第10話

10話


 「えっと……その、なぜ不可能なのでしょうか?私は次元穴とやらに吸い込まれ、ユーグレナ様が司る世界に辿り着いたと思っていましたが、違ったのでしょうか?」


 「その通りです♪ですが小林様♪不可能な理由を説明します♪まず神界の掟では、次元穴を濫りに開けてはならないと決まっております♪ですが今回は小林様の世界でエネルギーが暴発して不慮の事態が発生し、次元穴が開いてしまったのです♪そして小林様の世界を司る女神はその事態を重く捉え、既に次元穴を閉じてしまわれたのです♪」


 は?


 えーと……。


 神界の掟とやらでは次元穴を勝手に開けるのは駄目で、事故で穴が開いちゃったけど、既にウチの女神が穴を閉じちゃったの?


 何してくれてんの?ウチの女神……。


 マジ、ウチの女神ポンコツじゃね?


 というか、まさか……。


 「あの……神界というのは……まさかココでしょうか?」


 「ええ♪その通りです♪」


 うおっ!?マジか!?


 やっぱりココは神界だったのか!?


 女神様がいるから、天国か神の国かと思っていたけど、真っ白で純白な世界が神界か……。


 ん?


 あれ?


 この方法なら元の世界に戻れるんじゃね?


 「あの……ユーグレナ様。次元穴ではなく、神界を通じて元の世界に戻ることは可能でしょうか?」


 「小林様♪それは不可能です♪一つの世界に一つの神界があり、神界は他の神界と交信できるだけです♪」


 「あの……つまり、えーと、その……私が元の世界に戻れる方法は存在しない、ということでしょうか?」


 「ええ♪その通りです♪」


 おいおいおい。マジかよ……。


 女神様の確証付きで二度と元の世界に戻れないのかよ……。


 美咲先輩とはもう二度と会えず、声すらも聞けないのかよ……。


 えっと、そうすると……。


 俺の進退はどうなるんだ?


 というか、ウチの世界のポンコツ女神。


 俺の意向を聞く前に次元穴を閉じた責任を取れよ。


 何かキレてきたわ。


 「あの……神界の掟は存じておりませんが、私が住んでいた国では不慮の事態であろうとも、管理責任が問われる話だと思うんですよ。それも被害者である私に無断で次元穴を閉じて、二度と元の世界に戻れなくする。余りにも非人道的行為ですよ。もちろん神様には神様の事情があるとは思いますが、私にも私なりの事情があります。私の命と同等以上に大切な人たちが元の世界にはいるんですよ。もう二度と会えないって、どういうことなんですか?責任者がいるなら、責任者を出して会わせてください」


 「小林様……」


 あ、つい怒りからユーグレナ様に当たってしまった……。


 あぁ、へにょんって感じでめっちゃ悲しそうな顔してる……。


 何か凄い罪悪感が湧いてきたんだけど……。


 って、アイタタタタタタ!!


 罪悪感で物理的に胸が痛ぇ!!


 何これ!?


 女神パワー!?


 「す、すみませんでした!!その、ユーグレナ様に対して怒っているわけではなくてですね!!その、あの、それだけ私がいた世界には大切な人たちがいまして!!」


 「小林様のお怒りはもっともだと思います……出来うるなら……小林様を元の世界へと帰したいと願っておりますが……私たちが出来ることも限られております……」


 「ユーグレナ様の気持ちはとてもよく分かりますから!!どうか先ほどのように微笑んでください!!あ、そうだ!!私はこれからどうなりますか!!もしかしてユーグレナ様と一緒に、ココで暮らす感じですか!!それならそれで、こっちの世界に来て良かったかも!!いやー、次元穴に落ちて、よかったよかった!!」


 「もう♪小林様ったら♪ですが残念ながら、神界の掟で神格を持たない者が神界に留まることは禁止されておりますわ♪」


 ユーグレナ様の微笑みと共に罪悪感からの胸の激痛が消えたが、女神パワーはクソヤベぇな。


 ユーグレナ様を絶対に悲しませてはならない。


 うん。オレ、オボエタ……。


 「えっと……そうすると、元の世界にも戻れず、この場所にも留まれないとすると……私はこの後どうなりますか?」


 「小林様♪説明します♪小林様はこの後、私が司る世界に降りてもらいます♪小林様の世界の女神が仰るには、小林様と同等以上の知性を持つ生命体が住む惑星は多々ございますが、残念ながら私が司る世界では一つの惑星しかございません♪もちろん小林様以下の知性を持つ生命体でしたら惑星の候補は少し多くなりますが、会話などのコミュニケーションは諦めることになります♪どちらの惑星をご希望されますか♪」


 えっと……俺のいた世界では知的生命体がいっぱいいるけど、ユーグレナ様の世界は1つの惑星しか無いと。


 で、他の惑星には何らかの生物がいるけど、会話は出来ないと。


 会話が出来る惑星と会話が出来ない惑星、どっちが良いですか?って話だよな?


