第15話 さよならは突然に
◇◇◇
ジークがいなくなって三カ月。私はようやく家に帰る許可を貰うことができた。なんでも凶悪犯が複数逃走中とかで王都全体が厳戒態勢になっているらしいのだ。
貴族の子女が多く通う学園でも警備を厳重にした上で一切の外出禁止となっていた。どんな凶悪犯かは知らないが全く迷惑な話である。こっちはそれどころではないっていうのに。
結局三カ月たっても捜索は一向に進まなかったらしく、この度不安を訴える親たちの訴えによって全員に一時帰宅の許可が下りた。凶悪犯がどこに潜んでいるかわからないため、この機会に学園内の捜索も行われるらしい。
「じゃあね、ロイス。王都中なんだか大変なことになってるみたいだからあんたはせいぜい大人しくしときなさいよ?」
迎えの馬車を待つ間たまたま見かけたロイスに声をかける。ようやくジークを探しにいけるとあってつい声も弾んでしまう。
ロイスとはあれ以来、会うと軽口を叩き合う位の仲になった。最初はとんでもない女好きのろくでなしかと思ってたが、なんだかんだつき合ってくれるので意外といいやつである。
まぁ女好きは本当らしいけどねっ!
「ああ、お前もふらふら出歩くんじゃねーぞ?」
今もちゃっかり女の子の肩を抱きながらちらりとこちらに流し目をくれている。また見たことのない女だ。相変わらずお盛んですことっ!
でもまぁ、私にはさらさら関係のないことなので別にどうでもいい。今の私は非常に機嫌がいいのだ。
「うふふ、なんのことかしらぁー」
「すっとぼけてんじゃねーよ。これ幸いとジークを探しに行くつもりだな?」
「当たり前でしょ。それ以外に何をやれっていうの?」
「開き直るな。何もやるなっていってんだよ」
ロイスとわーわー騒いでいると、にわかに周囲がざわめいた。
(なんだろ……あれは、近衛騎士?)
白銀に煌めく鎧を身に着けた彼等は王家直属の騎士団として大人気の騎士様たちだ。その騎士様たちが数名真っ直ぐこちらにやってくる。
「シリウス家のロイス・シリウスだな。一緒に来て貰おう」
「……どこへですか」
「今は説明できない。だがこれは王命だ」
ロイスは小さく溜め息を吐くと、肩を抱いていた女の子に素早く別れを告げる。
「悪いな、キャロル。頑張って幸せになれよ」
「えっ、ロイス様……」
女の子は不安を隠せない様子でロイスの背中をじっと見つめていた。
(滅多なことじゃ動かない近衛騎士が直接連行していくってどういうこと!?)
私もまた、ひらひらと手を振るロイスを呆然と見つめるのであった。
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