元カノを支えるキューピッド
ごうや椎茸ナス
1.俺の職はキューピッド。そして、ここは神界。
「ふぁぁぁぁーーー。寝みぃ。」
昨日は遅くまで生配信を見ていたからか、大きな欠伸が出た。
「……おい。」
「……? あ、はい。」
“パコーーーーーーーーー〜ーん !!”
持っていた資料を丸めた棒上の物で、思いっ切り頭をぶん殴られた。
「お前は、何しに、ここに、来てるんだ……!!!???」
鬼の様な形相で、恒例の説明担当のセリスさんは俺の胸倉を掴んでくる。
「……すいません。ちょっと寝不足で。」
「あぁ!? お前はいつもいつも寝不足なんだなぁ!! それとも、なんだ? 私に喧嘩でも売ってんのか?」
「……い、いえ。そうじゃないんです。黄金ノ○ルさんの配信は、毎週日曜の夜なんです。それを見てると、まぁ、こんな具合に毎回……」
「馬鹿にしてんのか!? 配信だかなんだか知らねぇが、録画すりゃいいだろうが!!」
「いえ、セリスさん。録画で見るか、生配信で見るか、ってファンにとっては凄く重要で……」
「まぁまぁ……その辺にしておきなさい。」
と、俺とセリスさんの取っ組み合いを見ていたメリュさんが優しく注意してくれた。
尚、この光景はほぼ毎回のように行われるので、もはや恒例行事と化している。
「セリス、何か嫌なことがあったとしても暴言を吐いてはいけませんよ? それは、人の示しとなる“神として”有るまじき行為です。」
「も、申し訳ありません。メリュ様。つい、カッとなってしまって……」
「ふふふ。反省すればよいのですよ。」
「そーだそーだ。反省すりゃいいんだぞ〜。」
「……はぃ、反省しております。 て、うるさいぞ、リュー!!」
こんな感じで、セリスさんを煽ってみると必ず返しが来るので、セリスさんをからかうのは止められないんです。ゴメンなさい。
「それはそうと、リュー。相変わらず、貴方は“人間界の文化”への探求を続けているのですね。」
「えぇ。俺は人間が好きですからね。」
「貴方のそういう“神であっても人間に対して威張らないところ”は本当に魅力的ですよ。人間を愛し、人間の文化を積極的に学ぶ貴方の姿勢は、私は高く評価し、リスペクトしています。」
「……へへ。あざす。」
「ですから……」
そう言うと、メリュさんは大きなため息を吐いた。
「私の評価を無駄にしないで下さい。貴方をせっかく上に推薦しても、態度が悪い。態度が悪い。それしか帰ってこないんですよ。全く……もぅ。」
「あちゃー……すいまへん……」
「……まぁでも、そうやって誰に対してでも同じ態度を取る貴方は、色々な意味で信頼出来ますけどね。ふふっ。」
そう言って、メリュさんは優しく微笑んだ。
あー綺麗。
「さて、話を戻しましょうか。セリス、説明の続きをお願いします。」
「……あ、はい。では、皆さんもう一度スライドを見て下さい。 ほら、アンタも見ろリュー!」
「……へいへい。」
そう言って俺は、眠い目を擦りながらもスライドに目を向けた。
「……こほんっ。えー、貴方達4人に今回集まって貰ったのは、もう一度言いますけど、上に昇格させるものを選抜するための試験を行う為です。」
と、こっからダラダラ長い話が続くので省略。まぁ、簡単に説明すると、
基本的に、俺の職は個人の人間のサポートをすることで、願いを叶えること。
それが、今回は同業者と争うバトロワ形式になるという話らしい。
つか、この職で他人と競い合うとか……
血みどろにしかならねぇよな……?
だって、キューピッドだもん、俺。
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