピエロが飛び出す時に寂しい心が産んだ幻に酔っていた。
そろそろ出掛けなければ、約束があった。
歩き続けると団地の中に迷い込む。いつもの通り目をあげると物干し台に縮んだシャッツが揺れる。減っていく洗濯物や増えて行く数で誰かの恋の終焉や始まりが推測出来る。
ギナの瞳が涙で潤む頃国を出て歌う場所を探した記憶が浮かぶ。
ビルが一つ建つたびに思い出の風景も消えていく。砂利道で立ち止まると靴を脱ぎ中の小石を払う。なぜこんな所で時間を取られるのが腹が立つ、
二部序章!
或日庭に大きな鳥が降りてきた。それまでは小鳥の類だったが、異常気象のせいか、生態系が崩れその鳥の大きさは人間くらいだった、そして二足歩行してなんと人語を話した。
この世はあと数週間で終わる。お前は生き残りたいかこのまま死ぬか選べと言われた。
始めて遭遇した外来種の言葉を信じられるか!でもそいつの眼を見て確信した。世界は終わる。なら次の世界に残ろうと!そして残った、人類として同じ伝達を聞いた者もいた。彼等も選ばれた。同じ様に、海の底、森の闇の有機体も天命によりこの地に残った。人間の生命は何の為に使う物なのか次に何を為すべきか!その答えは種属統一!それは今は分からない。人々が覚醒後どうなるのか!
…ジンタ
あいつと巡った季節はもう来ない。涙が溢れる。寄り添った景色を憶ひ出し急に消えた原因を推測してみた。姉が失踪した時は強姦魔痴童を胎蔵と裁く事で解消できた。だが同郷のケンジの思慕に人間としての感情が芽生えるのを感じる。
君のくれた靴下がまた一足破れた。こうして繋がりが消えていく。つぎは箸かな!?生活臭のある物が一つずつ無くなっていく。
ジンタは調理師のケンジを恨んだ。君が毎日出してくれたケンジ汁はもう飲めないんだね。墓場で野犬を捕獲しては楽器にできるパーツを探したね。大腿骨の骨笛は良い音がしたね。頭蓋骨のパーカッションは皮を鞣して張ったね。もう一緒に楽器を創作できないんだね。2年付き合っていた愛情は計算されていたのかな!性被爆民は廃炉ハウスに住み一般居住区に憧れを持つ。誰も他人のことは分からない?心の奥は隠すからね。打算で生きていたとは思いたくなかった。君が何か有利になる条件で恋愛をしていたなんて。
ジンタは融合精神に悩んだ。絆が切れた時僕は胎蔵の音楽に救いを求めた。これは一瞬を重ね合わせたあいつとは違う永遠のパートナーに近い。残虐童子とは魂の片割れかもしれない。胎蔵とは悪意が共通する素晴らしい仲間だ。
…朽ち果てそうなアパートの扉を開けて、路地に出るとブロック塀に張り付いた薄黄緑色の蝶を見かける。赤い斑点を見つけ新種かもと図鑑で調べる為脳に記憶する。早朝の一番列車でジンタの工房に向う交差点ではいつも見かける萬色婆が鳩に餌を与えている。胎蔵はわざと餌を踏みつけると細い吊目で婆を睨む。駅前では桃色のかつらをつけ女物のランジェリーを身に纏った少年が駅員と揉み合っている。買ってあげた下着を返せと駅員が少年を転がしている。
郊外の緑の多い坂道の途中、古めかしい建造物の敷地は狭い、奥の細道を薔薇のアーチを潜りチャイムを押す。人骨の扉を押し入る楽器制作工房では彼の好きな香りが充満していた。モヒカンのとぐろを巻いた蛇髪をポマードで固め、三編みのもみあげを指で振りながら胎蔵は朝食を摂るジンタの後姿を眺めた。浅黒い顔に真っ白い歯が印象的なこの美少年が残虐度では俺と同じ尚且天才的な楽器製造人。
頼もしい味方だとジンタを信頼していた。
ジンタは色々な人体楽器を考案すると胎蔵に装着させ音色を確認した。
勃起力を利用したペニスフィドルは倍音の延びが今一つであった。
胎蔵は自身をミュージシャンと呼ばず、ただの歌唄いと語った。
梶兄妹から紹介された女がもうじき楽器を注文しに来るんだが、君と同じ香りがする。逢っていくかい!
