白の境に舞う金烏。 ~王陽明の「三征」のうち「一征」、寧王の乱~
四谷軒
01 寧王(ねいおう)・朱宸濠(しゅしんごう)
「泛海」王陽明
險夷原不滞胸中
何異浮雲過太空
夜静海濤三萬里
月明飛錫下天風
「海に
何ぞ異ならん 浮雲の
夜は静かなり
明。
寧王という王がいる。
明の太祖・洪武帝
この朱権は、兄である燕王・
朱棣は帝位を簒奪し、永楽帝と成りおおせるが、朱権との約束は無かったことにして、逆に南昌という土地に朱権を封じ、逆らうことないよう、常に見張らせていたという。
それから時は経ち、
寧王の五世の孫、現在の寧王・
「くだらぬ、じつにくだらぬ」
時の皇帝・正徳帝は宦官・
「おれなら、そんな間抜けな真似は、せぬ」
大体、太祖洪武帝の時には、宦官の専横を許さぬのが国是ではなかったか。
そのようなこともまともにできずに、何が皇帝か。
寧王は、王妃である
元々、明は火竜槍なる火器を備えていたが、それを上回る性能を持つ佛郎機銃を製造するということは、重大な叛乱予備罪といえた。
これはさすがに臣下から諫められたが、それでも寧王は聞かなかった。
「どうせここまで来たのだ。見つかったら始末される。それなら……」
その臣下の口を封じ、寧王は放たれた銃弾のように、叛乱へと突き進む。
*
「おれに逆らう者は、こうだ」
寧王は私兵を集め、己の封土の役人や人民を意のままに処断した。そしてその土地を取り上げ、己が物とした。
その処断は、「寧王に逆らった」だけでなく「寧王が処断したい」という、非常に勝手な言い分による。
佛郎機銃の密造はまだ隠されていたが、このような放恣な司法と行政の有り様は、さすがに国都・北京へと報じられた。
それを聞いた太監の
「何だと、何だと」
寧王は、まさか本当に正徳帝がここまで反応してくるとは思わなかった。
己が明の王、つまり皇族であるがゆえに、説諭やら何やら、またぬるい対応をしてくるのではないかと、密かに期待していた。
このあたり、「王である」という甘えが寧王にあった。
だが、さしもの寧王とはいえ、ここまで勅命が下されたら、もう後がないことぐらいは分かる。
「
寧王は、十万の兵をもって挙兵した。
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