第2話 願う明日を ー1日目午後ー

あっという間に、2科目が終わり、昼休みとなった


明智「お疲れさん、どだった?」

愛花「なんとか、いつも通りぐらいの点かな? 明智くんは?」

明智「なんか調子よかったわ、もしかしたら、殴られて才能が開花したかも」

愛花「それは、全然笑えないのだけど... 出だしとして良かったなら大丈夫だね」

明智「あぁ、昼飯どうするか決めてる?」

愛花「どうせ、明智くんのことだから、昼ごはん持ってきてないでしょ?」

明智「ギクリっ」

愛花「そのセルフ効果音を何回聞いたことか...」

明智「悪い...ここの席で食べていいんだっけ?」

愛花「横の席の人来てないからいいんじゃない?」

明智「そか」

私たちの高校は、ほとんどの人が大学には推薦・指定校で入っていくので、友達はほぼここにはいない


だから、2人で一緒に食べれるのが嬉しかった


私たちは、2人で食べながら、次に始まる歴史の知識問題を一問一答形式で問題を出し合っていた


そこに


??「...あ..の」あの暴行男が現れた


明智「ん?知り合い?」


どうしよう...この男が暴行男だというべきだろうか 

やめておこう


愛花「さっき少し話してね」

明智「そなんだ .....どうですか?テストの方は?」

明智くんはその暴行男を気遣ってか話しかけた


??「.....」無言で私の方を見てくる 気味が悪い


明智「伊藤、なんかしたのか?」

愛花「別に何もしてないと思うけど....何か用ですか?テスト前なので勉強したいのですが…」


早く帰ってくれないかなと思ったが、それを口調に乗せると面倒なことになりそうなので、優しく問いかけた


??「....」しかし、男は何も言わず、私の方を見てくる


明智「..あのー、すみません、今日は大切な日なので、できればこの辺で..」

と不安な私を見て立ち上がった


やっぱ、明智くんは、カッコいい。


男は、下を向きながら帰っていく。


明智「何なんだあの人? もしかして、伊藤のことタイプで惚れたりとか?」


からかうのと、私を安心させようとしたかったから、こんなことを言ったんだろう


あぁー、やっぱり優しいな。


愛花「えぇー、惚れてもらうなら、好きな人に惚れてもらいたいけど?ねぇ?」


ちょっと、ドギマギした反応が見たかった


明智「あぁ、そうだな」普通の返事だった


その歩いていく男に目を向けていた




愛花「てか、もうこんな時間、最後の総復習しよ!!」


明智「親分、ガッテンです!!」


私たちは、急いで勉強を二人で始めた


正直、こんな直前で復習しても出ないことが多かったが、今日はなぜか出る気がする


彼の横顔を見ていたら、チャイムがなった


明智「よし、あと5分後には午後の部が始まるな 一緒に大学行こうな!」


愛花「うん、勿論!」


席へ座り、

頭を少しでもスッキリ整理させるために


目をつぶり、耳を手で塞いだ


視覚・聴覚からの情報を防ぎ、脳の最高のスタートダッシュを切れるためにしている


これは、明智くんがテストの時にしていて気になったので聞いてみたらそういうことだったのでやってみたが、結構いいのでしている


多分、明智くんもしている



胸が温かくなった




そして、午後の部がはじまった


さっき、二人で勉強したところが出る


明智くん、さっきは間違えてたけど大丈夫かな?




ー明智一(明智side)ー


あっ、さっき間違えたやつだな ありがとう、愛花


俺は、歴史が得意だった


ふぅー、今までの経験から察するに、9割強は硬いな

わからないところがないから もしかして、満点かも


俺が満点だったら、愛花のやつ、少しは同じ土俵に上がらせてくれるかな...


俺と愛花は、釣り合わない


そんなことは誰だって分かっている


あんなに可愛くて、優しくて、頭も良い


でもさ、俺は好きなんだよ、愛花のことが好きだから、勉強した 大好きなゲーム機を売って、テレビも売って、努力したんだよ


なぁ、頼むよ


神様ってのがいるならさ、見てただろ、俺の一年を


だからよ、来年から、毎年お参りするからさ、今日と明日ばかりは力を貸してくれよ


俺は、愛花の横顔をチラッと見て、また復習を再開した


今日の午後の部の試験が終わった




明智「疲れたよー、伊藤ー」伊藤の机に近づいた


愛花「そうだね、お疲れ様 1日目の出だしとしては良かったかな」


俺たちは、立ち上がって出口へと向かう


明智「あっ伊藤も? 俺も何だよ 自己ベスト更新しそうかも 7秒切るかも!!」


愛花「50m?」


明智「それだと、いまいちじゃん、100mでボルト超えてんじゃん!!って突っ込んで欲しかったな」


正直、こういうノリがうざいと思われているか分からない


ただ、少しでも、一緒な大学に行く可能性が増えたので嬉しさのあまり言いたかった


愛花「もう、こんなにも暗いね」冬で時刻は、18時を過ぎていた

明智「なぁ、今日は親とか来るの?」

愛花「まぁ、流石に、女子ですから...」

明智「俺も暗いの怖いよ...」

愛花「じゃあ、うちの車乗る?」


はぁつっ!?この子何を言い出すの?