闇サイト、愛の園ネメシスを運営している女だよ。
特殊な体液を持っている、不幸な女で萬苔教とも関りがある。モエルが午后連れてくる。
胎蔵はジンタの呟いた言葉の響きギナと言う女に興味を抱いていた!?
王刃ギナ……
売れたいなんて思わない!世の中に毒素を撒き散らすために歌を選んだ!
逆に歌を聴けるCHANCEを得た奴はついている。
特定のマニアだけが堪能出来る闇ライブ!クチコミで集まる人間が更にファンを呼ぶ。法も秩序も関係ない存分に楽しんで欲しい。
でも一つ忠告しておく!
破滅の音楽を聴くには覚悟と言う条件がいる。
…ギナ語録
始めて教会で身体の変化に気づいたのは8歳の時であった。なにか赤い液体が下着を汚した。トイレで確認すると、神父様が心配になり声をかけて下さった。その日は賛美歌を歌いながら帰路に就いた。
家で感じた恍惚のその瞬間はテレビや映画やまして現実を離れたすべての時間を超えていた。彼女はその日から教室や電車のなか、通学途中に無意識に下腹部を弄り続け粒から豆に変化させた。ギナはその興奮を喘ぎからメロディックなる歌唱により昇華する術を聖歌隊の合唱で覚えた。ボーカリスト、ギナ誕生の瞬間であった。
ギナはたまに男を破壊したくなる。相手の象徴を使い物にならなくさせる衝動に襲われる。
彼女とセックスすると男性は腟内の酸性の影響で局部が爛れて溶けてしまう。その覚悟も無く軟派する男ほど快楽後の破滅の末路を送る運命を共有するのだ。彼女にとって男とは突起物と睾丸で思考する退化した生物だ!が信条であった。
…表に出るにはチャンスがいる。才能はあってもなくても良い。だが闇裏でデビューする人間には表とは違う犯罪の臭い!悪が必要だ。ギナは肛門緩んだ有名ミュージシャン、が集う会場の前でPerformanceする。通路でそいつらの歌をパロってジャックする。
スキャンダルをチラシに刷り配布する。
タービー鬼怒川は音楽プロデューサーである。ギナはアイドルのライブに乱入すると、
週刊誌に通報し90を越えた性豪ホモデューサーの弟子を血祭りにあげていく。それがギナの生理中の生き甲斐でもあった。
局部と眼球が串刺のペットの死骸が発見されればそれは間違い無くギナの仕業だ!
ギナも子供時代虐められたら剃刀で額に十字に傷を付け子供とその親に復讐した。第二弾と称して子供の爪を剥がし塩を塗り込め親には硫酸をかけて闇討ちした。まさか小学生が残虐行為の主犯とは誰にも疑われ成人を迎えると益々エスカレートして、愛の園ネメシスを自らたちあげた。その中のメンバーな唯一、梶ヒダネ、モエル兄妹がいた。
…4キロ毎に国が設けたSEX BOXに欲求不満の男女が出入りする。
何という性に寛大な国だろう。それ故に性犯罪は限り無く少い。そんな街の片隅、月明かりが照らす公園の身障者トイレで彼女は目醒た。精液がこびりつく腹部はかさかさしていた。ネメシスのサイトに来た廃人依頼書で受けた今回の仕事!60代の年商3億の●○界の人間だ、長者番付でお笑い芸人にも劣る、やはり政治家の廃人依頼が欲しいが来ない、
…眠り呆けている男の陰嚢から睾丸を抜き取ると便所に流す。これで何人目だ難民臓器密売屋の顔を踏付けると彼女は服を着て外に出て行った。
今月の仕事は電脳オペレーターだ!退屈だ!
あたしを満足させる快楽は無いのか!あたしより残虐で華麗な音楽は……!
梶兄妹に貰ったスコアをギナは確認した。
変な音譜だ!ミファ、シドの間に♯がついてる。
残虐童子!どうせ、ただのイカれた反国者だろう!暇潰しにそいつらの睾丸抜き(タマヌキ)にでもするか!
……忘れてはいけない事がある。忘れて良い事がある。あたしは外科医だ!でもこの國は医療国家ではない。何をしても許される自由な暗黒の楽園だ。心の奥でなにか叫びたい!深海から上った海鼠難民やカオスジャンキーが闊歩するこの地で純粋国民としてあたしは、選民のみの楽園を築く為同志を求めているのかも知れない。
何を届けたいのだろう!あたしは歌で何を伝えたいのだろう!
