第4話 伯爵家との意外な関係

 

 ◇◇◇


 ジークに急かされるように学園を出た私達は一時間ほどかけて王都の中心街にある男爵邸に帰宅した。元はとある伯爵家のお屋敷だったらしいが、金銭的に困窮したところを安く買い叩いたらしい。無駄に豪華で煌びやかな屋敷だが、王都の一等地にあるため何かと便利ではある。


「ねぇ、そう言えばこの屋敷の元の持ち主がシリウス伯爵家じゃなかった?」


「……左様でございます」


「その頃から困窮してたってことか。仮にも権威を大切にする貴族家が王都のお屋敷を手放すなんて、相当貧乏なんじゃない?いくら領地のお屋敷や収入があるとはいえ、余程恵まれた領地でないとそれだけじゃ貴族としての体面を保つのは難しいわよね」


「シリウス伯爵領は温暖な気候に恵まれ、ワインの産地や貴族の保養地としても有名な土地です。領地収入はそれなりに有るはず。本来であれば王都の屋敷を手放すなど考えられないことなんですが」


「あら、領地には恵まれてる訳ね。じゃあ、もしかしてお父様の狙いはそっちなのかしら。王都の屋敷だけじゃなく領地も乗っ取るつもりとか。お父様ならやりかねないわね……」


「まぁ、確かに旦那様ならやりかねませんが……例えその領地をどうしても手に入れたいと思っても、ソフィア様を犠牲にしてまで欲しいと思うでしょうか?私にはそうは思えないのです」


「うーん?お父様には無駄に愛されてる自信はあるんだけどな。ま、いざとなったらこの家を出る覚悟だから。私だって商売の鬼と言われたアルサイダー家の娘よ?何もかも失ったとしても腕一本でのし上がって見せるわ」


「ソフィア様は強いですね」


「もちろんジークは付いて来てくれるでしょう?お父様の商会を叩き潰して目にもの見せてやりましょうねっ!」


「ま、まずは落ち着いて話し合いましょう」


「あらそうね。すっかりその気になるところだったわ」


「ソフィア様のそういうところ、旦那様にそっくりですよね」


「仕方がないわ。親子だもの」


「ふふ、そういうどこまでも前向きなところ、少し羨ましいです」


「ジークは、色々考え過ぎちゃうんじゃない?たまには自分の気持ちに素直になってみたほうがいいわ」


「そうですね……」


 どうもこの見合い話をしてからジークの様子がおかしい。私が嫁に行きそうなことにショックを受けてるのかなと思ったけどそれにしても変だ。何だかいつもより元気が無いんだよなぁ。


「ジークさ、シリウス伯爵家と何か関係があるんじゃないの?」


 気になったので聞いてみることにした。そりゃあもうズバリと。


「なっ、なぜ……」


「わかるわよ。私を誰だと思ってるの。ジークのことを常日頃観察し続けているのよ」


「ソフィア様にはかないませんね」


「私にも話せないこと?」


「今はまだ……」


「分かった。話せるようになったら教えてね」


「よろしいのですか」


「いいわ。本当に必要になったらジークは話してくれるでしょ?話す必要がないことなら、話さなくてもいいし」


「ソフィア様はそういうところも男前ですよね」


「別に秘密があったっていいの。誰にだって秘密の一つや二つあるわ。でも、もしひとりで抱えるのが辛くなったら教えて。そのときは私も一緒に悩んであげるから」


「……そのときは、必ず」


 さてと。とりあえずお父様の話とやらを聞いてみましょうか!



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