ルミナのアイディア

「挑戦者として魔王カップに出場するの。私たち二人で」

「挑戦者?」

 俺は思わず聞き返していた。

 挑戦者という言葉だけでは、作戦の概要が全く分からないからだ。

「そう、挑戦者よ。ジオでもなく、リナでもない、三番目の参加者として魔王カップに挑戦するの」

 三番目の参加者!?

 俺は異世界人だからよく分からないが、そんなことが可能なのだろうか?

「ジオでもなく、リナでもないって?」

「そう、私たち二人で新たに参加して、ジオとリナの代表に挑戦するの。それでね、私たちが勝ったら魔法を半分こにして掛けてもらうの。ジオとリナの両方にね」

 魔法を半分にして両方に?

 それができれば、ルミナがリナ側から参加するよりも、ジオから恨みを買う可能性は各段に低くなるだろう。

「素敵なアイディアだよ。だけど、そんなことできるの?」

「魔王様はね、盛り上がることが大好きなの。魔王カップもその一環よ。挑戦者として参加したいと言えば、面白がってくれるんじゃないのかな」


 それは、ルミナが半分ジオを裏切り、俺が半分リナを裏切る方法。

 裏を返せば、ルミナが半分リナに貢献して、俺が半分ジオに貢献する方法と言えるだろう。

 半分と半分が釣り合って、すべてが丸く収まるアイディアだった。


「じゃあ、リナの代表はどうなるの?」

 意義を唱えたのはリナリナだった。

 それは仕方がないだろう。俺のことをリナに招待したのはリナリナなのだから。

 ここで引き下がっては、村長から受けた信頼を裏切ることになる。

 だから俺は、リナリナに深く頭を下げる。

「ありがとう、リナリナ。こんな俺をここに連れて来てくれて。でも俺はルミナの提案に乗ってみたい。参加するなら、挑戦者として挑んでみたい」


 そしてルミナを向く。

「ありがとう、ルミナ。素晴らしいアイディアだよ。参加はどんな形でもいい。俺は君の炎でガラス細工を作ってみたいんだ」

 俺はルミナの手を強く握る。

「ありがとう、タクミ」

 ルミナは満面の笑みを俺に返してくれた。

 そして彼女はリナリナを向く。

「ごめんね、リナリナ。私でも役に立つことがあるなら何でもしたいの。こんな気持ちになったのは初めて。だからお願い、分かって欲しい。私、タクミのガラス細工を全力でサポートしたい」

「ルミナがそこまで言うなら……」

 渋々と了承するリナリナ。

 魔王カップ始まって以来の、異色の挑戦者が誕生した瞬間だった。


「じゃあ、ルミナ。一週間後に魔王城の前で」

 鍾乳洞の外で石灰の塊を拾ってから、俺はルミナに向かって手を振る。

「ボクはまだ完全には認めてないからね、タクミ!」

 リナリナはまだプンプンだ。

「一週間かけてリナの人たちを必ず説得するから」

「わかった。私、魔王城で待ってる……」

 ルミナも俺に手を振ってくれた。

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