それが分かるまで答えが何か分かるまで、きっと歌い続けるのだろう!?
……楽器屋で譜面を最初一日1曲暗記していた。翌週から一日2曲、翌々週から4曲倍数で暗記して1万曲を数年繰り返した。
そのうち基本スケールも暗記した。すべての楽曲が頭の中にある。変速リズムも同じ様に習得した。バリエーションで全ての楽曲が理解された筈なのに、この残虐童子のメロディラインは歌唱法は音階が異質だ。
音痴だと普通思われるが微妙に音階がズレるこんな歌唱法があるとは!
霧の中から湧いて近寄る不思議なモエルと合流し工房に向うギナは私の妄想音階と酷似していると意識するとヘッドフォンの音量を強めた。
…呪文の如く胎蔵の歌にフラッシュバックされる。下校児童が塾に行く時間に彼女は目覚め街を散策する。コンビニの惣菜売場でうろつくと街に溢れる変質者が成人雑誌を立ち読みする。隣では靴下の柄にこだわる矮小な紳士が彼女を覗い変質者と尻がぶつかる、すみません!心で同時に謝罪しては彼女の方に視線を向ける。そんな光景を見てから彼女は徐ろにミニ・スカートの裾を少し上げて下着を付けていない陰部を見せると彼等の耳元に囁く、
あたしの子供が狙われている。あんたらに裸にされて殺される。男達は気味悪くなって店を出て行く。彼女は店員に彼等が万引きしたと耳うちする。
お客さん!店員が彼等を追いかける時、彼女は隣町に向かうバスの中に居る。
最後部の座席に青い鳥が死んでいる。
彼女は死骸に文庫本を広げ乗せるとビル街の景色を流していく。
この街に着て5年経った。ランジェリーパブで稼いだ金で始めた宅配売春、裏ビジネスの愛の園ネメシス、芸能人スキャンダルサイト、獄中犯罪者支援、あたしに金は入る!
だがまだ、やりたい事が見付からない。他人の恨みを商売にするのも飽きてきた。
あたしは何がやりたいんだ。
…廃炉ハウス街を抜け、愛の園ストーカー野郎を思い出した。…猛は汚言症で健康ランドで岩盤入浴の男の局部を凝視しては、耳元で鋏を鳴らし起き上がったら笑いかける。男達の気味悪がる顔をみて卑猥な言葉を囁やき喜ぶ性癖あり。一部には男装した醜女とも思われてる。そう言えば放射能ランドリーに沈みカオスジャンキーになったらしい!
……マンションのセキュリティコードを押し一人の部屋に入ると先程管理人から渡された緑色の箱を開ける。何処かの難民かファンの嫌がらせか!干乾びた猫の標本が眼に留まる。またかとギナは呆れた。この前は蛇の抜け殻、次は身体の一部でも切断して送るつもりか!
この住所もヤバい、事務所と自宅を兼ねたのがいけなかった。愛の園ネメシス解体、それを惜しむ人間がいるのか!残虐童子に加入するにあたり、ファンは流れて来るだろうが、萬苔教に合体させてカルトが膨れ上がる危惧もある。ギナは展望に可能性を見出すと畏れた。
……翌週!愛の園ネメシス最後の仕事、ブラックチンピラー(ブラチン)の連中が明け方の歩道に屯ってる!
チキンレースに乗り遅れたリーダー村田は店員の前で堂々と弁当を食い散らかし、エロ写真集を広げページを破っている。
あんた、本より本物舐めさせてあげる!
舌が溶けるよ!ギナの誘いにカオスジャンキー村田は勃起する。姐さんモデルかい?
プロポーション良いな!
駐車場の裏で待ってるわ、またいつもの様に腰を屈め臀の線を見せる。囁く様にギナは言った。ねぇぼうや、指全部切り落とすのと、ペニス切断するのどっちが良い!
ズボンを降ろし村田は言った。決まっててんだろ!指だよ!ペニスがあれば出来るだろう!何いってんだよねえちゃん、いつもノーパンかい!