 選択肢があるようで、全く無くね?


 「えっと……では、会話やコミュニケーションが出来る惑星でお願い致します」


 「かしこまりました♪それでは小林様の世界の女神からお預かりした神力で、3つスキルを選んでくださいな♪」


 は?


 スキル?


 スキルって、あのスキル?


 「あ、あの……ユーグレナ様。スキルとは何でしょうか?」


 「小林様♪スキルはスキルですわ♪」


 「いえ、ですから、そのスキルと言うのが、私がいた元の世界には存在しておりませんでしたので、スキルはスキルと言われましても……」


 「まぁ♪小林様の世界ではスキル制を取られてないのですか♪それは困りましたわ♪」


 いや、困ってるのは、どー考えても俺の方でしょ……。


 なんかまたユーグレナ様が『んー♪んー♪んー♪』と可愛らしく唸ってるし……。


 ってか、独り言しなくても、誰かと通信できるんかい!?


 「お待たせ致しました♪小林様♪説明します♪これから小林様が降りて頂く世界には、迷宮という物がございます♪」


 は?


 迷宮?


 迷宮って、あの迷宮?


 「この迷宮にはモンスターがおり、モンスターを倒すことにより魔石やアイテムが手に入ります♪」


 モンスターや魔石?


 おいおい……。


 「そのアイテムの中にスキルオーブがあり、スキルオーブを使用することによって、様々なスキルを入手することが出来ます♪」


 いやいやいや。スキルオーブを使用してスキル入手って……。


 どんな世界なのよ……。


 「スキルを入手することによって、身体能力が上がったり魔法が使用出来たり、その他にも様々な能力が使用できたりします♪」


 魔法もあるのかよ!?


 物理法則は息をしてるのか!?


 「スキルは魔力を用いて使用できますが、スキルが強力であれば魔石を使用してスキルを発動したりします♪小林様♪この説明でご理解できましたでしょうか♪」


 おおぅ……。


 一気に情報が増えたぞ……。


 どうやらスキルはラノベに出て来るのと同じ感じだよな?


 んで、迷宮にモンスターがおって、さらには魔石やらアイテムやらがドロップすると……。


 ラノベやゲームの世界かよ?


 んで、弱いスキルは魔力で使用できて、強力なスキルによっては魔石が必須と……。


 というか、魔力って何だよ!?


 「はい。ユーグレナ様のご説明で理解できたと思いますが、またいくつか質問をしても大丈夫でしょうか?」


 「小林様♪もちろんです♪何でも聞いてくださいな♪」


 「ありがとうございます。先ほど質問するのを忘れておりましたが、私がいた世界の女神が神力を預けたとはどういうことでしょうか?また3つのスキルを選ぶとは?あと魔力とは何でしょうか?」


 「小林様♪小林様の世界の女神はこの度の事態に心を深く痛めており、小林様がこちらの世界での生活に不便が無いようにと神力を私に分け与えております♪この神力を用いて、小林様に3つのスキルを選んで頂くことになります♪魔力はスキルを入手すれば分かりますわ♪」


 「なるほど……ですが、先ほども申し上げました通り、私はスキルが無い世界から来ておりますので、そもそもどのようなスキルが存在し何を選べば良いのかも分からないのですが……」


 「小林様♪それでしたら、こんな能力が欲しいなー♪と思われることを言ってくださいな♪該当するスキルがありましたら、お答えします♪」


 あー、なるほど?


 つまり異世界の新生活に向けて必要な能力を自分で考えろ、ってことか?


 異世界の新生活って、何だ?


 意味不明過ぎるぞ……。


 というか、そもそも降り立つ世界の常識も歴史も文化も文明度も、何一つ分からんのだが?


 あぁ、そういうことか。


 ユーグレナ様に色々質問して、人生設計の最適解を求めろ、ってことか?


 ん?


 ということは『私たちが出来ることも限りがあります』ってことはだ、出来ることはしてくれるのか?


 出来る範囲だからこそ質問に答える、ってことだろ?


 よし、ちょっと攻めてみるか……。


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