2.昇進試験






 「その話は本当……なんですよね?」



 ここまで口を閉ざしていた3人のうちの1人、整った顔立ちをした白髪の青年がようやく喋った。


 てか、どっかで見たことがあるような…?



 「えーと、あんたは……」



 「……テルだ。 つか、君。私とあったことあるだろ……?」



 テルと名乗るハンサムは俺の事を覚えてるらしい。うーん、どこで会ったんだ…?



 「……うーん。覚えてねーわ、すまん。まぁいいや、よろしくテルくん。」



 「……お、覚えてない……?


 ははっ…… 養成学校での恨み、忘れたとは言わせんぞ……!!

 

 君があの時、私の邪魔さえしなければ…!!」



 あちゃー、地雷踏んだかな〜こりゃぁ。


 テルくんは顔を真っ赤にしながら、こっちを睨んでいる。周りの目がなければ、今にでも襲いかかってきそうなレベルだ。


 とりあえず、面倒臭そうなので放置。


 

 俺は、3人のなかで1番体格の大きい、マッチョみたいな男に視点を向けた。



 「えーと、初めまして。よろしく……?」



 「オルドーだ。


 リュー、君の噂は聞いているよ。なんでも、人間界の生配信にスパチャをつぎ込んだキューピッド界の恥晒しと言うじゃないか。


 それと、神界ではなく人間界のエロティックグッズを収集する人間フェチだと言う噂も聞く。


 あとは、同じキューピッドに対して愛の矢を射たとか……」



 メリュさんは、やれやれ…と言った感じで頭を抱えおり、セリスさんはお腹を抱えて笑っている。



 「よ、よくご存知で…… 」



 「まぁ、オレが好き好んで調べたものではないんだ。

 

 勝手に耳に入ってくるんでね、何度も聞いているうちに内容まで暗記してしまった結果だ。


 不快に思わせたならすまない。 」


 

 まぁ、人間が好きなのは事実だけど、フェチとかじゃないんだよなぁ。


 てか、絶対煽ってんだろ。



 とりあえず、こっちからこのマッチョに反撃する手札もないので、もう1人の黒髪ロングの美少女に視点を向ける。



 第一印象で分かる。めちゃめちゃ可愛い。


 モデルのようなスタイルに、整った顔立ち。艶のある長い黒髪も美しい。


 まぁ……欲を言うなら大きかったらな〜ってくらいである。



 「……きっしょ」



 「……あ?」



 「今、“小さい”って思ったでしょ?」



 「……いや、思ってないけど。」




 「……嘘つき。 ふんっ。」



 なぜか、初対面で嫌われてしまった。


 いや、確かにもうちょっと大きければな〜とは思ったが、うーん。。。なんで?




 「……こほんっ。話を続けますよ。

 

 今回皆さんは、それぞれ恋心を抱いている少女達をサポートをして貰います。


 そしてターゲットとなる、彼女達が恋心を寄せているのがこの男です。」



 そう言って、セリスさんはスライドを進めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 星海 連 (17)


身長 181cm  体重 70kg


サッカー部所属。キャプンテンを務める。


容姿端麗、スポーツ万能、成績優秀、漫画に出てくる主人公のようなスペックを持つ。


家族構成 父母兄姉


誰にでも優しく平等に接するのが特徴。恋愛経験はなく、これまで数多くの告白を断ってきている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 顔写真も映し出された。


確かに顔はいい。どこかのアイドルグループに所属していてもおかしくないようなイケメンだ。


 加えて、成績も申し分なく、運動神経もいいのか……こりゃモテそうな野郎だな。


 周りの連中はスライドの内容をメモしたり、スライドを見ながら思考を巡らせている。




 「そして、この男に恋心を寄せる少女達を今回は此方でピックアップしました。


 更に、なるべく勝負が公正になるように、彼女達のスペックにも差が出ないように選ばせて貰ったつもりです。」



 セリスさんはそう言うと、スライドを更にひとつ先に進めた。



 「全員が、ターゲットの男と同じ学年、同じクラスに所属しています。


 皆さんの名前の右に書かれているのが、パートナーの氏名です。」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 テル  八神 眞白


 オルドー  早乙女 明日香


 アカツキ  雨宮白 怜


 リュー  成瀬 奏




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 「……ごほっごほっ……!!」



 俺はスライドを見た瞬間、あまりの驚きに息を吸いすぎてむせた。



 目を擦って何度もスライドを確認する。



 周りは、急にどうしたんだ……?という表情を浮かべている。


 

 そりゃそうだ。周りからしたら顔も知らない、これから初めて会う少女の名前なのだ。   


 驚く理由がない。




 だが、俺は“例外”だ。





 俺の名前の横に書かれている 


 “成瀬 奏”


 俺は彼女を知っている。




 いや、知り合いなんてもんじゃない。


 俺が、、、



 前世で付き合っていた“元カノ”の名前だ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る