コンビニの裏で顔を局部に押し当てて村田は舐めまくり吸いまくった。
ギナがアクメに達した時、強酸性の愛液が村田の舌や喉を熱く溶かしていく、
声が出ない彼は喉を抑えてしゃがみ込みコンクリートにうつ伏せになる。睾丸を吸い取るため転がしてギナは優しく囁く。
ありがとう楽しかったわ。お土産も頂いていくから、これからはオンナになれば!
輪姦暴走族リーダー村田 去勢完了!
ヘッドフォンを外すと新しい窓が視えた!
記憶が錯綜して眩暈がした!なんなんだ!彼の音楽は呪術歌なのか!意識が憑依される!
ギナ!ギナってば〜!
パラレルトリップしちゃった?
モエルが心配気に見上げていた!?
♫ 魔肌樹子(魔肌邪)篇マハダジャ!
彼女は表音楽ビジネスの発信力を持つリーダーである。その彼女が新しい挑戦として闇音楽に挑んだ。金に困らない人間は暇潰しに何かをしようとする。タレントとしてのバラエティ番組を全てキャンセルしてしまった。
あたしは歌いたい!自分の感動する歌を、その為に芸能界に入ったのに歌ではなくタレントとして大成してしまった、彼女は勘違いをしていた。あたしは歌唄いだ!その波長が闇に届く様に、ジンタの工房で修理した楽器の音色に感動し偶然居合わせた胎蔵の奏でる闇音楽の世界を知ってしまった。
あの日ジンタの楽器修理場を見て驚いた。私の家のトイレより狭い。工房全体も衣裳クローゼットの中に10個はできるぐらいであった。私はあまりにも恵まれた城春タワーという居住空間に住んでいたのか。
音楽感染患者はこの様な不遇な場所で生活し音楽を創っているのか。絶対表音楽界にいけないと言う差別が存在しても彼等は暗闇から音楽を発信していく。
倫理コードで雁字搦めの音楽界から外れたい。葛藤はその日から始まった。
こんな異質の音楽がこの東京で演奏されているとは、あたしの知っているマスコミの中ではこの様な悪魔の音楽は排斥されて行った。
前衛とも違う!より過激な闇音楽!
残虐童子ライブを観客を装い見た日!失踪事件等この街ではいくらでもある。糸で巻かれ型崩れしないようにされ、ドラム缶で煮られた豚彦、行方不明になった痴童!
彼らを探す者もカオスジャンキーになったと諦めるだろう。
……マネジャーのモミ蔵は止めるだろう、スキャンダルになる。
表音楽のトップは純粋民族で半獣民族の存在さえも隠すのが芸能界だ。犯罪スキャンダルを起こしたら週刊誌は連日騒ぎまくる。マーダにおまかせ、なんて番組無くなったって良い!オリプロだって辞めたって良い!
稼ぎ頭のタレントを事務所は離さないだろうがスキャンダルをこの世界で起こさずに辞めれば、すべてに迷惑がかかる前に引退すれば良い。
そして闇デビュー!念願である。
…ペパーミントの芳香が漂う朝、樹子のスケジュールに異変が起きた。友人タレントの緊急入院である。勿論此れはヤラセである。マネジャーに電話して留守を頼むと樹子は地下の警備室に入った。そこには番組スタッフが待機していた。樹子さん!ではマネジャーの知られざる一日のスタートです。
到着したマネジャーの
モミ蔵は騙されているとも知らず、何時もやっている暇潰しを行い始めた、樹子の寝室に忍び込むとクローゼットに身を潜めた。
息を殺し抽斗を開けては下着の山に顔を埋めクンクンする。天井の防犯カメラが回りモニタールームで番組スタッフ立ち会いのもと、樹子に見られているとも知らず股間に下着を押付けると喘ぎ声を洩らしクンクンからシコシコに変えた。留守番が実際は監禁されて居るとも知らずクンクンシコシコ画像は流出し彼は時の人になった!
芸能人のマネジャーにはなるものではない。弄られて金の道具にされる。だが彼はそれを喜んでいた。
🎼
形の無いもの描く為に時間や夢を拵えた。
絵に描けない物を探している天空住民の樹子は模索していた。手に掴めない時間に私達は振り回され生命を浪費する。
……空に張り巡らされた電線に紺色の鳥が止まる。高架線の下を走る深夜トラックの轟音が耳障りな明け方、樹子は最上階の部屋で覚醒めると裸足のままベランダに出て空に手を伸ばした。昨日の午後タイルの床にやってきて餌を啄む鳥を微笑ましいと思ったが、一夜明けたいま!生暖かい死骸で横たわっている。これは、明日の私かも知れない。
まだ元気に翔べる今のうちに番組を降りよう。マンネリだ!そう感じ始めたのは地下音楽の残虐童子の存在を知ってからだ!