えっそれって両親にご挨拶ってこと?

早くない?

やべぇ、髪型大丈夫かな。

汗臭いくないかな、歯磨きしてないけど、大丈夫かな。


明智「いぃや、それはさぁ...」

愛花「冗談だって!久々に明智くんの驚いたところ見た(笑)」

くそ、笑ってる顔が可愛い...

ホントずるい人だ


「君、明智一(あけちはじめ)君だよね?」と職員らしき大人に話しかけられた


明智「はい、何か?」

職員「ちょっと、付いてきてもらっていいかな?」職員は、歩き出す

明智「ってことらしい、伊藤、また明日な?今日はゆっくり休めよ」そう言って、俺は、職員に付いていく



!?



俺の手が温かいものに掴まれた



愛花「私もいくよ!!」

明智「あのな、その...嬉しいんだけどさ、明日もあるし...」

愛花「絶対いや!!」なんで、そこまで


職員「すみませんが、明智くんだけの立ち会いでお願いします」非常にセンシティブな話なのでと小さく俺たちに伝えられる


明智「だとよ、だから、手を話してくれ..」


優しくそう言った 愛花の手が俺から離れる


明智「ありがとう じゃあ、明日な」


愛花「...」愛花は、無言で車の方へと走っていった




明智「今朝の受験票の件なら明日持ってきますから」

職員「...」小さな部屋に入れられた なんだ?



明智「で、話は何でしょうか?」

職員「明日持って来れるのですか?受験票を」

明智「...!?」忘れてた、今日受験票を持ってきたけど、どこかで無くしたんだった...

明智「いや、それが..ここで無くしたようでして」


職員「その受験票は、見つかっているんです」


机に受験票と乱雑に文字が書かれていた紙が置かれた。


明智「何ですか?これ?」

職員「...見覚えがないと?」

明智「えぇ、まぁ」


職員「今日の午後の試験時間にトイレにこれが」

明智「はぁっ? 確かにトイレにいきましたけど、トイレのどこですか?」


職員「個室トイレの隙間に置いてあったと警備の方が」


明智「いやいや、おそらく、私がカンニングを目論んだとお思いだと思いますが

トイレの個室という特定的な場所に自分が行ったのであれば必ず確認しに行くと思います

現に私は、朝に無いのを確認して、事務室に向かう前にトイレに立ち寄りましたが、ありませんでした」


職員「ですが、こういうのが実際にありますからね…」


明智「こんな大一番でそんな馬鹿なことしませんよ」


まぁ、こんなことを言っても通じないと思うが...何か他に良い打開策はないものか…


と、ドアが開く音がしたので、職員と俺はそちらに目を向ける


愛花「話は聞きました」

職員「ちょっと君ね!」

愛花「こんなドアを閉めて、学生一人に詰め寄るのは、監禁チックじゃありませんか?」


職員「いや、それは...」

愛花「自白の強要にも繋がりかねないと思います」


明智「愛花、この人も仕事でやってるんだからな..」


愛花「あっ、すみません」愛花はぺこりと頭を下げた


明智「てか、何でいるんだ?」

愛花「...明智くん、今朝のLONE見せなよ」


職員「LONE?」

明智「..いや、まさか」


愛花「そのまさかだと思うけど...」俺は、LONEを起動し、今朝の浪人カンニング男がいたというLONEを見せた


職員「確かに、カンニング未遂の人がいると書かれていますね ですが、そう言った人がいた場合は、こちらで処分をしたいので言ってくれませんと」

愛花「!!明智くんが危険な目に合うかもしれないじゃないですか!!」こんなに怒っている愛花を見たのは初めてだった 


だが、


明智「伊藤...」

職員「失礼しました、表現を間違えました」

愛花「すみません...」職員の申し訳なさそうな顔を見てそう言った


明智「実は...」そのLONEが終わった後にした自分の行動を伝えた



職員「本当にすみません....まさか...実際に危険な目に会っているとは...」俺の左おでこの少し膨れたたんこぶを見ながらそう言った


明智「いや、全然気にしないでください もういいですか…?」


職員「はい、大切な日に呼び止め失礼しました」そう言って、頭を下げた


俺たちは、扉を開け、廊下を歩く


愛花「ごめんね....」

明智「..むしろ伊藤が入って来なかったら、もっと時間伸びてたかも...だから、ありがとな」


愛花「...諸悪の根源って明智くんを殴って、カンニングしようとしてた人じゃない?」

明智「まぁ、そうだな………」


愛花「その人を突き止めようとかはしないの?」

明智「まさかな、もうそういう危険なのはしないよ それよりも大事なことがあるからな」俺は、職員から返された受験票に目をやる


愛花「...頑張ろうね!」


明智「もちろんだ、それよりご両親は、大丈夫なのか?遅くなったが…」


愛花「さっき、明智くんと別れた時事情があって遅くなるってこと言ったら、待ってるってことだったから」


明智「そか....よかった」正直、愛花が入ってきて職員と話している最中一番そのことが気になった。


明智「じゃあ、気をつけて帰れよな...俺はこっちから出る方が近いから」

愛花「....そっか、じゃあ、また明日ね 」

明智「あぁ....」


俺は、出口に向かって歩いた

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