楽器職人のジンタの工房には珍しい楽器が置かれていた。インテリア樹木には感動した。枝の先の蕾が花へと変化して七色の光線を放ちメロディを奏でる。
葉も色づき視覚と聴覚に訴える。そして隣に飾られていたあの楽器が人体融合楽器とは!
無言でそのハープを取りジンタに微笑したあの長身の男、胎蔵と言う闇音楽のカルトシンガー!?BGMで流れていた14音階のメロディ!
琴線を揺さぶる何か破壊的な衝動があの工房に居る間続いた。胎蔵!ジンタ!彼らは何故表に出ようとしないのだろう!
人種が違う!明らかに音楽に対する価値観が金儲けでは無い。アーティスト!確かに私も元は純粋に歌が好きで歌っていた。
ビジネスなんて興味も無かった!
彼等の音楽を聴いた時から世界が変わった。
私が今までいた世界は虚構の世界だと自覚したのだ。
…翌週から彼女は仕事をキャンセルすると忽然と芸能ビジネスの世界から離れていった。
声帯を手術して特異な音階までだせるようにすると、残虐童子の歌をライブコピーしていった。初めは難解だった!何度聴いても音が取れないので自分の聴覚を疑った。
胎蔵のこの特異な音域と歌唱スタイルが残虐童子の骨子なのか!?
数ヶ月後彼女は胎蔵の歌を歌える喜びに戦慄した。とれた!やっとフルコピーできた。
これでメンバーオーディションに参加できる。
楽曲のタイトルは揃っている!
1 指の無いピアニストは前衛作曲家の作品だ!
2 盲目の写真家は実在した男のフォトグラファー
3 EDのポルノ男優は自殺したと言うか某女優に殺された。
4 聾唖の声楽家は口汚いタレント!ボーガンを口に撃ち込まれて一生歌う事が出来なかった。
…この中の一つを寸劇で歌うなんて演技力も要求されるが、心配は無い。
🎼…顎の骨を削られ顔の筋肉が弛むと糸で張られる私は陰茎を切断される手術を施される。やっと念願の女になれるんだ。精嚢を除られ目覚めれば女に生まれ変われる。
魔肌樹子は眠りの中で歌っていた。土砂降りの雨が窓を叩きバックには異様な風体のミュージシャンが演奏していた。彼等は残虐童子!いつか私が参加するバンドの名前だ!
そして新たな処刑魔肌邪が始まる!?
むかし私は男にふられ腹を刺したが皮下脂肪が厚く刃が折れてしまった。スプーンで眼球を抉ろうとしたが超能力者の力でスプーンが曲がって抉れなかった。私はツイてない。自殺を完結できない力が何処かで働く。樹子は交差点で鳩が集まって酔っ払が吐いたゲロを啄んでいるのを思い出した。私はゲロで良い。鳥や鳩の餌になれる。そしてゲロを食べた鳥が他の動物に食べられ巡り巡って人間の口に運ばれる。すべては循環する運命を持っている。
……早朝樹子は目覚めると獣人に変わる姿に慄く。肝臓が足りなくなって来ると未節骨が膨らみ爪根を押し上げると鉤爪が伸びてくる。狩りに行かなければ体毛が増え本来の姿に戻る。
あの悍ましい獣人の姿は性格さえ野生に変える。
満月がクレーンに刺さる港の臓器倉庫、殺人鬼になった樹子は巡回警備を潜り抜ける。
ガチャ眼のオガワは押し倒され抵抗するが頭を鷲掴みにされ捻られもぎ取られた。頸から断末魔の嗚咽が漏れた。千切られる痛みは電ノコで切断されるより鈍く神経に連鎖する痛みが全身に走った。
裂かれた衣服と肉片が街灯に飛び散り、小便が漏れた陰茎は睾丸ごと引き抜かれ内蔵を鉤爪で抉られ食されていく。
獣人にとっての獲物は肉の塊で食料でしか有り得ない。樹子が内部で葛藤していた理性の片鱗さえ退化と共に消え去っていた。
🎼 後篇につづく!
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